映画「幕末に生きる 中岡慎太郎」
「幕末に生きる 中岡慎太郎」
原題名: 幕末に生きる 中岡慎太郎
監督: 吉田喜重
撮影: 堀田泰寛
音楽: 澤井一恵
時間: 57分
製作年: 1987年/日本 日本経済広告社
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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坂本龍馬と共に近江屋で暗殺された"草莽の志士"中岡慎太郎の行動の
軌跡を再現ドラマ仕立てで描く。
観ていてしみじみと、写真家の入江泰吉(1905-1992)を思い出した。たった
1時間にも満たないオーソドックスな構成ともいえる再現ドラマだが、役者の無駄な、
または過剰な演技は徹底的に排除され、中岡慎太郎の生涯の足跡を練りに練った
画面構成とナレーションで見せていくやり方は『完璧』に成功していて、良質な映画を
観た後と全く同じ充実感を覚えた。
タイムスリップをしたかのような、まるで幕末の世界を実際に覗き見ているかの
ような"空間"をまず作り、後は役者を配置するだけというところまでしっかりと
作りこめば、観客は自分で役者を好きに脳内で登場させて自由自在に演じさせる
ことが出来る。
製作者側が観客と対峙して向こうから勝手なキャスティングと勝手な解釈、勝手な
時代考証による"中岡慎太郎像"を押し付ける(洗脳する)のではなく、カメラは観客と
共に同じ側にあり、中岡慎太郎というある時代の"日本"に確かに存在して私利私欲を
脇に置いて東奔西走した一人の男の背中をただひたすらに追う。その姿勢に誠実さ
を感じ敬意を払いながら観客は余計な雑念を生じることなくどこまでも作品世界の美と
歴史の虚実を自在に行き来して遊ぶことが出来る。松田勇作の言った"遊戯"とは、
あるいはこんな事を指すのかもしれない。
ところで、坂本龍馬が暗殺された理由や実行犯については、ほぼ材料は
出尽くした感があり最終結論を敢えて統一しなくてもいいのではないか
というところまで調査時間は十分に取られたと思うが、二人が暗殺された
当夜に中岡慎太郎が坂本龍馬と一緒にいた「本当の理由及び動機」についてはまだ
解釈の余地が残っているように思う。そこにもまた損得勘定を越えた「血の通った人間」
と呼べる豊かな詩情がきっとあっただろう。今後も個人的にちまちま考えていくことに
しよう。
吉田喜重、見事なり。
[中岡慎太郎]
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中岡 慎太郎(なかおか しんたろう、
天保9年4月13日(1838年5月6日) - 慶応3年11月17日(1867年12月12日))は、
日本の志士(活動家)である。陸援隊隊長。
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「今日賎しいものが、明日には貴いかもしれない。小人か君子かは、人の心の
中にある」という言葉を残している。
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(ウィキペディアより)
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