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2014年3月16日 (日)

漫画「地上の記憶」

漫画「地上の記憶」

 
 

 一生、手放さないであろう、または一生繰り返し読み続けるであろうと思い
決めている。そんな本や漫画というものは今時誰しもきっとあるだろうが、
自分にとっての漫画におけるそんな一冊が

白山宣之著「地上の記憶 」

である。

 白山 宣之(しらやま のぶゆき) 1952年 長崎県雲仙市吾妻町出身。
2012年で癌により他界。享年59才。余りの寡作ぶりと、本書に寄せられた氏を
愛して止まなかった多方面の人々の賞賛と哀悼は、氏が世間に決して毒されず
媚びなかったと思われる生き方を貫き、人生そのものを危うくしたであろうことは
想像に難くない。そして、『その全て』がどの作品のどのコマにも結実していることが
容易に見て取れる。こんな作家は極めて稀有であり絶後ではなかろうか。

 掲載作品の全てが珠玉と呼ぶに相応しく、その初出を見ると、

陽子のいる風景 平成3年9月

ちひろ 平成4年7月

ピクニック 平成4年7月

大力伝 平成15年3月

Tropico - 南海冒険譚- 昭和54年8月

どの作品のどのコマを選んでも、昭和後期から、平成の世が十数年過ぎても、
ゆるゆると一日中酒を飲み飽きることを知らない「大力伝」の"準主役"玄蕃の
如くに白山氏の姿勢は寸毫も変わることはないことが判る。その事がいかに
奇跡的であることかは作品そのものが完全に証明している。

 買った当初は、「陽子のいる風景」、「ちひろ」にまず打ちのめされ、幾度と
なく読み返し、戦国時代末期を舞台にした「ピクニック」、「大力伝」の視点の
ユニークさと描写の細部の妙を楽しんでいたが、最近では南の島を舞台にした
日本人4人と悪漢達との胸のすく闘いを描いた前後編「Tropico」のこちらも
コマの細部に宿っている温かいユーモアと今では完全にタブー化してしまって
久しい「時代のひずみ」を"美し過ぎる"ヒロイン洋子と仲間達の屈託の無い
活躍にただ溜息を漏らす。

 有望な若手の台頭を望み、戦後の日本文化の一翼を今までとこれからも担い
続ける『漫画』を衰退させたくなかったら、話は実に簡単である。速やかに
白山宣之氏の全作品を出版し、国内外に広く長く流通させることではなか
ろうか。

 白山さん、貴方の人生はともすれば短く、作品の数そのものは決して多くは
なかったかもしれない。しかし、貴方の作品が人々に与える影響は
とても長く、意義深いもの
となるでしょう。

 
 有難うございました。
 
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「地上の記憶 」 白山宣之
双葉社

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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