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2014年9月25日 (木)

映画「エバンス博士の沈黙」

「エバンス博士の沈黙」
Silence of Dr. Evans


監督: ブラジミール・メタリニコフ
脚本: ブデミイル・メタルニコフ   
撮影: ユーリー・ソコル   
出演: セルゲイ・ボンダルチュク,リナ・スコバテセバ,イリーナ・スコブツェワ

時間: 90分 (1時間30分)
製作年: 1973年/ソビエト

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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エバンス博士夫婦等が乗る旅客機が突如翼から火に包まれ墜落する。
博士が気付くと、不思議なことに数名だけが生き残り、謎の"ホール"が
飛行機の中に出現する。"ホール"に入って帰還した者は、意味不明な
事を告げる。意を決してエバンス博士が"ホール"に突入してみると、そこ
には異なる宇宙から訪問した異星人がいた。。
 
 
 「思考実験」と、SFの要素をきちんと脚本に盛り込み、映像も撮り、『映画』
として成立していることに感動。SF映画というのは、人類の技術と叡智が
"ある方向に進んだ場合"を過程して描く娯楽であるわけだから、ひたすら製作
資金とスタッフの映像構築技術に物を言わせ、ハードウェア面をごり押しする
のも大いに"有り"なのだが、タルコフスキーの「惑星ソラリス」(1972)や本作の
ように、人類の叡智の到達点の結果としての未知との遭遇の"始め"と
"終り"を描く
というのも、正しいアプローチで、しかも、とても難しい。

 それは、例えば、ラーメンで言えば、豪奢な具材を惜しげもなく投入した
何千円もするものもそれなりに難しいと言われればそれまでだが、ワンコイン
程度で食することが出来、しかも"きちんとしたスープと麺"を提供する方が
遥かに難しく、高い"技"を要求されるということにも似ていはしまいか。
似てないか、、

 異星人達の暮らす世界では、"オロ"という謎の生命体が制御する世界であり、
"オロ"は異星人達よりもあらゆる意味で高位に位置する。異星人は"オロ"
指示に従い生きるようになってから地球人のような飢餓や戦争、その他の苦しみ
から逃れることが出来たのだとエバンス博士に説明する。仲間の一人が地球人の
戦闘機に撃墜され命を絶っても彼等は激高したりしない。ただただ静かに
仲間を弔い哀悼する。

 エバンスは来訪した異星人の一人オランテと親しくなりオランテもエバンスに
惹かれるようになる。

 「惑星ソラリス」も本作も"至高の存在"というものへの憧れとでもいうのか、
生命体は精神も進化をし続けることが出来るという『ベクトル』を感じるのは
社会主義的思想を感じる。無邪気に"それ"を信じた人々と、まるで信じて
いなかった人々と、どちらでもなかった人々によって作られたここ百年の
苦難と絶望ともしかしたらほんの僅かの希望に彩られた足跡をこれから先、
我々は、さらに我々より下の世代はどう見ていくのだろう。

 ソビエト版「2001年宇宙の旅」(1968)であり、恋愛映画としてもよく出来ている作品。


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