« 映画「抵抗」 | トップページ | 観_12_03_25 »

2012年3月25日 (日)

映画「クレージー黄金作戦」

「クレージー黄金作戦」

原題名: クレージー黄金作戦
監督: 坪島孝
脚本: 田波靖男,笠原良三
音楽: 宮川泰,萩原哲晶
撮影: 内海正治
美術: 竹中和雄
出演: 植木等,ハナ肇,谷啓,石橋エータロー,安田伸,浜美枝,園まり

時間: 157分 (2時間37分)
製作年: 1967年/日本 東宝

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
--------------------------------------------------
植木等(坊主)・ハナ肇(政治家)・谷啓(医者)がそれぞれの目的で
ラスベガスを目指し、一攫千金の大勝負を賭けるコメディー大作。

 

 1945年9月2日、アメリカ戦艦ミズーリ上における降伏文書の調印
により、太平洋戦争は終焉を向かえた。敗戦国となった日本の戦後
復興の絶頂であり象徴となる東京オリンピックがそれから19年後の
1964年に行われ、そこからさらに3年後、戦後23年もの月日を経て、
本作は日本映画史上において"初めて"アメリカ本土ロケが敢行され、
ラスベガスのメインストリートを封鎖しての撮影が行われたことが、
「全て」であると言っても決して過言ではないように思う。

 紆余曲折を経て、ラスベガスに辿り着いた谷啓、ハナ肇が歌い踊り、
ハシャぎ回る。そして、たった10数秒に過ぎないクレイジーキャッツに
よるメインストリートの封鎖。背後には撮影に協力する為に通行止め
をするポリスと物珍しげに見守る群衆達。

 幾多の上映作品の一つに過ぎないコメディ作品であるが、この
たった数十秒の意味するところにおいて唯一無二の位置を占めることに
なった。撮影陣の中にも自覚する人はきっといたはずであり、この
貴重な記念すべきシーンに公開当時、劇場で涙した人はきっと少なく
ないであろうと想像する。自分もごく短いシーンながら、植木等達の
屈託の無い笑顔と歌に感極まるものが若干あった。

 コメディ作品ではあるが、植木・ハナ肇・谷三人の設定にそった
お芝居は実に堂々としていて、物語に沿ったロケ、セット、脇役達
どれもしっかり撮られている。特にハナ肇の政治家振りは演技を超えて
"オーラ"が出ていて、アメリカで撮られた無人の屋外広場での大演説
振りは史上初のアメリカ本土ロケの意味と相まって大きな見所といえる。

 次代を席巻する志村けんが加入する前の荒井注が在籍した頃の
ドリフターズ(ザ・ドリフターズ)がワンシーン出演しているのも楽しく、
今や貴重である。いかりや長介、加藤茶を中心にして、「あの」雰囲気
はすでにほぼ確立しているが、本作制作当時まではメンバーの変遷
も多く、やっと安定した時期の出演だったようだ。志村けんが加入して
後世の人々に長く記憶される全盛期のメンバーになるのは1974年のことだ。

 「無責任一代男」が大ヒットし60年代に隆盛を迎えた"クレイジーキャッツ"
の占めた位置を70年代中盤から"ドリフターズ"が取って代わり、80年代
に入るとビートたけし率いる"オレたちひょうきん族"の猛追を受ける。
さらに1985年のプラザ合意を契機に日本はバブル景気へと突入する。

 本作の製作スタッフ陣は、クレイジーキャッツ等を含むコメディ作品を
多数手掛けているが、脚本の笠原良三は他と一線を画して戦中作品の
秀作にして邦画史上において貴重な作品「土と兵隊」(1939年)や
「南の島に雪が降る」(1961年)(未見)、「越前竹人形」(1963年)(未見)等の
脚本を手掛けている。本作が終盤まで重心が安定したバランス感覚を
失っていないのは笠原良三の参加が"碇"の役目を果たしているから
ではないかと愚考するがどうだろうか。

 かつて、日本は開国し、富国強兵に勤しみ、戦争をし、敗北はしたが、
復興を遂げた。それからほどなく経済的絶頂期を向かえ、バブル崩壊は
第二の敗戦と呼ばれ、サリン事件が起こり、失われた10年とも20年とも
言われ、2011年、戦争状態に匹敵するかそれ以上の未曾有の大人災
に見舞われることとなる。

  

 われわれはどこから来たのか、
 われわれは何者か、われわれはどこへ行くのか。

 
  

--------------------------------------------------
映画感想一覧>>

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

|

« 映画「抵抗」 | トップページ | 観_12_03_25 »

映画」カテゴリの記事

コメント

クレイジーキャッツの映画はいつか全部見てみたいと思いながら
二・三本で中断しています
 
そういや
ドリフの映画は何故か全くDVD化されないですね
 
関東ではシアター公開してたりします?

投稿: 万物創造房店主 | 2012年3月31日 (土) 16時44分

>クレイジーキャッツの映画はいつか全部見てみたい
 
出演作品だけならかなりありますねー
タイトルに"クレイジー"(クレージー)が付いている
だけなら10数本になるので制覇できそうですな。

「クレージーの殴り込み清水港」(1970)が
気になる。。(^^;)
配役見ているだけで笑えますね。
 
>ドリフの映画は何故か全くDVD化されない
 
「ドリフターズ」という商品についての権利関係
が色々難しいのじゃないですかねーメンバーの
変遷は全盛期に入るまでに非常に入り組んでいる
のも未ソフト化と関係あるかもですな。 
 
>関東ではシアター公開してたりします?
 
"コメディ特集"というのは時折やってるようですね。
ただドリフターズ以前の60,70年代初頭くらい
までですかね。エンタツ・アチャコとかフランキー堺
とかあちら系の。ドリフターズやクレイジーキャッツ
みたいに"人気が出たから映画を作ろう"という
傾向の作品はターゲットが想定しにくくて良くも
悪くも特集上映は組みにくい気がしますね。
局地的には「ドリフターズ特集」とか催されている
かもしれませんが。。

投稿: kuroneko | 2012年4月 1日 (日) 01時06分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 映画「抵抗」 | トップページ | 観_12_03_25 »