映画「バリエラ」
「バリエラ」
原題名: Bariera
監督: イエジー・スコリモフスキ
脚本: イエジー・スコリモフスキ
撮影: ヤン・ラスコウスキー
音楽: クシシュトフ・コメダ
出演: ヤン・ノウィツキー,ヨアンナ・シュチェルビツ
時間: 82分 (1時間22分)
製作年: 1966年/ポーランド
2010年 6月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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机から微妙に離れた位置の人体標本に載せられたマッチ箱。
両手を後ろ手に縛られて、上体を乗り出して口で"それ"を咥える
ことが出来れば、学生時代に共同で貯めに貯めた豚の貯金箱を
独り占めすることが出来る。4人の男達は失敗を繰り返すが、
最後には一人の男が成功する。男は、学友達と別れ豚の貯金箱を
小脇に抱えある女性の元に向かうが。。
現実の世界での出来事なのか、妄想なのか、その両方なのか判然
としない場面展開の連続は名作「8 1/2」(1963)を連想させ、主人公と
他者(年長者達)との『コミュニケーションの不可能性』をそのまま映像化
したシュールさと不気味さにおいては「アンダルシアの犬」(1928)にも
通じるものがある。
誰も祝わない披露宴、意味不明な脇役達の行動、不快感をひたすら
増長させる踊り、社会主義国会の「不合理なる人工性」とでもいう
べき生理的な直感的な"不安感"を映像として具現化している点は
秀逸で、その展開のスピード感も妖しく、そして心地よい。タルコフスキー
が主に後期の作品において顕著に見られるフィルムにテンコ盛りに
している『目に見えない何か』をスコモリフスキーもまた敏感に感じ
取っていたに違いない。
「人は皆、巨大な怪物の体内にいるのだ」
とでも叫びたい圧倒的な不快感を。
その怪物の影はゼロ年代以降の作品で圧倒的且つ決定的な足跡を
遺した偉大なる巨人タル・ベーラの作品を覆っている怪物と同じものか。
個人的には"映画作品"としてはもっと尺が短くあってもよいと思うの
だけど、増長し続ける退屈感を観客に押し付けることもまた作品のテーマ
であり、監督の狙いではなかろうかと勝手に思いながら観た。
前半で掃除に勤しむオバハンが突然歌いだすシーンがツボで大好き。
鑑賞中に"爽快な風"が吹くのを確かに感じた。
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