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2012年8月18日 (土)

映画「ハロルドとモード」

「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」

原題名: HAROLD & MAUDE
監督: ハル・アシュビュー
脚本: コリン・ヒギンズ
撮影: ジョン・A・アロンゾ
音楽: キャット・スティーヴンス
出演: バッド・コート,ルース・ゴードン,ウィヴィアン・ピックルズ,シリル・キューザック
時間: 92分 (1時間32分)
製作年: 1971年/アメリカ (パラマウント) [カラー]

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)

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19才の青年ハロルド(バッド・コート)は年相応に興味を持つべき対象に
今ひとつ"乗り切れない"日々を過ごしていた。趣味は見知らぬ他人の
葬儀に参列すること。そんなハロルドの前に同じ趣味を持つと自称する
老女モード(ルース・ゴードン)は現れた。ハロルドは何物にも囚われず
自分の価値感と判断で生きるモードに強く惹かれていく。。。

 

 『癒し』という言葉は、今日では最早全世界的に現代人には絶対的に
必須且つ不可分のキーワードであり、癒しを持てない人間はこの野蛮
極まりない"世界"を生きていくのは到底不可能にも思われるのだが
本作の持つ癒し効果はちょっと"とてつもない"

 ハロルドは、この世界の中に置かれた人類の一員として、目の前に
あるほとんどの物に共感を見出せず、周囲の人間達の自己顕示に狂騒
する姿を見ているだけで辟易として19歳という若さに似合わず疲れ果て
ている。そんな彼が葬儀や死者に惹かれるのは道理で、死者は下らない
行動や発言をすることは無く、死者を前にした人間達は普段よりは幾分は
謙虚であり"まとも"だからだ。

そんな老人のように諦めきって生きるハロルドの前に降り立つ"天使"と
なるモード を演じるルース・ゴードンが素晴らしい。ハロルドが人間観察の
一環としての葬儀への参列であるのに対して、モードは興味本位の列席で
あることを隠さない。他人の車を運転して乗りたいから乗り、可哀相だから
と公共物である街路樹を引き抜き森へ返そうとする。そんなモードは79歳の
老女だが物語が進むにつれて19歳のハロルドとの恋人同士(その差60才)の
カップルとしての組み合わせとして見ていて最後は"何の違和感もない"!

 ハロルドは「心」を見せずに偽りと上辺だけで生きてる人間達を見抜き、
モードにだけはその"心"を見て、激しく共感する。ハロルドにとってモードは
安心でき信頼できる最愛の人になるのも当然である。

体裁だけで生きてる人間、"個人としての心"の否定の最たるものの一つは
"軍隊"である。片腕を無くし、勲章をぶらさげて形式に凝り固まった軍人の
ハロルドの叔父は"ハロルドとモード"におちょくられるが、その描写は
「反軍的」というよりも心を縛られて生きる人間の一典型として同情の視点を
持ってシニカルでブラックな笑いと共に描かれている。

 余りに繊細すぎる主人公ハロルドを演じるバッド・コートは鬼才ロバート・アルト
マンの作品「バード★シット」(1970)でもハロルドとほとんど同一のキャラクターを
演じていて、作品の方向性と社会に立ち向かう姿勢自体もこの二作はまるで
俵屋宗達の風神雷神図の如く一対の関係にあるようにも思える。「バード★シット」
はだが本作にもアルトマンのテイストは入っているもののより温かみを感じる。

 偽善的な社会を(見かけ上は)平然と生きる人間達を"チャップリンの杖"よろしく、
足を引っ掛けてみたりこずいたりしてみせるがアルトマンのそれは叩き方によって
は本当に相手が失神してしまいかねないものでありハル・アシュビューの本作で
みせる"それ"はより柔らかい。

 現実社会では、良くも悪くも存在し得ない二人を描いていながら、きっとどちらの
キャラクターにも我々の多くが感情移入できる現実的なファクターがしっかり
注入されている。二人は共鳴し合い、行動を同じくするがハロルドは若さゆえの
社会への反抗と逃避であり、一方モードは全てを経験し抜いた上での社会
からの逸脱である。
二人のキャラクターは現代社会に生きるほとんど全ての人間達が
僅かにか多量にか持つであろう社会に対する息苦しさ・疑問を具現化したものだ。
だから、その二人をひたすら追い続ける本作には確実に『癒し』がある。

 作品そのものが消滅しない限り、時代を超えて観る者を癒し続けるだろう。
『映画』が放つ物語とその効果としての"力"。70年代のアメリカ映画にはかくも
"力"があった。

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コメント

あーこの映画
三本三千円コーナーにあって
気になってたんですよー

まーそこそこ面白そうですね

投稿: 万物創造房店主 | 2012年8月24日 (金) 21時46分

私的には
「バード★シット」も良いけど
こちらがよりお奨めですかね
( ̄∇+ ̄)
 
女性にアピール効果が大きい作品
だとも思いますね。
 
「人と人生を好きになるのに老いは関係ない」
という素敵なメッセージが込められた秀作です。
是非!\(^^)/

投稿: kuroneko | 2012年8月25日 (土) 02時48分

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