映画「ノスタルジア」
「ノスタルジア」
Ностальгия
Nostalgia
Nostalghia
監督: アンドレイ・タルコフスキー
脚本: アンドレイ・タルコフスキー,ト二一ノ・グエッラ
撮影: ジュゼッペ・ランチ
美術: アンドレア・クリザンティ
出演: オレーグ・ヤンコフスキー,エルランド・ヨセフソン,ドミツィアナ・ジョルダーノ
時間: 126分 (2時間6分)
製作年: 1983年/ソビエト・イタリア
(満足度:☆☆☆☆☆+)(5個で満点)
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鑑賞中に「2001年宇宙の旅」(1968)を何度か思い出していた。それ以上の
思考の動きはほぼ完全に放棄してしまっている自分がいた。"とてつもない物"
を見せられていることは確信出来ているが、"それ"が何だかさっぱり判らない。
我々が生きて死ぬまでに観ている"物"というのは単に眼球に映り、脳に
送られた信号が再処理されて、意味を与えることにより理解しているに過ぎない
意味の羅列に過ぎない。無数の映画・映像と呼ばれるものは我々の
意味の羅列のルールに乗っているゴーカートに過ぎない。しかし、タルコフスキー
の作品は小惑星探査機「はやぶさ」の"見た"であろう光景のように、
人間という観客に見せることなぞ意に介さないように『本当の光景』を
見せ付けて、我々は震えるしかない。
「映画は恐ろしい」と言ったのが黒沢清であれば、黒沢清は間違いなく
天才なのだろう。
「映画は本来はとてつもなく恐ろしい」だが、恐ろしい映画を作る環境を我々
人類(と、言いながら実際はごく特定の超戦闘的な民族)は莫大な、天文学
的な大金をと人命を惜しみなく消費して、99.9%失ってしまった。代償として
手に入れたのはポンコツで浅墓な為政者と、彼等が未来永劫居座り続ける
ことが可能なルールと、空恐ろしいばかりの破壊された生活環境である。
それでも、それらの偏狭で悪質で巧妙で複雑極まる"機構"に真摯に
向き合へば、『恐ろしい映画』(=本当の『映画』)を作ることは"可能"なんだ。
壁・女・男・雨・風・炎・祈り・他者という恐怖・自己という大嘘。。。最後まで
ガタガタと小さく震えながら観た。脳の、頭蓋骨の裏側の血流による圧迫の
振動音を感じるかのような恐怖と経験したことのない畏怖に耐えながら。
「もしも、この作品を観なければ、自分はいずれ奈落の底に落ちていたかも
しれない」上映が終わった瞬間にふとそう思った。
「映画は(本来は)とてつもなく恐ろしい。自分が何一つも見えずに、
何一つも感知できずに、ただ生き、ただ死んでいくだけの存在である
ことを思い知らされるから。そして、だからこそ、『映画』は素晴らしい」
by kuroneko
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