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2011年11月13日 (日)

映画「フローズン・リバー」

2010年に見た映画(二十六) 「フローズン・リバー」

原題名: Frozen River
監督: コートニー・ハント
脚本: コートニー・ハント
音楽: ピーター・ゴラブ,シャザード・イズマイリー
出演: メリッサ・レオ,ミスティ・アパーム,チャーリー・マクダーモット
時間: 97分 (1時間37分)
製作年: 2008年/アメリカ

2010年 3月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)

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 夫に新居の購入費用を持ち逃げされたレイ(メリッサ・レオ)は、
子供達と共にトレーラーでの困窮した生活を送っていた。失踪した
夫を捜すうちに、夫の車を運転していたモホーク族の女性ライラ(ミスティ・
アパーム)と出会う。成り行きから、ライラと共に凍結した河を車で渡り、
密入国を手助けする仕事に手を染めるレイ。それは、いつ警察の厳しい
監視に見つかり逮捕されるかもしれない、いつ車の重量が河の凍結を越えて
沈むか判らない危険極まりない日々の始まりだった。。

 

 主人公の中年女性レイを演じるメリッサ・レオの絶妙な"普通のオバ
サンオーラ"がとてもセクシーで時にエロティカルでもある。生活に
深刻に困窮してはいるが、本当にギリギリのところでは人間としての
"誇り"と"尊厳"を保って、きちんと着飾れば美しいはずの色気も持って
いるが安易に男にも屈せずに小さな息子と年頃の生意気盛りの息子二人
を必死で養うシングルマザー(夫は蒸発中)を上手く演じている。

 舞台はニューヨーク州の最北端に位置する極寒の地で、国境に接して
いて碌な産業も働き口も無いであろう小さな街であり、ごく普通の当たり前の
生活を手に入れようとすれば犯罪行為に抵触するか抵触寸前の行為を
するしかない。ポリスもそんな環境であることをよく知っているから"ヘマ"を
しなければそれなりに見逃すが、明白に"一線"を越えれば恐ろしいほどの
割合に昇るであろう"犯罪予備軍"の一般市民(貧民)への見せしめを兼ねて
容赦はしない。

 白人女性のレイと、カナダとの国境付近に保留地として住むモホーク族の
ライラ。二人は生活の困窮からなし崩し的に悪事に手を染め、常に"お縄"に
転がり堕ちるギリギリのところでかろうじて踏ん張っている。運も才能も根気も
正義感もあらゆる意味で"普通な二人"の女性が密入国に手を染めることで
どのシーンもいつ二人のどちらかが、あるいは両方が破滅へと転落するかも
判らない緊張感が常に漲っていてドラマとして完全に成立し成功している。

 レイとライラに何事もなくても、
もしも、子供に何か事故が起これば、
もしも、上の子供が非行に走れば、
もしも、"仕事"で渡る河(フローズン・リバー)の氷が少しでも緩んでいれば、
もしも、警察に車を止められれば、
もしも、取引先のオヤジとトラブルになれば、
、、、

『破滅』は常に大きく大きく、大きく口を開けて、24時間年中無休で、
満面の笑みで涎を垂らして、二人を大歓迎で待ち構えている。

 モホーク族の女性ライラを演じたミスティ・アパームも上手い。
この人はきっと相当に幅の広い役柄を演じることが出来るだろう。
監督と主演の女性二人、輝いている。心から三人とも活躍してほしい。
映画はお金をかけなくてもこんなにも面白い!という良いお手本の作品。

 本作のような予算としては小さいけど優れた作品に賞を沢山上げて、
エンジンとしての機構を備え付けて、世界中を走らせて次回作までの
資金とスタッフの生きていく糧を得るやり方は、映画という成果品を世の中
に出していく上で必要な手順と仕組みであり、を作る側も観る側も承知の上で
楽しんでいけばよいのだろう。本作が製作され、配給され、資金が回収
されていずれ次回作に繋がっていく様そのものがもう一つの『映画』の
真の姿である。今までもこれからも何ら変わることはない。

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