映画「魔術師」
「魔術師」
原題名: The Magician
監督: レックス・イングラム
出演: アリス・テリー,パウル・ヴェゲナー
時間: 72分 (1時間12分)
製作年: 1926年/アメリカ
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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冒頭の巨大なサタン像がとてつもなく印象的で且つ造型も素晴らしく、これを
眺めるだけでも十分映画を観る価値有り。
『悪』と『善』の戦いであり、とてもシンプルな構成の物語だけどその根底には
人間の心の不完全さ・脆さ・という不変の諸悪の根源を見据えているので悪は悪の
まま。善は善のままに物語は進みそして終わるのだが、善と悪が いつひっくり返って
もいい不気味さが作品をそれなりに厚いものにしている。
錬金術ならぬ錬人術で最も必要なものは処女の心臓の血ということで女をマインド
コントロールしていく様は見ごたえがある。チャチなトリック映像に逃げずに全部を
きちんと"演出"で女を虜にしていく様を描いているので昨今の映画術よりもある意味
レベルが高いといえる。「吸血鬼」(1932)と良い意味で似ている。全部物語として、映像
として飛ばさずに描いていく様が不気味で、その事こそが映画を盛り上げているのだと
観ていてよくわかる。
「フランケンシュタイン」(1931)と同じく"塔"が悪の巣窟のシンボルとして禍々しく
描かれていてカッコいい。
物語の基本中の基本を抑える練習課題として観ると勉強になる作品かもしれない。
まずシンプルな構造を抑えておけば複雑な構成に展開することも可能であり、その逆は
結果的につまらないものになることも理解できる作品。
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