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2014年3月23日 (日)

映画「紙屋悦子の青春」

「紙屋悦子の青春」


原作: 松田正隆 
監督: 黒木和雄
脚本: 黒木和雄,山田英樹
撮影: 川上皓市
音楽: 松村禎三
美術: 木村威夫,安宅紀史
編集: 奥原好幸
出演: 原田知世,長瀬正敏,小林薫,本上まなみ,松岡俊介
 

上映時間:1時間53分(113分)
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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紙屋悦子(原田知世)を中心とした終戦間際の紙屋家の数日間を
名匠黒木和雄が静かに描く。

 

2006年に最後に劇場で見た映画にして2006年に鑑賞した中ではNo.1の作品。
☆5個の理由は個人的に好きな映画的なファクターがこの作品には
沢山あったから。いくつかあげてみる。

・映画自体の映像・美術が綺麗。実に「美しい」作品。
・脚本・台詞がいい。
・実力のある俳優がしっかりいい演技をしている。
・長回しのシーンを飽きさせずに見せる。

小林薫(紙屋悦子の兄役)は昔から好きだ。実力があって安心して
見ていられる。本作の最初の見所は小林薫と本上まなみ演じる夫婦が
ワンカットで鹿児島弁で延々と会話を続けるシーンだ。長回し(シーンを
カットしないで一定時間連続で撮り続けること)は映画の醍醐味だ。
スタッフ・役者が一丸とならないといいシーンにはならない。
何気ない戦時中の茶の間における夫婦の会話シーンだが小林薫と
本上まなみは飽きさせることなくよく演じている。

本作に登場する人物は少ない。上に書いただけでほとんど全部だ。
また本作の舞台も数えるほどしかない。
現代パート以外は全て紙屋家で物語は進行する。

基本的に登場人物の会話で進んでいくが全く飽きさせない。

前半で小林薫・本上まなみ・原田知世が演じる紙屋一家をじっくりと描き、
中盤は紙屋悦子の知人役の長瀬正敏・松岡俊介が多いに魅せる。
長瀬正敏は手堅く堅実に演じていて彼の演技で劇場(神保町岩波ホール)は
何度か爆笑に包まれた。松岡俊介は今まで知らなかったが本作では
とてもいい味を出していてまた極めて重要な役を本当に見事に演じている。

本作の古き良き日本の平屋の風景をてがけたのは日本映画美術界の
至宝木村威夫。昼下がりの光の加減や夜のシーンがとても美しい。

本作は同名の戯曲が原作だが原作者の松田正隆は黒木和雄の
作品「TOMORROW 明日」(1988年)に影響されて書いたという。

そのせいだろうか。最初から最後まで作品としての基調のトーンの
統一感が素晴らしい。

お金をかけなくても素晴らしい作品は作れるというお手本のような作品だ。
戦時下のある平凡な家族の物語を描いた戦場シーンの一切無い
傑作戦争映画。


笑えて、そして、素直に泣けた。


監督の黒木和雄は2006年4月に逝去された。本作が遺作となった。


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