« 映画「日本橋」 | トップページ | 観_13_01_11 »

2013年1月 6日 (日)

映画「世界大戦争」

「世界大戦争」

監督: 松林宗惠
脚本: 八住利雄,木村武
撮影: 西垣六郎
音楽: 團伊玖磨
特撮監督/特技監督: 円谷英二
出演: フランキー堺,宝田明,星由里子,乙羽信子,笠智衆,山村聰

時間: 110分 (1時間50分)
製作年: 1961年/日本 東宝

(満足度:☆☆+)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
  

 正体の全く判らない勢力によって一方的に戦闘機による攻撃が始まり、
超大国間の緊張感が高まっていくという前半の掴みは不気味な感じが
なかなか良い出来だと思う。

 だが、我が国の政府は事態のエスカレーションに対して、

自国の首都に核が撃ち込まれることが100%確実になり、
実際に攻撃されて、
キノコ雲が立ち上って、
国土が焦土と化して、
国民の生命・財産が完全に灰に帰す『その時』まで、
最後の最後の最後の最期まで、、

「一切何も寸毫も対策を講じてははいけない」

「アナタガタニハイッサイノテイコウスルケンリモジエイスルケンリモミトメマセン」

という戦後連綿と続く国際ルール?(というか敷かれたレール)に馬鹿正直に
乗っ取っていることが作品そのものをメルトダウンさせている

事態の把握・調査にも一切乗り出さない。
同盟国間での情報交換もしない。
事態収拾に向けての調停にも乗り出す気配もない。
自国民を守ろうともしない。
情報を与えようともしない。

 小市民の慎ましい暮らしぶりの描写と、キューバ危機を強く連想させる管理体制と
意志決定機関の相互リンクの不完全さから何度も起こる危機とか、山岳地帯にある
ミサイル基地の描写とか、限られた予算と技術を駆使していい線いっているシーンも
沢山あるが、それらを入れている瓶とレッテルがどうにもおかしい。核戦争になるまでも
なく既にメルトダウンしている。ロマンポルノの逆製法?

 最期の家族の食事のシーンもしかりでシーンそのものは悪くなかったが、
脚本と台詞が良くないので、俳優陣も瞬間瞬間にどうしても間延びしてしまって歯痒
そうであった。

 山村聡の内閣総理大臣(いい感じ)
 上原謙の外務大臣(!)
 中村伸郎の官房長官(超似合っている!)
 東野英治郎の船長役(それなり)
 笠智衆の船員役(流石の卒の無さ)

 それぞれのキャリアを考えれば本作の演者は実に"むんの凄い豪華キャスト"
であり、それぞれが珠玉の名作といっていい傑作・秀作に出演経験のある人々
ばかりなのであるが、個々のキャラクターを深める描写は脚本としてはなく、それぞれの
経験に丸投げされているようなところが、彼等の絢爛たるフィルモグラフィーから
考えて哀しい様であった。

 「大阪の宿」(1954)他で素晴らしい演技を見せる名女優乙羽信子星由里子なども
健闘していて核爆発を待つまでもなく原子レベルまでボロボロに崩壊してしまったかと
思える物語にどうにか血肉を与え続けていたように思う。主役のフランキー堺
良かったけど何となくもどかしそうでもあった(理不尽極まる理由で無抵抗で死ぬ
ことを強制される話なのだから当然と言えば当然)

 実力がいくらあっても、脚本という水の流れが貧相で且つ濁っていては俳優という
魚は生きもするし死にもするのが実によくわかって興味深かった。

 お待たせの(?)クライマックスにおける核戦争シーンも残念ながら良くない。
そもそも「核戦争」の見せ方をきちんと考えて設計することが出来ていいのでお手軽な
神様視点に逃げてしまった。特撮カットをもっともっと抑えてでもフランキー一家に象徴
される市井の民の悲惨な末路や大量殺戮による人々の黒焦げシーンとかを捉えるべき
だった。戦争の悲惨さは単に死ぬことではなく、名も無き弱者達の抹殺と生きる幸せの
全てを奪われて尚『死ねない』ことにあるのだから。

 俳優達は総じて、作品のプロット以上に健闘している。特撮もセットのシーンもそれほど
悪くない。というか、限られた予算と時間を考えれば寧ろそれなりに良いと言える。
脚本の"視点"が人間ドラマから余りに遠すぎて、結果としてまさに本編の描くクライ
マックスそのままに「何もかもがドロドロと融け、破壊し尽くされて」しまった。

 日常的に領土を荒らされ、長年歴史を捻じ曲げられ、深刻なまでに国政に干渉され
まくっている今日の日本の危機(立派に世界大戦争状態)をきちんと認識してリメイク
すればお金をかけてもペイする傑作が生まれる気がする。いや、きっと生まれるだろう。
アニメ
でやった方がいいね。CGもふんだんに盛り込んで。本当の平和を訴えられて、
エンタメ出来てしかも儲かりまっせ
 

---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

|

« 映画「日本橋」 | トップページ | 観_13_01_11 »

映画」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。