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2013年8月11日 (日)

映画「キックアス」

「キックアス」

原題名: KICK-ASS
監督: マシュー・ヴォーン
脚本: ジェーン・ゴールドマン,マシュー・ヴォーン
音楽: ジョン・マーフィー,ヘンリー・ジャックマン,マリウス・デ・ブリース,イラン・エシュケリ
出演: クロエ・グレース・モレッツ,アーロン・ジョンソン,クリストファー・ミンツ=プラッセ

時間: 117分 (1時間57分)
製作年: 2010年/アメリカ・イギリス

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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正義感は人並み以上にあれど、実際に行動する勇気は人並みほども持ち
合わせていないコミック好きのディヴ(アーロン・ジョンソン)は、気のある同級生に
話しかけることも出来ないごく普通の高校生。単なるコスプレから始まった
"ヒーロごっこ"がいつのまにか本当に命を掛けて闘うことに。"そこ"には
果たして、「正義」はあるのか。。

 

 公開当時、評判が良いので観に行った。同名のコミックが原作"ではなく"、
映画とコミックは純粋に同時進行で進んだ企画だったらしい。日本でも似た
ような例として有名なところでは、アニメ及び漫画の世界に金字塔を打ち立てた
と言っても過言ではない「パトレイバー」がそうであり、同作品のアニメ(押井守
監督によるオリジナルビデオ)はゆうきまさみによる漫画は原作というよりも
ビデオのプロモーション的な側面を持って描かれたことは、有名な話である。

 本作の方は「キックアス」の世界をコミック、映画それぞれの"ツール"を使って
それぞれ別個に表現しようという意図で作られた模様。コミックを原作にした場合は
映画的力学も興行成績も全く違ったものになっていただろう。

公開当時のチラシの絵を見ると、
KICK ASS  キックアス(アーロン・ジョンソン)
HIT GIRL ヒット・ガール(クロエ・グレース・モレッツ)
RED MIST レッド・ミスト(クリストファー・ミンツ=プラッセ,)
BIG DADDY ビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ)
のヒーロに憧れるコスプレ好き四人が巻き起こす珍騒動という主旨で描いているような
"印象"を受けるが、内容は大きく異なり、なかなかに立体的な構成を持つ作品に
なっているように思う。

 パンフレットでも言及されていたことだが、本作は見た目とはだいぶ異なる太い
線が複数角度を異なって引かれることにより"面"を構成している作品であり、その
太い線は主要登場人物の立ち位置と関係しており、脚本はきちんと自ら引いた線を
破ってしまうことなく良く出来ている。したがって、演じる人間達も自分の物語の開始
時の立場とその変化をきちんと演技に反映できるそれなりのレベルのスキルを持つ
人間でなくてはならない。本作はヒットするべくしてヒットしたといえる秀作だと思う
がキャスティングもかなり成功しているといえるのではないだろうか。

 何といっても最もウェイトが高いのは型破りのチャーミングとクールさをこれでも
かと炸裂させるヒット・ガール/ミンディを演じたクロエ・グレース・モレッツであろう。
他のキャストいついてはオーディションを繰り返せばいずれ候補は見つかったで
あろう思えるが、彼女が出現しなければ、もしかしたら本作は生まれなかったか、
生まれても本作とかかなり違った雰囲気を持っていたのではなかろうかと思う。観て
いて少なからず衝撃を受けたのはクロエ・グレース・モレッツによって演じられた
ヒット・ガールの"ダーク"な側面と行動の『正当性の無さ』であった。

 紫の髪と全く愛らしいコスチュームを身に纏って繰り出される躊躇無い"殺人技"の
数々。まだ幼いといえるヒットガール/ミンディが行う行為とヒーローに憧れるキックアス
やそれぞれの事情によるレッド・ミスト、ビッグ・ダディとは全くその"意味"は異なる。
ミンディの瞳は暗い。

 ミンディ以外の人間達の暴力は"発露"に過ぎないがミンディのそれには本質的な
理由は実はない。だから、段々と判ってくるわけだけどヒット・ガールの初登場シーン
で流れる遊び心溢れる短い音楽は大きな違和感がある。クライマックスにおける
"カチコミ"での音楽も西部劇等の過去の作品へのオマージュが教科書的にされて
いて映画としては楽しめるけど、やはり少女ミンディがここまで死闘を繰り広げなくては
ならない映画という媒体についてつい考えてしまうと、結構不気味なものがその底には
流れている。劇場内で殺戮シーンでハイになって歓声を挙げている30代前後と思わ
れる男性がいたけど、作品とその男性の雄叫びを後ろの席から合わせて眺めていて
何となく「ナチュラル・ボーンキラーズ」(1994)を連想した。

 本作が"ボーダー以上の作品"であることは疑う余地は無いし、続編もすでに
製作が発表されたとパンフに書いてあったが、ここまで暴力的である理由が果たして
あるのだろうか?描写そのもの、映像そのもののことではなく、"他者を殺める",
"命を絶つ"ということについて偽善と言われればそれまでだが、遥か後方に押し込めて
その後の"料理法"のギミックが表面上のテクニックの日進月歩によって微細を
極めていくことに娯楽性の点からいっても?は禁じえない。キャスト・スタッフが
総じて、描かれていることに否定的側面を揺ぎ無く持っている(と観ていて感じられる)
点もまた本作を"ヒット"させて興行的に成功させていることも今後とも抑えていって
欲しいとオッサン臭くも思ってしまった。

 続編があるとするならば、その色を決定付けるのは恐らく"レッド・ミスト"の
キャラクターではなかろうか。

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コメント

コミックでは、最後のカチコミシーンで主人公が一皮向けてヒットガールと共に暴れまわるのですが、映画の方は依然ヘタレのままでいまいちすっきり感が欠けていたのが印象に残っています。(唯一ここが残念だった)

クロエモレッツが主役よりも見所となっているのは、ヘタレヒーロー物としては正解なのかもしれない。

投稿: ベジ太 | 2013年8月11日 (日) 11時44分

>依然ヘタレのままでいまいちすっきり感が欠けていた
 
同じシーンに対する自分の印象は少し違っていて
精神的には成長して困難に立ち向かうようになったと
思ってみてました。最後の最後でラスボス倒すのにも
役に立ったと思ったけど。見方の違い、面白いね。
 
>ヘタレヒーロー物としては正解なのかも
 
特に映画ファンというわけではなく普通に鑑賞した人ならば
主人公はヒット・ガールだよね。この作品は。
続編は興行的側面から見ると、ヒット・ガールが主役に
なっちゃうんだろうけど、キックアスとレッド・ミストの人間
としての側面に焦点を当てて"真面目"に「ヘタレヒーロー物」
を作れば優れて感動的なヒューマン・ドラマになって、しかも
アクションバリバリの真の傑作が生まれる気がします。
視点をきちんと持てば日本でも作れる題材だね。

投稿: kuroneko | 2013年8月11日 (日) 22時20分

>真面目"に「ヘタレヒーロー物」
を作れば

キックアスに便乗してか「スーパー」「ミラージュマン」のようなものが出てきて、期待せずに見てみればどちらもまぁまぁ良かったので、この先どんな物が出てくるのかと期待していましたけど
あれからあまり見ないですね

投稿: ベジ太 | 2013年8月13日 (火) 23時42分

>どちらもまぁまぁ良かった
 
「スーパー」やはり良かったすか。
観に行きたいと思っていたけど忙しくて
スルーしてしまった(ーー;)
「ミラージュマン」は全然知らなかったすね。
 
想像するに脚本や公開情報が微妙に漏れて
本気で「便乗」狙ってるのでは。
本流と支流が入り乱れた河の流れのように
似たような企画が流れ過ぎていくのを眺めるのも
結構面白かったりしますな。
 
>あれからあまり見ないですね

アンチ(ヘタレ)ヒーロー物全体の「パイ」が
余り大きくないと判断されたのかね。
世界中どこにでもヘタレもアンチは氾濫してるしなー

投稿: kuroneko | 2013年8月14日 (水) 01時50分

キックアスまだ見てないっすねー
キックアス2に向けて廉価版出るのに期待
 
スーパーはエレンペイジ嬢のキチガイっぷりがよかったです
 
スーパー、ミラージュマンは後追い組みだけど
キックアスに先駆けて
2009年に製作された
「ディフェンドー 闇の仕事人」ってのもありまっせー

投稿: 万物創造房店主 | 2013年8月19日 (月) 17時09分

>まだ見てないっすねー
 
クロエ・モレッツちゃん(←もう"ちゃん"では失礼か)
の記事書いていたからてっきり観てるのかと思えば
意外すねー(^^;)

現在のモレッツちゃんが余り成長しないうちに
観ておいた方がいーかもですね\(^。^)/
 
>エレンペイジ嬢のキチガイっぷりがよかったです
 
傑作の匂いはプンプンしてたんですよねー
やっぱり自分の直感は信じないとダメすね。
クソ忙しくても都合つけて観に行くべきだった反省(ーー;)
 
 
>「ディフェンドー 闇の仕事人」ってのもありまっせー
 
この系譜はかつての帝都であれば、
「シアターN渋谷」
が敢然と受け持ち、きっと大特集組んだであろうが、、
今はもう無い、、(ノ_-;)
 
誰かやっておくんなさいまし(゚д゚;)
 
あ!次回遊京するまでにストック尽きてなければ
サミットで是非どうですか
「アンチヒーロー特集」サミット
鑑賞後の感想も盛り上がりそーですし( ̄∇+ ̄)

投稿: kuroneko | 2013年8月20日 (火) 00時18分

>てっきり観てるのかと思えば
劇場は知らんうちに終わっちゃってー
廉価版出るのを待ってたら
いつまでも出ない
2やるときに出ると思うのでそんとき買って見ます
 
>クソ忙しくても都合つけて観に行くべきだった反省(ーー;)

あ、でも今だと一本千円dvdコーナーにありますよ
Amazonでもそれくらい
逃すともう再販ないかもです
 
>「ディフェンドー 闇の仕事人」
ベジ太くんと見ちゃいましたー
スゲー真面目に作られててビックリ
キックアスとかスーパーに比べたら薄いけど
まぁこれはこれでいい
一番先ってことを考慮すれば一番スゲーのはコイツかもかも
 
ディフィンドーも千円コーナーにありますー

投稿: 万物創造房店主 | 2013年8月24日 (土) 23時19分

>2やるときに出ると思うのでそんとき買って見ます
 
サクサク作って公開と思いきゃ意外とモタついて
いる感じですね。やはり、キャラと戦闘シーンの過激さ
のアンバランスが製作の進行上で問題なのではないすかね。
「1」は知恵の輪みたいに絡まっている印象がありますな。
物語もキックアスとヒットガールのそれぞれの動機に
分断されているし。
 
>一本千円dvdコーナーにありますよ
 
「買い」ですねー探してみます!\(^^)/
昨日は
「ゴーストバスターズ」(1984)レンタル落ち中古DVD
を780円でゲットしました。
デッキいいやつ買って(←未だに買ってない奴)
久しぶりに楽しもうと思います。
 
>一番先ってことを考慮すれば一番スゲーのはコイツかもかも
 
最近、「そういうの大事」ってより思うようになりました。
後続がいくら細部をブラッシュアップしても、
トップランナーに適わない法則というのも確実にありますな。

投稿: kuroneko | 2013年8月26日 (月) 00時57分

>この辺の有名どころはたいがい↓
 
いい線いってますね。
ネットで検索した上で値段付けてる感じ。
 
店頭で買ったレンタル落ちDVDは、
自分のようにネットで少しでも安くというのが
「面倒だけどそこそこに映画観ている人」を
キャッチする値段設定すねーきっと。
 
若かりし頃レーザーディスクに大枚叩いていたせいか、
DVDはあんまりコレクト意識がなかったりします(^^)
散歩していて1000円未満で好きな作品が買えれば
いーかなみたいな。

投稿: kuroneko | 2013年8月26日 (月) 23時59分

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