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2013年8月31日 (土)

映画「座頭市物語」

「座頭市物語」

原題名: 座頭市物語
監督: 三隅研次
撮影: 牧浦地志
美術: 内藤昭
音楽: 伊福部昭
出演: 勝新太郎,万里昌代,天知茂,島田竜三,三田村元
時間: 96分 (1時間36分)
製作年: 1962年/日本

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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盲目のヤクザ"座頭の市"は、世話になっていた貸元の抗争に巻き込まれる。
敵方に雇われていた平手(天知茂)とふとしたことから市は知り合いとなり、
気脈を通じるが、、記念すべき「座頭市」シリーズ第一作。

 

 勝新太郎(1931-97)はその個性は大いに買うが、特に好きでも嫌いでもない
俳優なので座頭市シリーズはいつか観れれば良いと思っていたが、最初に
観る作品が栄えあるシリーズ第一作という幸運に恵まれたのは素直に嬉しい。
それにしても"あの"伊福部昭が音楽担当だったとは全く意外で想定外であった。

 伊福部による重層なる低音の響きは諸作品に負けず劣らず素晴らしいのだが、
チャンバラ時代劇での起用はどうも「浮いている感」が否めない。

 親分同士の縄張り争いにすぎないことが原因により手下共はカチコミに命を
賭け庶民は巻き添えになって死んでいくわけだが、原因が閉じた利害関係の
"人災"に過ぎないので伊福部音楽の骨頂『避けられない大いなる運命の悲劇』
というスケール感がどうもミスマッチで残念ながら今ひとつである。そのせいか
どうかは定かではないが、楽曲の使用は控えめの感じがする。

本作以降、何作作られたか余り興味はないのだが、本作以降、後続が延々と
製作され続けるだけの理由が観ていて充分に伝わってくる。勝が演じる座頭市の
キャラクターの抜群の完成度の高さも大きな理由であるが、棟梁たる三隅研次の
視点と撮影、美術がどこまでもお芝居を引き立てるというプロに徹した

『スタッフワークの素晴らしさ』

が一番の理由ではないかと思う。撮影監督の牧浦地志による上半身だけや
首切り(首から上だけ)を多様した各シーンは何ともいえず緊張感があって、殺陣の
シーンもその全部が"絵"になっていて素晴らしい。

 ライバルを演じる天知茂もぶっとい勝新と好対照の細身で労咳に侵されながら
腕は一流という役を滅茶苦茶カッコよく演じている。ストイックな雰囲気と"目つき"
がどこなく市川雷蔵(8代目)を思わせて雷蔵が主演で共演した本作と同じ三隅研次
監督の「眠狂四郎 無頼剣」(1966)では雷蔵から「どっちが主役か判らない」と不満を
言われたそうであるが実に納得のエピソードである。

 座頭市と平手造酒が釣り竿片手に出会うシーンでの達人二人が静かに会話を
する"静"のシーンの緊張感とクライマックスでの二人の決闘を頂点とした抗争シーン
"動"の緊張感どちらも素晴らしい。傑作「剣」(1964)で存分に発揮されるフィルム
から異様なまでに匂い立つ撮影技法や役者の演技以上の"何か"。この"何か"
フィルムに焼きついていなけければチャンバラ映画とは言えないのではなかろうか
そしてこの"何か"は映画監督であれば自分の力で生み出さなくてはならないもので
あり、生み出せないのであればメガホンを取ってはいけない決定的なものだろう。

 個人的には万里昌代演じるヒロインのおたねと市が月明かりの夜を静かに歩く
シーンがベタではあるが映像がとても美しくて若干のエロスもあり好きである。この
シーンで"何もしない"勝新が不自然極まりないわけだが。

 業界の人間はおよそ無意味で無謀な続編を企画する前に本作を最低10回以上は
観て、「失われてしまった技」がなぜ失われてしまったのか、時代劇全般について復活
させるにはどうすればよいか考えるべきであろう。

観るべし。

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コメント

三隅研次監督はけっこうハズレないですよね
カメラワークもセンスあるし
 
座頭市はどれも面白いですけど
今のところコレっ!って一本は見つかってないですね
 
企画的には
香港スターのジミーウォンと共演・対戦した
破れ唐人剣
がかなり好きですけど
 
勝新は御用牙もなかなかいいですよ
兵隊ヤクザとかも面白い
 
最高傑作は
主役は兄の若山富三郎ですけど
勝新が作ったという意味では子連れ狼ですかねー

投稿: 万物創造房店主 | 2013年9月 4日 (水) 22時40分

>三隅研次監督はけっこうハズレないですよね
 
ですね!日本の誇る巨匠すねー
 
>カメラワークもセンスあるし
 
撮影の牧浦地志は三隅と組みまくってますね。
三隅作品では自分の一押し「剣」 (1964)も
牧浦地志が撮影をやっていてグッジョブ(*^ー゚)b です。
 
>破れ唐人剣
 
こういうの帝都で全くといっていいほど
やらんのですよねー
逆にそろそろ"来る"かな?
 

>兵隊ヤクザとかも面白い
 
たまに上映しているのですが
評判は昔から聞いているのでうすが
"とっかかり"が無くてスルーしてました。
今度観てみます。
 
>最高傑作は
主役は兄の若山富三郎ですけど
勝新が作ったという意味では子連れ狼ですかねー
 
お兄さんの若山富三郎の方が殺陣は上手かったそうすね。
「ブラックレイン」でのヤクザもいい味出していたなー
「衝動殺人 息子よ」では一転して、優しいおとっつあんを
好演していたし。兄弟揃って素晴らしい俳優ですな。

投稿: kuroneko | 2013年9月 5日 (木) 01時14分

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