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2012年12月 9日 (日)

映画「芝居道」

「芝居道」

原作: 長谷川幸延
演出: 成瀬巳喜男
脚本: 八住利雄
撮影: 小倉金弥
音楽: 清瀬保二
美術: 中古智
出演: 長谷川一夫,山田五十鈴,古川緑波,花井蘭子,志村喬

時間: 83分 (1時間23分)
製作年: 1944年/日本 東宝

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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時は明治末期。日露戦争の戦況に国を挙げて一喜一憂する日本。上方で
名が少し売れるようになり慢心する男(長谷川一夫)を鍛え直すために恋人
(山田五十鈴)と別れるように裏で手を回す支配人。支配人から自分の芸を
認められず、恋人からも縁切りされた男は高条件を提示され、東京へ飛び出す。。

 

 太平洋戦争末期の作品。撮影条件や予算などに制約があるせいなのか
モブシーンにもどこか窮屈感を感じる。また、世相が良くない(というか悪い)
せいなのか、演者達の表情に何ともいえない影を感じるが気のせいだろうか。
 黒澤作品などの常連である邦画界に大きな足跡を遺す志村喬(1905-82)の
他の作品の温厚な"大人"オーラとは異なる芝居の世界を守る側ながらも良くも
悪くも古い慣習に浸るコワ面の興行主の一人の演技も楽しい。

 恋や雑念のために芸に身が入らず、その事のためにこそ評価も上がらない
ということに気付かない未熟だった主人公が、己の不明を恥じ、周囲の見え
ざる手に芸の上達と共に次々と気付いていく様の長谷川一夫の演技と成瀬
率いる製作陣の演出の手堅さのプロ振りに涙。。最後の大団円と日露戦争
の旅順攻略を無邪気に祝う淡い打ち上げ花火のシーンに遠い遠い落日を
思いまた涙、涙。。。

 戦前、戦中、戦後、いずれの時代の作品もきちんと保存され、老若男女の
誰もが鑑賞が出来る世界を『平和』と呼ぶのであって無意味か恣意的な作品
のみを見させられて、本作のような国民総動員の大戦争の末期ですらこれほど
輝ける逸品が簡単には観れない、フィルムの散逸や保存・管理予算の捻出
もままならない今の時代は太平洋戦争時代と同じかそれ以下に問題のある
時代といえるのではなかろうか。いや、時代がくだらないのではなく、、

 本作を観れば、「戦後」と呼ばれる時代の深刻なボタンの掛け違いの一端も
また鮮やかに炙り出されるのである。

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映画」カテゴリの記事

コメント

こういうのは映画としてだけではなく
日本史としても重要ですね

映画もドキュメンタリーと同じくらい
当時の雰囲気・世相をリアルに切り取っていますし

日本史の授業用に文科省がDVDを各学校に配ってもいいぐらいですね

投稿: 万物創造房店主 | 2012年12月11日 (火) 16時51分

>映画もドキュメンタリーと同じくらい
 
この作品は、もう存在自体が
完全な「貴重な歴史」ですね。
高校生か中学生くらいからドシドシ触れて、
感じて頂きたい作品ですな(^-^)
成瀬巳喜男の隠れた?傑作だと思います。
内容も普遍的でいいですね。

慢心になるなかれ
巨視的になるなかれ
謙虚に道を究めよ

時世から流石にややプロパー気味ではありますが(^^;)
 

>文科省がDVDを各学校に配ってもいいぐらい
 
学校の図書館で借りれたりすると
いいかもですね。今の学校ってDVDくらい貸し出して
いるのかな?やはり、こういうのはカリキュラムに
ギチギチに組み込むのではなく、選択肢の
緩いカリキュラムの中で、先生自ら
「良い」と思う作品をチョイスして
生徒に見せてあげて欲しいすね。
 
鑑賞後に改めて作品を思い出して
鳩だの缶(管)だのがメタクソに暴れ回っている
当時の時局を鑑み
「何もかんも壊れた世界に生きてるんだなー」
としみじみ思ってマジで涙が出てしまいました。。
 
還ろう、みんな!
復元しよう!!
考えよう!!
Let's think!
Let's feel!!

Back To The Future !!!!!!! ===>
v( ̄Д ̄)v

投稿: kuroneko | 2012年12月12日 (水) 00時45分

>学校の図書館で借りれたりすると
やはりそれですね
 
日本映画は公的組織がデジタル化&リマスターがんばってるはずなんで
税金使うなら
できあがりを公的図書館にだけ無償で配布するといいですね
 
>Back To The Future
過去に戻ることはないと思いますが…(^_^;)

投稿: 万物創造房店主 | 2012年12月12日 (水) 17時32分

>やはりそれですね
 
ですね!やっぱし!!( ̄ー+ ̄)v

  
>デジタル化&リマスターがんばってるはず
 
500円DVDとか著作切れの作品等はだいぶ
充実してきましたね。
DVDは可能な限り画質にこだわって、
映画館では35mmや16mmのフィルムがこれからも
大切に全国津々浦々で映写されていくように
官民一体となって整備していくことが
『本当の平和』で
『本当の愛国』
だと思います。
どうせ無理ぽですけど(ーー;)
 
>Back To The Future
 
遺すべき過去を積算し、
嘘塗れで言いがかりのゴミを清算し、
「在るべき未来」
「在ったはずの未来」
に還ろうみんな!!
水島ぁあ!!(゚´Д`゚)ノ
 
決戦は日曜日!!
o( ̄^ ̄)o

投稿: kuroneko | 2012年12月13日 (木) 01時13分

>大切に全国津々浦々で映写されていくように
津々浦々を目指すとやはりデジタルの方が楽なのですね
 
京都文化博物館では
古い映画もフィルムで上映が行われてるんですが
ボヤボヤだったり
フィルム傷、ノイズがたくさんあったり
 
残念ながらデジタルリマスターしたものの方が
キレイで元の色に近かったりします
 
だから僕はそれほどフィルム上映にはこだわりません
この前の「マリーアントワネットに別れを告げて」も途中で音声がブツ切れしてましたし
マイナス面の方が多い気がします
 
ただ、撮影時はフィルム撮影もあってもいいなってのはありますね
フィルムでしか出せない感じがありますし

投稿: 万物創造房店主 | 2012年12月13日 (木) 19時32分

>フィルムでしか出せない感じがありますし
 
私は今のところ、これを強く感じますね。
フィルムの状態が悪いのは勿論、デジタルの
方が見安い作品も沢山あるでしょうが、
デジタル映像の画質の均一感はどうも
今ひとつです。今後、さらに解像度等は
向上してそれなりに解決していくのでしょうが。
フィルムの上映環境は何としても残して欲しいものです。
「フィルムを観る感動」という機会を残すことには
大変な意味があるのでは。
 
デジタル時代の幕開けを個人的に
ようやく初めて肯定的に強く感じたのは
リドリースコットの最新作「プロメテウス」(2012)
ですね。オープニングの巨大UFOから
虚構の世界の圧倒的な構築は
新時代を感じさせてくれました。
内容は、、あと一歩だったかな(^^;)

投稿: kuroneko | 2012年12月14日 (金) 01時11分

>「プロメテウス」
おー行きましたかー
でも
映像がすごくて内容が今一歩ってのは
なんか予想通りって感じです
いつか観るとき来るかなー
 

投稿: 万物創造房店主 | 2012年12月17日 (月) 21時31分

>おー行きましたかー
 
スルーしようと思って放置していたのですが
映像が凄いという情報をギリでゲットして
上映最終日に駆け込みで観ました。
「遊星からの物体X」とか
色々な方向のオマージュっぽいシーンが
あったり宇宙船の細部のギミックや
デザインには日本のガンダム、マクロス系
の流れを感じたりまあまあ楽しめました。
この作品については
デジタルの使い方はほぼ完全に正しいと思いましたね。
すげー久しぶりに
「流石リドリー・スコット」と思いました(^-^)
 
>映像がすごくて内容が今一歩ってのは
>なんか予想通りって感じです
 
映像は最初から最後までだれなくてお奨めなんですけど
内容は、、もうリドリーは燃え尽きたか、充分稼いで
ハングリー精神はないか、、という感じです。
 
部分的にはもう一回観たいシーンはありますね。
全体のデザインワークは素晴らしくて"必見"
レベルです。

投稿: kuroneko | 2012年12月18日 (火) 01時00分

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