映画「告白」
「告白」
原題名: 告白
監督: 中島哲也
脚本: 中島哲也
撮影: 阿藤正一,尾澤篤史
音楽: 金橋豊彦
美術: 桑島十和子
出演: 松たか子,岡田将生,木村佳乃,芦田愛菜,橋本愛
時間: 106分 (1時間46分)
製作年: 2010年/日本 東宝
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
--------------------------------------------------
失われた一つの幼い「命」。犯人は不明。それ以外は何も変わら
ないいつもの風景。いつもの退屈な学校。いつもの終業式。のはず
だった。女教師森口(松たか子)が"ある事"を生徒達の前で"告げる"
その瞬間までは。「自分の娘を殺した犯人がこのクラスの中にいる」
ということを。。
物語が"一点"に収束するかに見えて、また拡散していく様の見せ方が
上手い。ただ、自分としては「拡散しないで収束して欲しい」と思って観ていた
ので、後半はスクリーン上で展開する物語の各パーツを自分の脳内で
色々と組み替えたり補完したりして、自分だけの物語に再構築して観ていた。
「学校」という余りにも特殊で細密な"磁場"そのものを網の目同然に
張り巡らす「システム」の中で、生徒という生徒は一人残らずその網の
目に捕われて苦しみもがき生きてる。と、同時に若さと馬鹿さ溢れる
子供達の多くが、そんなことには頓着せずに笑い、泣き、○○ちゃん
が好きだ、嫌いだと騒いで生きている。
特定の生徒にフォーカスしたり、ある特定の感情・情緒をフィルム
に再現することはそれほど難しくないが、モッブシーンを抑えながら
全体の、総体としての「空気」を再現するのはそれなりにテクニカルな
手順とセンスが必要である。これは完全に合格という作品にはまだ
出会っていないし、本作はその点については最初から主眼ではない
というスタンスではあるが、主眼ではないという逃げを使いながら
広い観客層へのアピールする程度の再現には成功していると思う。
個人的には、教室内の"狭さ"、空間的・物理的な狭さではなくて、
子供達の放出するエネルギー量に反比例する狭さ、夕焼けのシーンの
時間的な意味と効果、そういった描写について"萌え"て楽しめた。
橋本愛を筆頭にして、将来の映画・テレビドラマを牽引していく
であろう才能の卵達をこぞって出演させているが、『学校』という絶対
的な恐怖=変換不可能な機構そのものを描くことはしていないので
本作が出演者達本人等はともかくとして、普遍的価値を持つまでには
残念ながら至らない。勿論、そんなことは製作者側の意図ですら
ないであろうから「無いものねだり」に過ぎない。
本作の最大の功績、中島哲也を"船頭"としての賞賛されるべき
功績は、優れた作品に成りえる各セクションの"パーツ"はきちんと
邦画界にあるのだという力強い証明だろう。予算いっぱい、頭と体と、
お金と時間をどんどこ使ってパーツが錆びついたり、枯渇したり散逸
したりしないように映画界に携わる諸氏は引き続き手綱を引き締めて
頑張って頂きたい。
"形"にはなっていることに大きな、惜しみない拍手を送ります。
--------------------------------------------------
映画感想一覧>>
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 映画と賞を取ることについて関係性における独り言(2021.05.02)
- 映画「ジョーカー」(2020.12.09)
- 映画「魂のゆくえ」(2020.07.24)
- 映画「愛の渇き」(2020.05.01)
- 特撮映画における或る命題について(2020.04.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
これ早くテレビでやらないかなぁーって待ってるんですけど
やらないですね
内容的にダメなんですかねぇー
投稿: 万物創造房店主 | 2012年7月17日 (火) 16時06分
>内容的にダメなんですかねぇー
内容はいたって"普通"で
・殺人(含む未遂&親殺し)
・イジメ
・校内暴力
・無差別テロ
・ちょっとロリ(橋本愛が可愛い過ぎ)
くらいですけど( ̄ー+ ̄)
世の中が馬鹿過ぎ&幼稚園児レベルの人が多すぎで
この程度のまあまあボーダーくらいの作品でも
刺激が強過ぎるんでしょうね
レンタル借りてきて観る価値は充分ありますよ。
松たか子を始め
皆さんgood job(*^ー゚)b
です。
投稿: kuroneko | 2012年7月18日 (水) 00時25分
>レンタル借りてきて観る価値
ベジ太くんにお願いしよう
僕、レンタル会員
どこも10年以上期限切れてるんで・・・
投稿: 万物創造房店主 | 2012年7月18日 (水) 22時48分
>レンタル
そうですね。
これは良くも悪くも
「普通」の作品なので
一人で観るよりはサクサク借りてきて
二三人でワイワイ観てお喋りするのが
楽しい作品かもしれないです。
男女問わず「普通な映画好き」の方々に
かなりお勧めしましたね。この作品は。
>レンタル会員
私、4枚くらい会員カード持ってましたが
全部閉店しました・・・(ーー;)
投稿: kuroneko | 2012年7月19日 (木) 00時50分
>全部閉店
あらー
閉店時に天然記念VHSとか捕獲しましたか?
投稿: 万物創造房店主 | 2012年7月20日 (金) 18時46分
いやーそれが
「○○円かー。明日にしよう。。(ーー;)」
とか悩んでいる間に目ぼしいのは
買われていってしまったです。
残念!
一番高くても1000円弱程度だったのですが(^^)
ほんの数作品はゲットしてありますが
「ビデオデッキ」の方を今の内にリニューアル
しておいた方が良さそうですね。
投稿: kuroneko | 2012年7月22日 (日) 01時33分
おー
そーいえば
最近のジャッキーのBRがいい感じですよ
特に
「プロテクター」
アメリカ公開版(エロあり・ハードボイルド)
日本公開版(日本語吹替アリ・音楽が違う)
香港公開版(香港でアクションシーン撮り増し)
の全く違った三つが入っています
今まではVHSで香港版
DVDでアメリカ版を持ってたんですけど
思わず買っちゃいました
ブルーレイは実家の方のリビングにしかないんですけどね・・・
たいがい
BR2本三千円コーナーにありますので
とりあえずゲットしとくといいと思います
ちなみに僕は抱き合わせに
「サンダーアーム」を買いました
これだけVHSもDVDも持ってなかったんで
投稿: 万物創造房店主 | 2012年7月22日 (日) 22時01分
>ジャッキーのBR
香港アクション系の作品は
輸出する相手に従って
ブレンドを細かく変えてそうだから
幾つもバージョン入ってお得そうですね。
(^^;)
>とりあえずゲットしとくといいと思います
そうですね。
いい加減、自宅の映像機器が
貧弱極まるので大幅バージョンアップして
ディスクもここ1年くらい何も買っていないのですが、
ゲットしよーかな。
>「サンダーアーム」
お店に初めてお伺いした時にこの辺の
作品で盛り上がりましたね。懐かしい。。
「スパルタンX」初回放映当時の日本語
吹き替え版で久しぶりに観たいですね( ̄∇ ̄)
80年代も遠くなったすねー
シミジミ。。
投稿: kuroneko | 2012年7月23日 (月) 00時50分
ようやく「告白」観ました
正直、つまんなかったです
オシャレ映像並べただけで
映画ではなかったですね
俳優さんはがんばってたのに残念です
コレが日本アカデミー4冠らしいので
日本映画界はかなり終わってるのだなーとしみじみ思いました…(;´д`)
投稿: 万物創造房店主 | 2015年3月21日 (土) 17時34分
>オシャレ映像並べただけで
映画ではなかったですね
まあ中島哲也だから仕方ないかも(^^;)
>日本映画界はかなり終わってるのだなーと
しみじみ思いました…(;´д`)
自分は近年の邦画は基本甘め且つ加点法で
採点するので、よかったと思いますよ。
全国公開レベルの邦画が全体として面白くならないのは
思うに資金の回収(興行成績)からスタッフの布陣や
予算が管理され、逆算され、悪い意味で安全運転
され過ぎているのではと思います。
前から思うのだけど、最前線のクリエイターと職人の
確保ももちろん大事だけど資金管理方面の人材が
育てばいいのではと思います。
投稿: kuroneko | 2015年3月21日 (土) 20時32分
そうですね
日本アカデミー賞が終わってるだけで
細かく見れば邦画もいいものが作られてますね
投稿: 万物創造房店主 | 2015年3月23日 (月) 00時21分
>日本アカデミー賞が終わってるだけで
「永遠のゼロ」は良かったですよ。
映像も役者の演技も物語も(^-^)
よく言われているけど
アメリカのアカデミー賞だって偏っていて
全然ダメでしょ。
長期的に見れば日本もアメリカも
アカデミー賞なんていかに見る目がないか
あと10年くらいブログ書いたら
しっかり証明する記事書きたいすねー
この眼で一作一作しかと見てから(゚д゚)
>細かく見れば邦画もいいものが作られてますね
どうもせせっこましいのは
お金の流れがしょぼいとどーしても思うんですよね。
才能のある人達に思いっきし仕事してほすぃ、、
何とかならないかなーって毎日のように思います。
自分は劇場に足を運んで、才能のありそうな人の本を買ったり
トークショーで拍手を送ったり、直接話せる場合は激励したり
するくらいしか出来ないすねー(ーー;)
投稿: kuroneko | 2015年3月24日 (火) 00時49分
>お金の流れがしょぼいとどーしても思うんですよね
それはたしかに
井口昇監督なんか
まぁまぁ稼いでるのかと思ったら
「ABC・オブ・デス」のコメンタリーで
「いつになったらこの貧乏生活から抜け出せるんだろう」
みたいなこと言ってましたし
とりあえず
いいものには金を払う
これしかないですね
時代に必要なものなら残っていくし
いらないものは消えていくでしょう
投稿: 万物創造房店主 | 2015年4月17日 (金) 20時07分
>「いつになったらこの貧乏生活から抜け出せるんだろう」
「監督料」
ってそこそこ有名でも
結構ビックリするくらい安いらしいですよ。
これまでにも何度か言及しているけども
撮っていない時は、
ただのプー太郎またはマジ無職
か
奥さんか彼女に食わしておらう
ただのヒモ
らすいですよ。
監督がそうなんだから、
他はおして知るべし。
投稿: kuroneko | 2015年4月18日 (土) 01時10分
まぁラスメイヤーみたいに
自分で全部やればいいんでしょうけど
なかなかそこまでやれる人はいないですなー
投稿: 万物創造房店主 | 2015年4月19日 (日) 01時29分
キュブリックもシャブロルも
全盛期は割とこじんまり撮っていたらしいし
やる気じゃないですかねー
ラスメイヤーは残した作品も
生き方そのものも"男"ですねー
男子たるものああ生きたいもんです( ̄ー+ ̄)
自分も高校生の頃
放課後一人で学校でちまちま8mmコマ撮りで
チープな特撮っぽいもの数分だけ撮って
カメラ屋さんに現像出して
皆に見せて面白がってて
今思うと割と楽しく生きてたんだなーって思います。
当時は物凄い鬱屈を抱えていたけど。
投稿: kuroneko | 2015年4月20日 (月) 23時38分
>当時は物凄い鬱屈を抱えていたけど
鬱屈がパワーになることも多々ありますね
どうもブログを書くようになってから
言葉に対する鬱屈がなくなり
オリジナル曲等の歌詞を書くのがめんどくさくなってしまった気がします
投稿: 万物創造房店主 | 2015年5月 1日 (金) 20時32分
>鬱屈がパワーになることも多々ありますね
そうすねー。
上京して、
ガッコ卒業して
フリーターして
リーマンやって
バイク乗り回しているうちに
店主さんの店に辿り着いたのも
鬱屈パワーのエネルギー転換すね
(^-^;)
>オリジナル曲等の歌詞を書くのが
めんどくさくなってしまった気がします
頑張ってください。
ライブも復活して欲しいすねー
一夜限定でも。
かけつけます!(^0^)/
投稿: kuroneko | 2015年5月 2日 (土) 12時30分
ここ最近
バンドメンバーみんなちっこい子がいて
子育てに忙しいので
今後の活動のためには
僕も同時期に作っとくべきでは…
という気がしてきました
投稿: 万物創造房店主 | 2015年5月15日 (金) 14時13分
>僕も同時期に作っとくべきでは…
という気がしてきました
…頑張ってください!(^-^;)/
投稿: kuroneko | 2015年5月16日 (土) 00時09分