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2013年4月27日 (土)

映画「ジャンゴ 繋がれざる者」

「ジャンゴ 繋がれざる者」

原題名: Django Unchained
監督: クエンティン・タランティーノ
脚本: クエンティン・タランティーノ
撮影: ロバート・リチャードソン
編集: フレッド・ラスキン
出演: ジェイミー・フォックス,レオナルド・ディカプリオ,クリストフ・ヴァルツ,
ケリー・ワシントン,サミュエル・L・ジャクソン

時間: 165分 (2時間45分)
製作年: 2012年/アメリカ

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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南北戦争勃発前のアメリカ南部。奴隷として移送中だったジャンゴ(ジェイミー・
フォックス)は賞金稼ぎのドイツ人シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)によって"解放"
される。人種差別を嫌うシュルツはジャンゴを対等なパートナーとして扱い、二人は
賞金稼ぎの旅を続ける。やがてジャンゴは行方知れずだった妻ヒルダの所在を
突き止め。。

 

 グロテスクな描写が続く作品だが、主人公"ジャンゴ"(Django "D"は発音するな!)の
Unchainedなキャラクター設定と演じるジェイミー・フォックスの「実力」で今日まで
キャリアを積んできた確かさが見事に相乗効果を生んで爽快感を生んでいる。

 作品の持つ要素と「続・荒野の用心棒」(1966)(原題名は"Django"!) のメインテーマ
をアレンジせずにまんま使うという大胆な手法からタラちゃん的マカロニウェスタンへの
リスペクトとオマージュの溢れる集大成的作品、、かと思ったがあくまでも21世紀で
アクション映画を作る上でのピースとして、一度バラバラにして再構築している。
あくまでもタラちゃん風味で。そのタラちゃん風味に乗れるかどうかがそのまま映画に
乗れるかどうかになると思われる。自分は何度も振り落とされそうになりながら、
というか振り落とされては気を取り直し、喰らいついて鑑賞。

 主人公の名前とメインテーマ、「続・荒野の用心棒」(1966)から。独りで圧倒的に
不利な形勢に立ち向かうという意外は相違点も多く、曲をほぼそのまま使うということに
違和感は感じる。初期プロットは完成形とだいぶ違ったのだろうか。単にタラちゃんの
脳内で激しく"萌え"ての使用なのだろうか。

 序盤のシュルツ登場シーン後の奴隷達のバイヤーへの復讐シーンは、こちらも
「マンディンゴ」(1975)から大胆にシュチュエーションを持ってきている。自分が普段
気付いていないだけであちこちの作品から切り張り的に持ってくるのは当たり前の
ことなのかもしれないと思いつつ知らない人と知っている人の落差について考えさせ
られる。などといいつつ、自分も教えられなければ何も判らずに呆然と観ている
だけだ。

 シュルツとジャンゴの位置関係が整い、旅が軌道に乗り始めた冬季シーズンの短い
シーンは雪降る街(その名も"スノーヒル")を舞台にした「殺しが静かにやって来る」(1968)
へのオマージュであるとのこと。

 敵役の領主カルヴィン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)は黒人の中でも体格が
良くて優良種とされたマンディンゴ(マンディンカ族)を闘犬のように命懸けで闘わせる
ことを趣味とする。このシーンも背景として「マンディンゴ」がある。カルヴィンのように
"露骨"に且つ"あからさま"に黒人同士を闘わせた記録は無いとのことだが、物同然
に扱われたことは想像に難くない。「マンディンゴ」では黒人の子供が白人老人の
体調回復の道具として足を温める装置として使用する「人間湯たんぽ」として扱われる。

 本作の時代のすぐ後に起こったアメリカの史上唯一且つ最大規模の内戦南北戦争は
主に黒人を含めた奴隷制度の是非が争点となった戦争であり、リンカーン(1809-65)
の史上名高い奴隷解放宣言は1862年でったとされているが、それからまだたった150年
余り。国際社会で知っておかなければならない重要事実はまだまだ眠っていると思われる。
黒人だけではなく、我々黄色人種等の位置と扱いもまた。要するに設定舞台はまだ
昨日のことである。

 終盤でジェイミー・フォックス扮する"ジャンゴ"が不自然に吹っ飛ぶシーンがあるが、
ジャンゴは防弾チョッキで武装していたとも思えないのでどういう理由によるのだろう。
すぐ後のシーンで同じように銃撃されて吹き飛ぶシーンがある。こちらは明らかに即死。

 160分という長尺であるがそれほど長く感じられないのは賞賛に値する。シュルツと
ジャンゴの登場、「賞金稼ぎジャンゴ」の誕生と活躍、時代背景の描写、妻との再会、
カルヴィン登場とテンポ良く、大きな見せ場を随所にバランス良く配置しているから
だろう。今後も無数に作られていくであろう尺の長いアクション娯楽大作の指標の
一つを作ったと言えるのかもしれない。

 タランティーノによるマカロニウェスタンを始めとした、彼の敬愛する無数の作品に
対する「換骨奪胎(かんこつだったい)」的作品と言える。成功していると見るか、失敗
していると見るか、「飽きずに最後まで観れる」という点において「成功している」
言えるだろう。

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コメント

たまたま映画のポスター漁ってたら
明らかな元ネタ見つけました
「西部無法伝」
http://movie.walkerplus.com/mv5031/
こいつはまだ誰も指摘してないかもかも
 
ソフト化されてないかと思ったら
ツタヤでのみ販売しているみたいです
http://shop.tsutaya.co.jp/%E8%A5%BF%E9%83%A8%E7%84%A1%E6%B3%95%E4%BC%9D-%E3%80%90TSUTAYA%E9%99%90%E5%AE%9A%E5%95%86%E5%93%81%E3%80%91/product-dvd-4988135938831/
もうちょっと安かったら買うのになぁー
 
ツタヤ限定DVD
はじめてラインナップ見ましたけど
けっこう気になるタイトル揃ってます

投稿: 万物創造房店主 | 2013年4月28日 (日) 22時56分

>「西部無法伝」
 
これは凄いですねー
驚くほど持ってきていたりして。。
 
>ツタヤ限定DVD
 
これは市場主義・自由経済に
反している気がしますねー
厳密には独占禁止法に違反しているのじゃ
ないですかね。自分達で製作したわけでもないのに
自分達だけしか売らない(売れない)って
ハッキリ良くないですね。
消費者は「選択の自由」をまるっきり奪われるので
一種のファシズムすね。

どういう仕組みで他者の参入を防いでいるのか。
あんまり知りたくもないですが(ーー;) 
 
私が当選した暁には、こういったセコイ狭い商法
は許しません!
安くて良い商品が流通される社会を創ります!!
o( ̄^ ̄)o

投稿: kuroneko | 2013年4月29日 (月) 00時07分

>こいつはまだ誰も指摘してないかもかも
 
みたいですね( ̄∇ ̄)
買って観てジャンゴとの比較レビューを書く価値は
充分にありますね。作品自体面白そうだし。
でも、"損益分岐点"は2000円くらいすかねー
3990円(約4000円)はちと痛いすね。
 
検索しても他の流通ルートでの中古DVD,VHS
出てこないすね(。。)ゝ

投稿: kuroneko | 2013年4月29日 (月) 12時36分

>検索しても他の流通ルートでの中古DVD,VHS
出てこないすね(。。)ゝ
 
そうなんですよ
まったくソフト化されてない
 
せめて1980円とかなら
ツタヤ良心的ぃー
他で出さないラインナップをちゃんと出してるねぇー
って思えるんですけどね
 
3990円だとセコイ商法にしか見えないですねー

投稿: 万物創造房店主 | 2013年4月29日 (月) 16時24分

>まったくソフト化されてない
 
そーか。未ソフト化商品をソフト化して
独占販売か。理解しました。転売禁止なのかな。
 
>ツタヤ良心的ぃー
>他で出さないラインナップをちゃんと出してるねぇー 
 
社内の流れを想像するに、安くすると
「未ソフト商品ソフト化部門」内でコストを回収するのは
到底無理だから他部門で赤字を補填というのは
許されないのでしょうなーツマラン。
大手で出す意味無い、、まで言えないのが
消費者側の泣き所ですね(一_一;)
 
「ソフト化してくれるだけありがたやー」と思わないと
いけないのかなー。
小さい会社でソフト化してももっと高くなるに決まって
いるし。難しいですね。

金持っている組織の英断
を待つしかないのかな。
安価で売っているの見つけたらとにかく買っていくしかないのか
(´・ω・`)

投稿: kuroneko | 2013年4月29日 (月) 22時17分

でもでも
WHDさんはずーっと1500円でけっこうおいしいタイトル出してくれてますよー
 
ぼく、続けて欲しくて
けっこう買い続けてます
 
新作もなかなかのラインナップ
http://whd.dip.jp/FMPro?-DB=pdm_movie.fp5&-Format=02_new.html&-layout=lay&-token.0=103288734988&new_mark=new&-find
 
結局、やる気の問題じゃないですかね

投稿: 万物創造房店主 | 2013年4月30日 (火) 18時08分

>WHDさん
 
いいですねーHPのデザインも( ̄∇ ̄)
ワクワクします。
以前にも教えてもらった気もしますが( ̄∇ ̄;)
リンク先のラインナップは私にとっては
課外授業的な素敵なエントリーですが(^^;)
 
今後じっくり見て買いたいですね。
来年の夏の参加時はここから購入だな( ̄ー+ ̄)
 
>結局、やる気の問題じゃないですかね 
 
そうですねー後は誠意と理念ですね。
単に金儲けダケジャナイ帝人!みたいな
 
このクソ高い価格設定の某社と某社の
意味の無い攻勢のおかげで本当に
小さなレンタル店はほぼ全て駆逐されてしまった。。
(>_<。
 
ロジャー・コーマンやハーシェル・ゴードン・ルイス
の気持ち
何となく判りますね。


投稿: kuroneko | 2013年5月 1日 (水) 01時48分

>異形未知生命体 
エボミネーション
テキサス・スプラッター・コレクション
 
君達、目つきがヤバイよヤバイよ(゚д゚;;)
怖くて寝れないかも。。もう午前二時近くなのに(ーー;)

投稿: kuroneko | 2013年5月 1日 (水) 01時55分

>来年の夏の参加時はここから購入だな( ̄ー+ ̄)
ここのは
たいがい発売と同時に買ってるんで
かぶる可能性が高いかも…
 
>小さなレンタル店はほぼ全て駆逐されてしまった。。(>_<。
ですねー
うちの前のレンタル屋さんはがんばってますけど
 
>テキサス・スプラッター・コレクション
全部買っちゃうつもりです!

投稿: 万物創造房店主 | 2013年5月 5日 (日) 15時11分

>かぶる可能性が高いかも…
 
まずは自分が所有したくて買うので
持っていてサミット上映済みでもOKすね(^o^)
 
このサイト一覧眺めているだけでも楽しいですねー
ワクワクします。10代の頃に映画雑誌で断片的に
見かけて気になっていた作品が見つかりそうd(≧∇≦)b
 
>うちの前のレンタル屋さんはがんばってますけど 
 
頑張ってますよねー
いつも関心しながら通り過ぎてます。
利用はしてるんですか?
 
>全部買っちゃうつもりです!
 
次回お伺いした時に未見のが残っていれば
観ましょうか。。(^^;)

投稿: kuroneko | 2013年5月 6日 (月) 00時07分

>利用はしてるんですか?
放出ビデオ買うだけですね
間彩さんとけっこう漁りました

ラインナップがんばってはいますけど小さい店なので
もう借りるものが…

手持ち本数も僕の方が倍以上ありますし…

投稿: 万物創造房店主 | 2013年5月 8日 (水) 17時43分

>手持ち本数も僕の方が倍以上ありますし…
それでも営業しているその店もある意味偉いし
映画サミットもはや30回に達する店主さんも
ゴイス!\(^^)/

投稿: kuroneko | 2013年5月 9日 (木) 00時27分

>30回に達する
あっというまに30回
早いですねー
でも、意外にネタには困らない
まだまだやってないのがあります
 
第二回鬼六ムービー大会
第二回リベンジムービー大会
もやりたいんですけどね
第二回に行く前にやってないのが多すぎて…

投稿: 万物創造房店主 | 2013年5月11日 (土) 15時27分

今度お伺いした時は
第○回グロ大会でもいいすねー(^o^)
一晩だけ本家グロネコになりますか(^^;)
しかし、若い時のジェーンバーキンの
美しさは無敵ですな。

投稿: kuroneko | 2013年5月12日 (日) 00時00分

>若い時のジェーンバーキンの美しさは無敵ですな。

今のジェーンバーキンはがっかりですけど…(ーー;)

投稿: 万物創造房店主 | 2013年5月12日 (日) 20時27分

でも、東日本大震災の時はチャリティーイベント
を精力的にこなされたようで素敵なおば様ですね。
(^o^)

投稿: kuroneko | 2013年5月13日 (月) 01時20分

>でも、東日本大震災の時はチャリティーイベントを精力的にこなされたようで
まー実にありがたい話なんですけどね
 
>素敵なおば様ですね。(^o^)
若いときはチャーミングに見えたスキッパが
おば様になるとつらい…(^_^;)
見たくなかった感が…
 
それに比べて
ヘップバーンはおばあちゃんになっても
ヘップバーンだったなぁーって
こゆときよく思います

投稿: 万物創造房店主 | 2013年5月14日 (火) 17時00分

>ヘップバーンはおばあちゃんになっても
ヘップバーンだったなぁーって
 
自分が通っている最寄り駅の喫茶店のマダムも
噂によると70過ぎらしいすが、背筋がシュッと伸びていて
スリムでジーンズが良く似合っていて屈託の無い笑顔が
可愛くて素敵な歳のとり方をされています。つい数年前
までは中年オヤジ・老年オヤジの客から結構マジで
口説かれてるのよく見ました。客が余りこない店なので、
自分もマダムと二人きりになると正直ちょっとヤバイ
心境になったもんです。若い頃激モテだったことでしょうなー。
魔女やね(^^;)

投稿: kuroneko | 2013年5月15日 (水) 00時31分

この記事へのコメントは終了しました。

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