映画「ゾンビランド」
「ゾンビランド」
原題名: ZOMBIELAND
監督: ルーベン・フライシャー
脚本: レット・リース,ポール・ワーニック
撮影: マイケル・ボンヴィレイン
音楽: デヴィッド・サーディ
編集: アラン・ボームガーテン
出演: ウディ・ハレルソン,ジェシー・アイゼンバーグ,アビゲイル・ブレスリン,エマ・ストーン
時間: 87分 (1時間27分)
製作年: 2009年/アメリカ R15+
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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作品の大枠としての世界観の構築方法において「ファイト・クラブ」(1999)
あるいは「ソーシャル・ネットワーク」(2010)と同じ系列である作品のように思う。
ゾンビという怪物(元は生物)がこの地球上に居て、あるルールによって
倒すことが出来て、あるルールによって自分もゾンビになってしまう。ヒーロー
はいざという時に勝利しなくてはならない。ヒロインと結ばれなくてはならない。
途中で登場する仲間は力強い助言者でなくてはならない。
そういった「物語的ルール」と「映画という興行(見世物)」の長く蓄積されて
築かれてきた系譜を俯瞰することで成立している大袈裟に言えば映画史に
対する肩の凝らない楽しいパロディ作品になっている。だからこそ"ランド"
なんだけども。そして、どのシーンも単なるアンチではなくて暖かい肯定に
満ちているのが本作の魅力であり、これからも観た者を魅了していくだろう。
物語の中盤でたまたま立ち寄った店の商品を全部ぶっ壊す爽快なシーンが
あったけども、劇中のゾンビとの死闘云々よりもこのシーンが何より好きだ
という人もきっといるだろう。永遠の名作「ブルース・ブラザーズ」の市場を
ただひたすらに破壊しまくるカー・チェイスシーンがどんなに技巧を凝らし
創造に資金を費やしたシーンよりも観客の溜飲を下げるように。
ゾンビのある種お約束的シーン、誰もいなくなったスーパーマーケットで
"王"になる挿話や、そもそも『ゾンビ』という元人間・元生物という『権利』
(主に所有権)を喪失して尚、生命を主張する哀しい生き物という定義そのもの
を考えてみるにゾンビ映画というのは反資本主義的であるとも言えるが、
つまるところ世界中の人々が嫌々従っている社会制度と言えるのかもしれない。
ウディ・ハレルソンは以前から好きな役者だったが本作でも主人公達の
敵か味方か判らない雰囲気を出しつつ後半では父性とアニキっぷりを
存分に魅せてくれてさらに好きになった。
そして、爆笑を欲しいままにさらっていくハリウッドの体現者「B・M」の事も
忘れてはいけない。
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コメント
近年のゾンビモノとしてはまぁまぁ面白かったですね
ただ
BMのシーンがちょっと長くてゲンナリしました
オオモノ俳優に出てもらったからある程度時間を割かないと
なんてことになると
わざわざ出てもらった意味が薄らぐ気がします
投稿: 万物創造房店主 | 2014年7月 8日 (火) 17時07分
>近年のゾンビモノとしてはまぁまぁ面白かったですね
視点のちょっとした違いを大事に持たせた作品ですね。
これからも投入資金が乏しいであろう邦画界はこの作品から
学ぶことが多々あるのではと思います。
>BMのシーンがちょっと長くてゲンナリしました
自分は調度良かったすかねー
長めなのは、大物に気を使ったというよりも
スタッフのリスペクトにより結果的に少々長くなったの
ではと思います。あくまでも推測ですけども。
>オオモノ俳優に出てもらったからある程度時間を
割かないとなんてことになると
まあでも一時代を築いた俳優に余りに杓子定規に
サクサクとフェードアウトされるのも寂しいすね。
作品の内容によるけども。本作は遊び心が何よりも
大事な作品だか余り気にならないかな。
投稿: kuroneko | 2014年7月 8日 (火) 23時56分
>サクサクとフェードアウトされるのも寂しいすね。
僕は逆ですかね
大物をいいとこだけ使って残りは使い捨てる
ぐらいの潔さが好きですね
ポリスストーリースピンオフの「プロジェクトS」で
ジャッキーの出番それだけ?しかも女装?
とか
「ゴッドギャンブラー2」のユンファが出るように見せかけて
ラストの数秒だけ、しかも使いまわし
とか
そんな潔さが好きですねー(^O^)
投稿: 万物創造房店主 | 2014年7月14日 (月) 22時28分
>大物をいいとこだけ使って残りは使い捨てる
ぐらいの潔さが好きですね
製作者側の勇気が問われるすねー(^^;)
私だったら出来んなー。
だったらオファーすんなって言われそう。。
>ジャッキーの出番それだけ?しかも女装?
へ~
女装のジャッキーすか(・。・)
>ラストの数秒だけ、しかも使いまわし
それは、何か別の問題が、、(^^;)
アジアのスターの扱いはハリウッドと大きく
違いそうですよね。
組合の有無とか肖像権の有無とか。
そういう細かいやりくりの差が
上手い俳優や著名な俳優=儲かっている俳優
にならないのでしょうね。
投稿: kuroneko | 2014年7月14日 (月) 23時13分
そういえば
映画「祇園祭」
すごい数の豪華俳優捨てキャラ出てます
高倉健とか
美空ひばりとか
色々使い捨て…
投稿: 万物創造房店主 | 2014年7月27日 (日) 16時45分
>色々使い捨て…
「祇園祭」(1968)
中村錦之助
岩下志麻
田中邦衛
志村喬
田村高廣
藤原釜足
三船敏郎
渥美清
北大路欣也
高倉健
美空ひばり
・・・
美空ひばりのクレジットは
"町衆A"(^^;)
確かにこの作品は
"色々"なリソース使い捨て感漂っていますなー
ある意味カルトな一作ですな。
なーんか妙に元気なお姉さんが町民の中に
居た気もしますねー中途半端に出番があって。。
あれが美空ひばりだったのかなー(ーー;)
高倉健は、、どこに居たかなー(ーー;;)
投稿: kuroneko | 2014年7月29日 (火) 01時11分
>あれが美空ひばりだったのかなー(ーー;)
たぶんそれです
ラストの巡行シーンで一瞬出るだけですね
>高倉健は、、どこに居たかなー(ーー;;)
高倉健はもっとしっかり出てますよ
奉行所みたいなのに直訴してる町衆の長
3分くらいは出番あったと思います
投稿: 万物創造房店主 | 2014年8月 2日 (土) 21時14分
>奉行所みたいなのに直訴してる町衆の長
3分くらいは出番あったと思います
そう言えば、、(ーー;)
豪華キャストと盛り込みすぎた脚本の
結果の典型のような作品すね。
投稿: kuroneko | 2014年8月 3日 (日) 10時34分