映画「誰がため」
2010年に見た映画(一) 「誰がため」
原題名: Flammen og Citronen
監督: オーレ・クリスチャン・マセン
出演: トゥーレ・リントハート,マッツ・ミケルセン
時間: 136分 (2時間16分)
製作年: 2008年/デンマーク・チェコ・ドイツ
2010年 1月鑑賞
(満足度:☆☆☆+)(5個で満点)
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打倒ナチスに燃え、表向きは刑事として、裏の顔は地下組織の一員として
指定された人物を抹殺することを使命感を持って遂行するフラメンとシトロンの
若きコンビ。指令はロンドンから送られてきている"はず"であったが、二人は
しだいに組織のトップへ疑念を持つようになりそれはやがて「確信」へと変わって
いった。。その時二人は、、
主人公フラメン(トゥーレ・リントハート)の相棒役シトロンを演じるマッツ・ミケルセン
がとても良かった。祖国のためと自己の殺人を正当化するが常に釈然とはせず、
そして家庭を顧みないことを妻からは戦争が理由だから"ではない"ことをはっきりと
告げられる。
「貴方はたとえ戦争が無くても私達を放っておくでしょうね。
貴方はそういう人よ」
マッツ・ミケルセンが演じるヨーン(=コードネーム:シトロン)は家庭の敵である
身勝手な男を演じきっている。そして本質であるがゆえにわが身を心の底から
情けなく思い憎み、全身全霊を賭して仕事(アサシン)の鬼となる。その眼には
いつしか狂気が宿り、一体その心は憎むべきナチズムとどう違うというのか。。
主人公がイケメンで冷静沈着に"ナチ"を殺っていくが彼らの行動は当然のことながら
正当化されるものではない。それを描いているのはまあ当然の事としてナチズムや
ファシズムの『本当の恐怖』はぜんぜん描けていないのがとても残念。
この映画をヒトラーが観ても脅威とも何とも思わず怒りも沸かず「可愛い」と
すら思うことだろう。
主人公の二人は性格が見事に好対照で役者も良かったし作品の箱の作りも
豪奢で悪くないがゆえに色々と勿体無かった。
小難しい事は嫌いだけど、小難しいような映画を観たような気分に浸りたい
人にはうってつけの作品かもしれない。
本作は特に観なくても良いけど「夜と霧」(1955)は是非観るべし。
繰り返すが主人公二人はとても良かった。映画の作りは悪くない。
時間も130分という長い尺もそれほど気にならない。
結局のところエンターティメントであろうとする利益至上主義が映画の"たまし"
「サムシング」を抜き、そのサムシングが無いから詰まらない作品となってしまう。
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