« 癒_11_08_11 | トップページ | 観_11_08_13 »

2011年8月13日 (土)

映画「THE CRAZIES」

「THE CRAZIES」
THE CRAZIES

監督: ジョージ・A・ロメロ
脚本: ジョージ・A・ロメロ/ポール・マッカロー
撮影: S・ウィリアム・ハインツマン
音楽: ブルーズ・ロバーツ
出演: W・G・マクミラン,レイン・キャロル,ハロルド・ウェイン・ジョーンズ

時間: 103分 (1時間43分)
製作年: 1973年/アメリカ

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
突如として気が狂ってしまった人々の群れと、期に乗じて"人間狩り"に興じる
"人間"との果てしない死闘と混沌を描く。鬼才ジョージ・A・ロメロが30歳前半で
製作した初期の作品。
 

 オープニングすぐの「"狂ってしまった自分の父親"を目撃する少年」のシーンが
ジョージ・A・ロメロ作品の『語る全て』なのではなかろうかと思う。自分の父親が
狂ってしまった理由は、伝染病であろうが、脳が融けてしまったのであろうが、
要は何でもよく、

『自分に殺意を"絶対に抱かないはず"の者が容赦ない殺意を抱く』

という底抜けの絶望感に対しての物語としての辻褄合わせがゾンビであったり、
謎の病(やまい)であったり、軍の極秘の研究であったり、国家的陰謀なのであり、
つまるところは"そっち(原因)はどうでもいい"ということになる。

「原因が判ったところで"問題の根幹"が解決するわけではない」
というのがジョージ・A・ロメロがライフワークの如く再生産し続ける我々
人間達への切なる問いかけなのであろう。

 実際、以降のロメロ作品に継承されていくファクターは予算が決して潤沢ではない
本作においても完璧なまでに、揺ぎ無く完成されていて、観ていて何も過不足は
感じない。過不足を感じないどころか寧ろ、余計な残酷描写にかける予算が無い分、
本質的なテーマ部分としての描写に割かれて、後続の所謂ゾンビ映画よりも恐らくは
よほど正鵠を射ていると言えるのではなかろうか。

すなわち、

『本当に恐ろしいのは、化け物(=異形の物=not 自分達)と認定した対象に
瞬時に、継続的に持続的に底無しに残忍になれる人間という生き物である』

ということに尽きる。原子爆弾の投下も、沖縄の悲劇も、シベリア抑留問題も、
戦後の日本の誤用・悪用され続けている平和・人権・平等とういう胸くそ悪い
言葉も、イラン・イラク戦争、アフガン問題、9.11同時多発テロ、3.11大人災、
過去の世界に繰り返し起こったジェノサイド、、貧困、搾取、、人間が起こし
続ける困った問題の根っこには、単純明快でそれゆえに克服の難しい?
全てのイデオロギーの基本成分である

"同等(=)" であるか、または "それ以外 (≠)"

という命題がある。 

 謎の病原体(と作中では発表されるが最後まで明らかにはされない)によって凶悪な
何かになった元人間達を『狩れる』ことを知った猟銃を持ってピクニックそのままに
集まる人々の爽快で屈託の無い笑顔!どこまでも喜びに満ち溢れて狩りを愉しむ
人間達。タイトルが一体誰を指すのかは明々白々である。

 他のロメロ作品はそれほど多く観ていないけど、発端と結末のロメロ流の
放ったらかし感は極めて秀逸で、映画は"お金は掛かるけどもお金ではない"
ということが如実に判る作品でもある。

 以降の作品が怪物達の存在理由に整合性を付けることに無駄な労力と資金を
費やしてしまっているであろう事を思うと本作の演出の無駄の無さと、無駄が無い分
だけ、余裕が生まれ描写の端々に産まれるユーモアは出色である。映画を作って
いる人々、作りたい人々は作品を楽しみつつ学ぶことも多いだろう。

 オープニングでのショッキングシーンなトラウマ感とエンディングの無常感だけを
何度も何度も思い出して愉しんでいる。

 ロメロが何度でも繰り返し描く手足グチョグチョ内臓ベロベローの世界は誇張でも
なんでなくて、寧ろ控えめですらある『この世界』の一面なんだ。
 
 殺して生きるか、殺されるのをただ待つか。殺さず、そして殺されずに生きる術、
それは我々の先人達は知っているはず。我々は我々の先人達を見失い殺戮
ゲームに組み入れられてしまった。
 
 
、、、
 
何だか妙に静かな夜だね。
 
テレビが映らないわ。
 
本当だ。一体どうしたんだろう。
 
ほら、窓の外を見てごらん

誰かがを振り上げて真っ直ぐこっに向かっ、、、、
 
 
 

---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

|

« 癒_11_08_11 | トップページ | 観_11_08_13 »

映画」カテゴリの記事

コメント

この映画
リメイク版が公開されたときに
テレビや劇場で再映されたり
DVDの廉価版が出たりしないかなー
と思ったのですが
全くなかったですね・・・(;_;)
 
税込5,040円のDVDのみ
高いよー

投稿: 万物創造房店主 | 2011年8月15日 (月) 17時43分

>全くなかったですね・・・
 
このオリジナルは
相当に"いい味"が出ている良作
なので越えるのは容易ではないと
思います。全くなかったのは
『リメイクがしょぼいのがばれる』
のを防ぐためだったのではないですかね。
 
>税込5,040円のDVDのみ
 
しょぼい作品を沢山の人に
見せて元手を取るための手段であると
(^^;)
 
まあ、自分は
優れたクリエイターや本気で傑作を
作っている人々の懐に還元されるのであれば
高いのはやむを得ないと思いますね。
まあ5千円は高いですけどね。
 
「THE CRAZIES」
だったら貴重なインタビューとかメイキングとか
色々入れて3000円くらいなら買いたいですね。
2000円とかだと安すぎて残念。。
という感じですか。
 
優れた映画作品はそこそこのお値段
(3000円程度)でファン垂涎の秘蔵映像とか
入ってファンも幸せ、作った側も次の作品への
意欲と生活が安定して幸せ。。
となって欲しいというのが自分の意見ですね。
業者の思う壷かもしれませんが(^^;)

投稿: kuroneko | 2011年8月16日 (火) 01時14分

>(3000円程度)でファン垂涎の秘蔵映像とか入って
それくらいなら全然OKですよ

投稿: 万物創造房店主 | 2011年8月16日 (火) 16時10分

中高生の頃に
毎日早起きして新聞配達して稼いだ金を
一作品9800円!!とかする
レーザーディスクにせっせと
全財産を注ぎ込んでいた若き日々が
懐かしい。。( ̄ー+ ̄)
今ならDVDでも数百円で買えちゃうような
B級作品ばかり(;;一_一;;)

投稿: kuroneko | 2011年8月17日 (水) 00時44分

>B級作品ばかり(;;一_一;;)
いやいや
著作権切れ名作映画もありますよー

投稿: 万物創造房店主 | 2011年8月17日 (水) 17時12分

>著作権切れ名作映画
 
ですね。
まだまだ映画の旅は続く。。
( ̄ー+ ̄)

投稿: kuroneko | 2011年8月18日 (木) 01時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 癒_11_08_11 | トップページ | 観_11_08_13 »