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2012年3月24日 (土)

映画「抵抗」

2010年に見た映画(三十九) 「抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-」

原題名: Un condamné à mort s'est échappé ou le vent souffle où il veut
/A MAN ESCAPED
監督: ロベール・ブレッソン
脚本: ロベール・ブレッソン
撮影: レオンス=アンリ・ビュレル
美術: ピエール・シャルボニエ
編集: レイモン・ラミ
音楽: モーツアルト「ミサ曲 ハ短調 K427」
出演: フランソワ・ルテリエ,シャルル・ル・クランシュ,モーリス・ベアブロック
時間: 97分 (1時間37分)
製作年: 1956年/フランス [モノクロ]

2010年 4月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)

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ドイツ占領下にあった1943年のフランス。フォンテーヌ中尉(フランソワ・ルテリエ)
は逮捕され、脱獄不可能と言われていたモンリュック監獄の独房に収監される。
フォンテーヌは隙を見ては仲間と連絡を取り合い、やがて脱出を決意する。。
原題は「ひとりの死刑囚が逃げた、あるいは風は自らの望むところに吹く」。

 

 ロベール・ブレッソン(1901-1999)の作品は余り意識しない間にここ数年で
幾つか見ていた。

「罪の天使たち」(1943)
「スリ」(1959)
「ラルジャン」 (1983)

本作も含めて、共通するイメージは「静かである」というところか。いわゆる
映画的な、物語的なドラマの盛り上がりを軽蔑するかの如くに排除し、その
徹底振りにおいて、観客よりも同業者達を驚かせ、畏怖させたようだ。確かに、
本作も含めて他の作品についても

お前は一体"何"を食べた(鑑賞した)のだ?

と問われても即座に答えられないものの、確かに材料と調理法をしっかりと
吟味された美味しい料理(作品)を食べた(鑑賞した)という満足感が
いつまでも続く点においても各作品に共通しているように思う。

 本作においては、徹頭徹尾フォンテーヌ中尉の視点から描かれ、彼が
脱獄を試みる過程を延々と淡々と描いていくわけだが、描写はいって
しまえば「ただそれだけ」なのだが、単調かと言われれば決してそんな
そんなことはなく、「脱獄」を描いているという事とは別の次元で充分に
スリリングである。これは、「ある男の脱獄の物語」を描いているのではなく、

フォンテーヌ中尉という一個の人間が置かれた状況と、そこからの
脱出を決意した内なる心の発露としての脱獄

を捉えるのだと、監督は作品を構築した上でフィルムに一部始終を
焼き付けているので観客は目が離せないのであろうと思う。

作家や映画人達が、何事かの作品を世に問いたいと思うがゆえに
先人達の偉大でり傑作ではあるだろうが、「この世界のコピー(複製)」
に過ぎない"作品"の咀嚼と批評と分析ばかりになり、結果として
コピーのさらなるコピーばかりが蔓延することになるということと、
そのことについては、暗黙の了解として「決して触れない」という
コードにブレッソンは果敢に挑戦している点について、冷静に考えると、
実は当たり前のことではないか?と思うのだが、その当たり前のことが
いかに異質で一種のタブーであるかをブレッソンの作品は思いしらせて
くれる点において、普遍の価値があるように思う。

 虚飾を廃した、一見地味な描写の連続がラストの、形容し難い
貴重な、人間としてとても大切な『Something』をごく数秒間だけ
描くことに成功している。

 原題の「ひとりの死刑囚が逃げた、あるいは風は自らの望むところ
に吹く」の"あるいは~"はヨハネによる福音書第3章第8節から引用
された言葉であるとのこと。

 この場合の"自ら"はフォンテーヌ中尉に象徴されるような、"意志の
ある者"のことで、「風(福音?)は意志ある者達にこそ吹く」というよう
にとれるが、福音書の方は

風は勝手気ままに吹き貴方はその音を聞くことはできるが
どこから吹いてどこにいくのか知ることはできない

という訳になるようで、作品の言わんとしているニュアンス、肯定したい
エッセンスとは幾分異なる。

世界はそう簡単に整合性が取れるものでもなく、それゆえに面白く、
苦難に満ちている。

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