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2012年7月 7日 (土)

映画「ウィンター・ソルジャー」

「ウィンター・ソルジャー」

原題名: Winter Solider
時間: 95分 (1時間35分)
製作年: 1972年/アメリカ
製作: ウィンターフィルム/戦争に反対するベトナム帰還兵の会

2010年 7月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)

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1971年1月31日、アメリカのデトロイトで行われたベトナム戦争
帰還兵による公聴会「ウィンター・ソルジャー公聴会」の模様と、
戦場を体験した若者達の証言、当時の戦場の模様を記録した
フィルムで構成されたドキュメンタリー作品。

 

 実際に「現場」を見た人間にしか語りえない事。その証言の"力"。
本作は、その"力"が全体に漲っている傑作ドキュメンタリーといえる。
公聴会で発言する帰還兵のほとんどは本来は、ごく普通のアメリカの
若者であり、一市民であり、学生に過ぎなかった。発言者の一人の眼
には涙と後悔と怒りの念が渦巻いていた。ただ、戦場体験を、政府の
失政を告白・告発するだけではなく、国民の義務以上の体験を強いられ
人生を汚された、自らも一線を越え同じ人間に与えた常軌を逸した行為
に加担してしまったことへのやるせなさに。

 日常的に行われるレイプやリンチ。面白半分に、後ろ手に縛った
上で捕虜をヘリコプターから落す。自分の搭乗するヘリからも落とし、
飛行している前後の機体からも落とされていく捕虜を見つめる
「戦争だから。敵対しているから」では済まされない異常な光景と日常。

 作中で挿入される戦場でインタビューに答えるある若いアメリカ兵は
多分、マリファナを吸っているのだろう。「どうして、ここに君はいるのか
理解しているか?」という主旨のインタビュアーの質問に対してヘラヘラと
笑い寝そべったまま適当に答える

「さあ?何かの為に来てるんだろ?俺達」

その表情・仕草はオリバー・ストーンの「プラトーン」(1986)で描かれる
主人公クリス・テイラーと何から何までまるっきり瓜二つだ。

 公聴会でベトナムの戦場における日常的な不正と犯罪行為を告発した
若者の発言に会場にいた黒人の同じ世代の若者がすっかり興奮して
「ブラザー」と連呼して、ベトナム戦争と黒人を始めとしたマイノリティ層
への抑圧・人権運動などをすっかりごっちゃにして話しかけ、会話がまるで
噛み合わず、元兵士の若者が閉口している様を延々と捉えているのも
"ドキュメンタリー作品として"実に秀逸で製作者側のインテリジェンスは
高い。

 単に、反戦ということではなくて『権利』についての本当の意味に
ついて考えさせられる窓口の機能を有していて、アメリカ側、ベトナム側、
という視点ではなくて、本意ではない内に、いつのまにか生殺与奪の権限
を得てしまった人間と奪われてしまった人間に何一つ違いはないのだ
ということを気付かせてくれる作品でもある。

 「戦争ポルノ」に堕ちている凡百の"ベトナム物"映画を観るよりも、
本作を観て、自分の現在の立ち位置、「レーゾンデートル」について考えて
みることの方がどれほどか『平和』の役に立つことだろう。

 本作は存在していい、存在すべき「作品」であって、老若男女誰でも
手軽に鑑賞できるべきである。特に中高以上の教育関連に携わる諸氏は、
卒業・入学・進級時などでこの作品を見せて感想でも書かせてディスカッション
なぞをしたら、思考に奥行きのある人間が育ってよろしいかと。 

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コメント

>ベトナム戦争と黒人を始めとしたマイノリティ層への抑圧・人権運動など
こういうことができる根底には人種差別もありますから
あながち間違いでもないと思いますけど
所詮、黒人は黒人の事しか考えてないですよね
 
太平洋・大東亜戦中のアメリカでは黒人がアジア人をさらに下に見て蔑視してましたから
おまえらに言えるのかって話もあります
 
まぁ何にしろ
 
黒人が公民権を獲得し
人権問題が進んだこのベトナム戦争時代ですら
アジア人に対する仕打ちがこのレベルですから
 
太平洋・大東亜戦中に
アメリカにおいて黒人よりさらに下層とみなされていた
日本人・中国人がどんな扱いをされていたかは、ちょっと考えれば想像できるってもんです
 
それを
当時のアメリカ兵は天使のような人ばかりで、日本兵は悪魔のような人ばかり
と思っている人間が多くいる
 
勝者の作った歴史は覆すのが難しいですね
  
>「戦争ポルノ」に堕ちている凡百の"ベトナム物"
でも意外に
ナチプロテーションや日帝プロテーションレベルまで行ってるものはないですよね
 
アメリカ兵が、狩りして、犯して、拷問して、解体して、食って、人間から油を絞って車を動かしたり、剥製にして壁飾りにして、お土産に持って帰る
みたいなのあってもいいのに

投稿: 万物創造房店主 | 2012年7月10日 (火) 17時14分

>アジア人に対する仕打ちがこのレベルですから
 
『ベトナム戦争』という語感とイメージは
未だに確固として、"アメリカ側から"の
一方的な視点でしかないですね。大勢としては。
日本においても。
 
>勝者の作った歴史は覆すのが難しいですね
 
これはネットのお陰でだいぶ矯正できるのでは
ないかと思いますね。現在進行形の経済戦争に
ボロ負けの様相で何か昔の戦争調べていても
虚しいっちゃ虚しいですけども(^^;)
 
>アメリカ兵が、狩りして、犯して、拷問して、解体して、
>食って、
 
「地獄の黙示録・特別完全版」(2001)は
描写自体はないけど、アメリカ側のモラルのほぼ
完全な崩壊は"匂い"は出ていて傑作だと思います。
ロジャーコーマンとかそういうの描いてないすかね。
 
「映画」って昔も今も一貫して、
特にハリウッド映画はまんま
=プロパガンダ
なんだってことに日本人はもっともっと自覚して
映画を観るべきですね。
最近のお隣の某国が作る作品なんかも。
テレビドラマも。
洗脳、洗脳、また洗脳、、

投稿: kuroneko | 2012年7月11日 (水) 01時36分

>ボロ負けの様相で何か昔の戦争調べていても
まぁでも
そこからもはじめないと
次に行きようがないですから・・・
 
>地獄の黙示録
「地獄の」で思い出しました
燃えよドラゴンに出てたジョンサクソン主演のイタリアホラー映画
「地獄の謝肉祭」
ベトナムで人肉食いになった主人公が本土で食いついたところ
食いつかれた人がみんな人肉食いになっていくという・・・
トンデモホラーです
 
>特にハリウッド映画はまんま=プロパガンダ
ですね
特に歴史に興味がない人たちは、疑ったり調べることなく、それが真実と思ってしまう
怖いことです
 
>最近のお隣の某国が作る作品
最近、お隣のナ・ホンジン監督が面白いんです
「チェイサー」と「哀しき獣」
タイトルやトレーラーは悪いですけど
中身はいい!
DVD貸したら
間彩さんは二回づつ観たって言ってました
 
>洗脳、洗脳、また洗脳
閔妃の韓国での評価も
ドラマ公開後
「国を滅ぼしたクソ女→悲劇のヒロイン」と
180度変わったらしいですから
あちらはもっと恐ろしいですね
「ドラマ=史実」と思っちゃう度が日本よりさらに高い
 
まさか日本人に
チャングムが全ての東洋医学を発明したような描写を信じてる人はいないと思いますが・・・

投稿: 万物創造房店主 | 2012年7月12日 (木) 16時08分

>次に行きようがないですから・・・
  
OKっす。。(ーー;)
 
>食いつかれた人がみんな人肉食いになっていくという・・・
 
「ゾンビ方式」ですね。
資本主義も社会主義も人は人に取り付き、
取り付かれていくすねー
 
>それが真実と思ってしまう
>怖いことです 
 
ネットは人々の思考の矯正に
かな~り役立っていると思います。
 
>中身はいい!
 
そうですかー
そっち方面は喰わず嫌い状態になりつつある私(^^;)
今度「遊京」した際に感想おば、、
 
>あちらはもっと恐ろしいですね
 
3.11大人災を契機にアホバカ政治家共の
お陰で"あちら"が"こちら"に来ちまってますね。
アッチにいてくださいませ。永遠に。。
私達日本人は「脱亜論」で行きますので。
長年居座っている変な奴等も連れて帰ってください。
^^(*・。・)^^ノ~~~βyё βyё♪
 
>まさか日本人に
 
結構大変な状況になっている気が、、、
頑張りましょう(^^;)

投稿: kuroneko | 2012年7月14日 (土) 02時09分

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