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2013年3月 3日 (日)

本「漫画貧乏」

 
 

 「佐藤秀峰(さとうしゅうほう)という漫画家がいる」

 

と聞いても、日常的に、恒常的に、自覚的に自分で漫画をチョイスして
読んでいない人には

知らないねぇ(一_一)
聞いた事ない(´・ω・`)

 

となるかもしれないが、

 

『ブラックジャックによろしく』の作者だよ!(`□´)」

 

と聞いた瞬間に、その認知度は桁二桁か三桁は一気に跳ね上がることだろう。
さらに、

  

『海猿』の作者(原作者)だよ!!(`□´)」

 

と聞けば、、もう言わずもがな。

 

 本書は「海猿」、「ブラックジャックによろしく」などのハイパーメガヒット作を
放った「勝ち組」と言ってよい"人気漫画家"が実体験(というよりも自分に対しての
人体実験)を元にして

漫画家がいかに儲からない職業であるか

を原価計算を事細かに記して赤裸々に綴った本である。

 

 漫画が儲からない理由については、佐藤氏は色々と数字を並べ多角的な
視点から述べておりますが、要は

 

1) 原稿料と印税だけで食っていけるかボケェ(゚д゚メ) 

という点と、

2) 漫画家(とアシスタント)が血と汗と涙と不眠で作り上げた
「作品」を単なる収益マシーンのネジの1つくらいにしか見做さずに、
印税と原稿料以外のありとあらゆる収益を漫画家(原作者)に還元せずに
喰らいまくる出版社という「構造」についてのクレーム
っつか

嗚咽叫びすなわち慟哭

に尽きるわけです。

ここ数年、すっかり珍しくもなくなった主にウェブを通して明らかになる
漫画家サイドと出版社サイドとの軋轢や不和やトラブルは、ほとんど上記の2点が
原因であると言える。
そして、上記2点はDNAの螺旋構造のように不可分の関係
にもある(記憶に新しいところでは「テルマエ・ロマエ」の作者が映画化にあたって
貰ったのはたった100万円だったとか)。

 自分で売れていないと自覚している漫画家は「掲載して頂けるだけもアリガタヤ」と
内心穏やかならずも引っ込めるのだろうが、明らかにヒット作を生み出して、世の中
に受け入れられている徴候がありありなのに、生活は一向に楽にならない、、
というよりも
描けば描くだけ、赤字が嵩む!!
漫画家の心境を察するのは難しくはない。

 アシスタントは勝手に雇っているのだから人件費などが入金を超えない
ようにするのは漫画家の(経営)手腕に委ねられる。という理由は
「予算を超えないように(セットを作らずに安い俳優を使って)面白い映画を作れ」
というようなもので問題の解決にはならないであろう。

 問題の根っこはかつてのアニメーション製作の現場と同じようなことでは
なかろうかと思う。漫画業界の市場も業界の人的な規模もまだまだ小さかった
黎明期、漫画なんつーものは描くのが好きで好きで三度の飯より好きな人間
だけが描くもので、対価云々はおこがましい、または描く方も本を出す側も、親戚
同然か友人のような"付き合い"の中で収益構造についてシビアな話し合いと
業界としての適切なルール作りを後回しにしたまま、いつしか市場は世界規模
になってしまい、入ってくる側は、入ってこない側に比べれば無尽蔵に
入ってくるようになってしまった。某大手出版社は入社して数年も経てば
年収が1千万を越えるとか。
アニメーションの現場もしかり。ヒットしようが、
しまいが、還元されない者には一切還元されない。恩恵を受ける側に入れば
文字通り何一つリスクを負っていなくても収益を手に出来る。
自分達が誰に
描いてもらって作品のタイトルが何であるのか何一つ知らなくても。。

 さて、収益構造の問題を自ら明らかにした後の佐藤氏の考えたアプローチ
は、、なかなかユニークというかある意味正攻法というか正面突破と言える方法
だと思う。ズバリ

製作したコストを回収+α(利益)が出るまでとにかく漫画を売りまくる
→佐藤秀峰 on Web の開設
[http://mangaonweb.com/creatorTop.do?cn=1]

という結論だった。本書の後半では、サイトの具体的な操作方法と、
サイトからの購入がどのように佐藤氏及び(有)佐藤漫画製作所の収益に
結びつくのかの説明に費やされている。サイトの開設費用やメンテナンス費用
の見積もりも明らかにしているのは、漫画家だけでなく起業を考えている人
やネットで一定の収入を真剣に考えている人にも有益な情報だろう。

 自分としては、漫画家が現実問題として売れない(ヒット作が出ない)間は
冷や飯を食うのはある程度やむを得ないとして、それなりに知名度が上がり
その人の作品であれば、とにかく手に取って読むよという一定量の固定ファンが
いて、なかなか黒字にならないという現状を打破するには

・作品とそこから派生するコンテンツの価値(値段)を
作者が自分でコントロール出来る

という構造にしない限り抜本的な解決にならないと思う。これは、それほど
難しいことではなくて

・漫画家は自分の描く金額と作品の価値を提示して入札のあった
業者に対して描く(作品を創造する)

というルールを貫徹できればよい。このルールにより、全くの無名であっても
巨万の富を一気に手にするチャンスが生まれる。入札する側もまたしかり。
業界ルールなんて何一つ知らなくても、それこそ内容や描く人間について
何一つ知らなくても「コイツはきっと面白い漫画を描くぞ」という"勘"1つで勝負
できる。出版業とは本来、そういうものだったのではないかい?

もう一つ、現実的な解決作の1つとしては

・あるコンテンツ(作品)に関る人間の受け取る対価の比率を厳正・公正に
割り出して、きちんと払う

であろう。アニメになり、映画になり、世相を作り出し、ファッションを作り出せば
それだけとりあえず作者には累乗的に沢山入るのが筋というものだ。あくまでも
契約をきちんとした上での話であるが。

 佐藤氏のアプローチがどのような結末を"描く"のか、ジャンヌ・ダルクかドン・
キホーテになるかメデタクご自分の望んだ形でのリッチ・マンになるかは5年後か
遅くとも10年後には明らかになる
が、個々の漫画家の志・行動に任せていないで
心を痛める関係諸氏がいれば率先して動いてあげたら良いと思う一般人は
当然のことながら面白いと思ったら漫画を購入して、作者のwebサイトにアクセス
して本人の声を聞いてあげることだろう。

 1000円ちょっとで漫画大国日本をより良く出来るきっかけ程度にはなれて
勇気ある声を挙げた佐藤氏(や同じ悲鳴を挙げている多くの漫画家諸氏・諸嬢)を
応援できて、
心ならずも(?)いびつな収益構造に浸っている人々に初心に還って
頂き、反省と適正で公正なシステムへの構造改革を促し、才能ある漫画家さんに
潤って頂き、さらに面白れー漫画が読めれば安いものじゃああ~りませんか。

 非常に読み易くて随所に笑い(と涙)を誘う内容になっており、半日もかからずに
佐藤氏を含む漫画家の相当数の人々が陥っているであろう深刻なスパイラルを
理解できる上に佐藤氏の「漫画道」も楽しめてしまう大変お得な内容となって
おります。
是非ご購読を( ̄∇ ̄)

 下手すると(面白い)漫画を描く人マジでいなくなるでえ他人が心血注いで
作ったコンテンツを「提供する側にいる」というただそれだけで何千万、何億も
得て安穏に生きている人々はそれでいーのかもしれないけどね。
 

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「漫画貧乏」
佐藤秀峰 (さとうしゅうほう)著
PHP研究所 \1,200円
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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