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2014年5月 3日 (土)

映画「紙の花」

「紙の花」

原題名: kaagaz KePhool
監督: グル・ダット
脚本: アブラール・アルヴィ
出演: グル・ダット,ワヒーダ・レフマン

時間: 149分 (2時間29分)
製作年: 1959年/インド

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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妻と長年別居状態にある映画監督のシンハは暮らしには不自由はなかったが
娘パミーとはたまにしか会えず、映画界に身を置くシンハを両親は理解しよう
とはしなかった。ある激しい雨の降る夜、シンハは一人の女性シャンティと出会う。
シャンティは後日、雨の夜に借りたコートをシンハに届けるためにやって来る。
撮影中だったシンハは偶然カメラに映ったシャンティの姿に長年追い求めてきた
"理想のインド女性像"を見出す。シンハとシャンティの運命は大きく変わり始めるが。。

 

 中身がしっかりと詰まった映画的な構造として傑作。『世界』を構築し、その
世界の住人達を適確に描いている。シンハに見出される美しき逸材シャンティは、
市井の一般女性、女優の卵から大女優、そして一人の"女"へ、やがてはシンハの
「運命の"ミューズ"」へ、そしてまた単なる小学校の教師へと流転の人生を澱み
なく演じきり、破綻が無い。そして男としての充実期を人生の絶頂期として生き、
美貌の女性を愛し、娘を愛し、人生を闘い敗れていく男シンハも強さと脆さ、
個性をきちんと持つ生きた人間として完璧に描かれ、そのラストはチャップリンの
晩年の傑作「ライムライト」そのままに美しい。

 最初は何となく控えめで、どことなくハリウッド映画の文法を模したような
演出に感じたが中盤以降はこれぞインド映画という陽気で呑気な歌と踊りが
適度に挿入されて楽しい。特に、シンハの思いがシャンティに初めて伝わる
翌日の撮影に向かうシンハ、シャンティの乗るオープンカーとそれを後ろから
二人を冷やかしつつ追う撮影隊のバスの一向が歌うシーンはシンハに心を
許し始めるシャンティ演じる女優の素敵な表情と相まって実に素敵なシーン
となっている。

 本作は興行的に惨敗を帰し、物語と同様に監督であるグル・ダットの
キャリアを終焉させてしまった作品とのことだが、傑作であることに疑う
余地はない。

 恐らく、安易な嘘くさい逆転劇を廃して"敗北していく男"を地道に着実に
描いた展開と、作品のテンポが後半やや落ちるところが公開当時の観客
には退屈に感じてしまったのかもしれない。今のようにグローバルに評価
が広まっていく世界で公開されれば、世界中に拍手を持って迎えられる
ことは間違いないだろう。

 主演の俳優陣、撮影、脚本、美術、バランスよく出来ている。女優さんの
抑制された演技と笑顔の素晴らしさは"ミューズ"を体現している。

 "シャンティ"とは"平穏"という意味があるようだ。シャンティを強引にでも
「自分の物」にしなかったのはシンハのプライドだろうか。
滅多に思わない
ことだが、この作品はもう一度観たい作品だ。グル・ダットの他の作品も
是非観たい。

 グル・ダット版「ニューシネマ・パラダイス」といったところか。

 

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映画」カテゴリの記事

コメント

この時代から
インド映画は踊り入りやったんですなー
 
そういや
リベンジムービー
「地獄曼陀羅 アシュラ」
とか
知恵遅れの女の子を抱えた家族のメロドラマ
「アンジャリ」
のビデオありますよ
 
どんなにシリアスな内容でも踊り入り
(;゚∇゚)/

投稿: 万物創造房店主 | 2014年5月 5日 (月) 21時23分

>この時代から
インド映画は踊り入りやったんですなー
 
最初期はいつからなのか興味はありますねー
調べればすぐ判るけど、こういうのは
観ながら追っていきたいすね(^o^)
 
>どんなにシリアスな内容でも踊り入り
(;゚∇゚)/
 
じゃー未見のインド映画ありましたら
サミット三泊目に、、、(^o^;)/
 
何かテーブル揺れているか、、
気のせいか、、(゚〇゚;)

投稿: kuroneko | 2014年5月 6日 (火) 00時59分

あ、地震だ地震
震度5
 
「地獄曼陀羅 アシュラ」
を筆頭に
第二回リベンジムービー大会しましょう
 
発情アニマル(アイスピットオンユアグレイブ)
鮮血の美学

元とリメイクの両方あるんで
見比べるのもいいですね

投稿: 万物創造房店主 | 2014年5月 7日 (水) 19時14分

>第二回リベンジムービー大会しましょう
 
了解です!(^o^)/

投稿: kuroneko | 2014年5月 8日 (木) 01時31分

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