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2013年8月24日 (土)

映画「美女と液体人間」

「美女と液体人間」

原題名: 美女と液体人間
監督: 本多猪四郎
脚本: 木村武
撮影: 小泉一
美術: 北猛夫
音楽: 佐藤勝
特撮監督/特技監督: 円谷英二
出演: 白川由美, 佐原健二,平田昭彦,小沢栄太郎,田島義文,土屋嘉男
時間: 87分 (1時間27分)
製作年: 1958年/日本 東宝

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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ビキニ環礁沖で繰り返される原水爆実験。周辺で操業する日本の漁船では
ある異変が起きていた。東京ではギャングが関る事件で容疑者が忽然と消え
る事態が続発する。

 

 オープニングのまとまりが素晴らしい。水爆実験の実際のフィルムの使用
したキノコ雲の妖しい閃光が画面を覆いつくし、すぐに完成度の高い漁船の
ミニチュアが安定感のある画面構成で登場したかと思うと、軽快な音楽と共に
タイトル出現。怪奇映画であることを、的確なショットの並びで明示させつつ
音楽自体は逆に独立性の高いアップテンポの曲を使用するギャップの演出に
製作者サイドの自信とプロ意識が感じらる。これまで観た東宝特撮作品の中
では上位に位置する秀逸な出だしである

 作品そのものについては、ドラマ部分の完成度は高く、特撮との融合度も
今の眼でみても色褪せることがない。「七人の侍」(1954)と同じく世界的に評価が
高まり続ける一方の金字塔的作品「ゴジラ」(1954)で屈折したマッド・サイエン
ティスト"芹沢"を演じた平田昭彦が刑事役をスマートに上手く演じている。

 スタッフの陣容が本作とほぼ同じであり、内容としては幾つかの点で着実に
本作よりもバージョンアップをみせている二年後に公開される傑作怪奇映画
「ガス人間第一号」(1960)で憐れなガス人間を演じる土屋嘉男が本作では堅実に
刑事役を演じてガッチリ作品の脇を固めているのも嬉しい。また土屋嘉男は
「ガス人間第一号」で見せている"影"をすでに本作においても感じさせ、後半の
群集を巻き込んだ液体人間と警察との壮絶なる?闘いにおいてはその影の部分
が物語の展開の全く関係ないところで

「まさかすでに液体人間になっているのか?」
「まさかガス人間になるのか?」(←まさか)

といった予断が生まれる余地のある動きが、こういったまず予算ありきのB級
的作品では大きくプラスの方向に働いているように思われる。

 ドラマ部分の鍵となる"美女"の白川由美も清楚な雰囲気と色気を兼ね揃えた
キャラクターで"良い"。液体人間の犠牲となったか、もしくは液体人間になって
しまったギャングの一味の恋人をひたすら待ち続ける女性どこまでもきちんと
演じることで、彼女の元に戻ってこようとする液体人間の憐れさと、いつのまにか
彼女に惹かれていく若き科学者(佐原健二)とその親友である刑事(平田昭彦)
との友情と"人間"がきちんと描かれているので、「主要商品である特撮部分」が
少なくても全く観ていてストレスを感じない。これは、まずは木村武の脚本が
特撮物の作品として秀逸であり、次に、キャスティングが無難且つ的確に収まり、
さらに美術、撮影、特撮と外観がきっちり組まれることにより"映画"という立体的
構造物が力学的にきちんと成り立っているからだろう。

本作から学べる点はなかなか多い。

 しかし、製作スタッフの顔並びがほぼ同じであり、姉妹作品といえる「ガス
人間第一号」との決定的な違いは、"液体人間"を単なるモンスターとして扱って
いる点に尽きる。そして、その一点において「ガス人間第一号」はどこまでも
傑作であり、その点において研磨し続ければ、その後の怪奇映画・モンスター
映画に一石を投じ続けたであろう問題作(真の傑作)にもなりえたかもしれないが、
結局は両作品は仕方の無いことではあるが、娯楽作品の域に収まって終わる。

 液体人間は人間ではない。
 ガス人間は人間ではない。

 液体人間もガス人間も「結局は、"化け物"(異形の何か)である」という帰結に
仮定のまま結論付けている点で残念ながらB級作品であり、本作は液体人間を

もしかしたら、今も人間であり続けているかもしれない点

を物語で簡単に触れてはいるが、バッサリ捨てている点においてどこまでも
"単なるB級娯楽作品"でしかないのは残念だ。しかしながら、本作の何百倍、
何千倍も予算をかけてギャラの高い俳優陣と名匠と呼ばれる監督を雇って作ら
れている"人間ドラマ"が出来ていると言われる作品よりも、よほど勝っている
点もまたこれらの作品にはある。

 良作。両方見るのであれば、「ガス人間第一号」の方が完成度が高くまた
順番的にも先に観た方が楽しめると思う。監督の本多猪四郎、特技監督の
円谷英二及よ永遠なれ!  

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