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2012年11月12日 (月)

映画「地下鉄のザジ」

「地下鉄のザジ」

原題名: Zazie dans le métro
監督: ルイ・マル
撮影: アンリ・レイシ
音楽: フィオレンツォ・カルピ
出演: カトリーヌ・ドモンジョ,フィリップ・ノワレ,ユベール・デシャン,カルラ・マルリエ

時間: 93分 (1時間33分)
製作年: 1960年/フランス

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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パリに住む叔父の下にやってきた少女ザジ(カトリーヌ・ドモンジョ)は「地下鉄」
に乗るのを何より楽しみにしていた。しかし地下鉄はストライキが続いていて
閉鎖されていた。ザジは大人達をからかいパリの街を駆け巡る。。

 

 中学生くらいの頃からどのレンタルビデオ店にも大概この作品は置いてあって
何となく存在は知っていた作品を果たして、観る。
 "ザジ"という響きからして、主人公は年端もいかぬ男の子なのだと勝手に思っ
ていたが"オシャマ"という言葉がぴったりな女の子で、「地下鉄の~」という言葉
からさぞ暗い話か、現代社会への風刺と啓蒙を効かした硬派な内容なのだろうと
これも勝手に思い込んでいたが、お洒落でアナーキーでぶっ飛んだ快作だった。

 「地下鉄のザジ」というタイトルなのに、何が何でも地下鉄にザジを乗せない
展開が判り易くて、「地下鉄に乗りたくても乗れないザジ」が巻き起こす騒動の
下地として、物語のエンジンとして、きちんと機能している。命の輝きに溢れる
"ザジ"
はストライキなぞお構いなしに柵を軽々と乗り越えては何度でも地下鉄に
乗ろうと試みる。当然駅構内にも入れず電車は動きそうもない。自然とザジは
地下鉄以外のあらゆる手段でパリの街を疾走することになり、当然のように
エッフェル塔にも昇りセーヌ川(多分)のほとりをうろつくことになる。

 花の都『パリ』は第二次大戦中のナチスドイツに一時的に占領を許した歴史
を持ち(1940-44)、製作年は戦争の記憶もまだまだ残る60年代初頭である。
それゆえなのか平和であることの悦びがザジの笑顔と徹底的に振り回され続ける
大人達の馬鹿馬鹿しさを通してどこまでも肯定的に描かれている。

 ザジの叔父役のフィリップ・ノワレは「ニューシネマ・パラダイス」(1989)において
映写技師の老人アルフレッドを演じている。叔父の妻役のカルラ・マルリエはとんで
もなく美しくて終始見惚れてしまったが、本作が映画初出演であるが、残念ながら
その後の出演作には恵まれなかったようだ。実にもったいない!

 どこまでも愛くるしい主役のザジを演じたカトリーヌ・ドモンジョは当然のように本作
一本だけでスターとなったが、主演作はこれっきりでウィキペディアによれば若くして
引退して歴史家になったという。多分に気難しく且つ激しい気性の片鱗も随所に見せる
"ザジ"は演技を超えて素のカトリーヌ・ドモンジョも入っていたのかもしれない。エンター
ティメントの世界で生き残っていく打算のようなものを、カトリーヌは持ち合わせていな
かったのだろうか。そうであれば、それはそれで、とても幸せなことだ。

 特に退屈はしなかったし、後半のハチャメチャな展開は大拍手だったが93分とは
思えない"長さ"を感じたのも事実
。ザジの破壊的行動に何かしらの見えない糸で
物語を紡げばよかったかもしれないが、それは同時にこの作品の良さも奪ってしまうこと
になるのかもしれない。街がそこにあって、喜怒哀楽を表現して生きて死んでいく人々が
いればそれで充分と言いたいのだろう。それは、かつてパリという名の街が死んだ
ことがあり、感情表現が出来なかった最悪の時代があったことの裏返しに他ならない。

 

「海の沈黙」(1947)は"その頃のパリ"を描いた傑作である。歴史は人智を超え、
人は歴史の前には謙虚にならねば、すぐに獣に堕ちる。我々の生きる21世紀は
将に獣の時代と言えよう。

  監督のルイ・マルは本作を「パリを舞台にした西武劇」と言ったそうであるが、
次回観る機会があれば、その発言を念頭に置きつつ観てみることにしよう。

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