映画「キートンの大列車追跡」
2010年に見た映画(十八) 「キートンの大列車追跡」
原題名: The General
監督: バスター・キートン,クライド・ブルックマン
出演: バスター・キートン,マリアン・マック,グレン・キャペンダー
時間: 50分
製作年: 1926年/アメリカ [モノクロ]
2010年 2月鑑賞
(満足度:☆☆☆+)(5個で満点)
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アメリカ南北戦争(1861-1865)を題材にしている作品であるが、キートン
演じる主人公は奴隷制度の容認(黙認)側であった「南軍側」であるのが
観ていてちょっと面白かった。第二次大戦が舞台であれば、"映画の主人公"
というものは反ナチでなくてはならないし、他の旧体制の時代の設定であれば、
とにもかくにも自由主義の闘士でなくてはならない。要は何か理由を付けて
「体制側に反抗しなければ」ならないのであるが、本作では主人公が屈託
無く後の時代に否定された側の市井の人間として描かれていることに、
「健全な思考の自由(ワイドレンジ)性」
とでも呼ぶべき逞しさがあって、世界的に映画の黄金時代で且つ近代の
一代青春時代ともいえる1920年代の作品の一つであることを感じずに
はおれない。
作品そのものは、多くの点で「キートンの探偵学」(1924)の方が洗練
されているように思いながら観ていたのだが、製作年は逆で本作の方が
後ろに位置する。こちらの方はやや大味な感じを受けた。カメラワークの
技術や画面の奥行き感は本作の方が上か。正直言って、50分はかなり
長く感じた。
ヒロインの動きがチャーミング。キートンに"女"として何とか受け入れら
れようと、健気に機関車の釜焚きをしたり敵役の北軍の兵士をやっつける
手伝いをしたりするがキートンは他の諸作品でもそうなのだが、ヒロインを
一貫して女性としては一切扱わず薪が小さいとか動作がノロイとかで小突く
わけだが勿論"観点が異常"で女心を微塵も理解しないという"ギャグ"。
多分異性に同様の仕打ちを受けているか受けたことがあるのだろうと思う
(←余計なお世話)。観客の女性が一人爆笑していた(←気持ちは判る)。
"超"アクロバティックでワンシーン・ワンシーンが奇跡的な身体の動きが
延々と続くのだが、「キートンの探偵学」製作時に首の骨を折った(が数年後
まで気付かず!)というのも実に合点がいくエピソードだ。多分本物(か本物を
撮影用に仕立てた)機関車の取り扱いの縦横無尽振り且つ無茶ぶりを含めて、
「古き良き時代」といっていいのかもしれない。
機関車を駆使したドタバタ喜劇としては、今のところの個人的には
「マルクスの二艇拳銃」(1940)が圧倒的に他を引き離して一位である。
他に機関車が活躍するコメディ系映画としては「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅢ」
(1990)が大健闘している。
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