映画「冷たい熱帯魚」
「冷たい熱帯魚」
原題名: 冷たい熱帯魚
監督: 園子温
脚本: 園子温,高橋ヨシキ
音楽: 原田智英
撮影: 木村信也
出演: 吹越満,でんでん,黒沢あすか,神楽坂恵,梶原ひかり
時間: 146分 (2時間26分)
製作年: 2011年/日本
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
シーンごとの「間」が素晴らしい作品。染み付いた小市民根性が災いして
破滅への道を一つ一つ堕ちていく主人公の社本。カメラは社本の視点で同じく
小市民ゆえに凶暴性を遺憾なく発揮していく人間達を活写していく。
人を『殺める』とは具体的にどんな気持ちなのか、案外本作で幾度も描かれて
いるような「開きなおり」に近いものなのかもしれない。
残酷でありながらほとんどのシーンが滑稽で可笑しくさえあるのは、食事の
シーンも強姦のシーンも殺人のシーンも人間の諸行の全ては所詮は滑稽で
あるという監督の園子温と脚本の高橋ヨシキの人間を見る視点の確かさと
"冷たさ"ではなかろうか。その冷たさが絶対的な碇として機能し、作品を
最後まで力強く引っ張っている。
「こんな邦画が観たかった」
嵌り過ぎている情けない主人公を演じる吹越満と"愉快な仲間達"の凄惨で
空疎でそれゆえにリアルな人間模様を観ていて何度もそう思った。
予算の少なさを作品の出来の言い訳にしない、する必要のない
完全なる"正解"の一つがここにある。
---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 映画と賞を取ることについて関係性における独り言(2021.05.02)
- 映画「ジョーカー」(2020.12.09)
- 映画「魂のゆくえ」(2020.07.24)
- 映画「愛の渇き」(2020.05.01)
- 特撮映画における或る命題について(2020.04.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
一番最初に見た園子温の映画がコレだったので、その時はもの凄い監督かと思いましたよ。
投稿: ベジ太 | 2013年12月18日 (水) 23時54分
私が見た園子温の映画は未だにコレだけなので
余計な地雷踏まなくて済んでます(^-^)
投稿: kuroneko | 2013年12月20日 (金) 00時33分
たしかに今のところ
園作品でこれ以上のものを観てないなー
悲しくもすでに最高傑作決定か…
最近公開終わったヤクザモノはどうなんやろーねー
しかし、園監督がNHKとかに出て
巨匠扱いなのは悲しい限り
そんなに日本にロクな監督いーひんにゃねーって…(ρ_;)
投稿: 万物創造房店主 | 2013年12月27日 (金) 20時52分
>悲しくもすでに最高傑作決定か…
コレ越えるのは容易でないでしょうな
「出来ている空気」は監督だけの手柄じゃなくて
優れたスタッフとの出会いや偶然も大きいすね。
>最近公開終わったヤクザモノはどうなんやろーねー
観に行こうかと思ったけど、実際に足を運ぶだけの
パンチが予告編から感じなかったっす。
>そんなに日本にロクな監督いーひんにゃねーって…(ρ_;)
皆で地道に「発掘」して「育て」ていかないとダメすね。
投稿: kuroneko | 2013年12月28日 (土) 02時34分