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2014年11月15日 (土)

映画「刑事ベラミー」

「刑事ベラミー」

原題名: Belammy
監督: クロード・シャブロル
脚本: クロード・シャブロル,オディール・バルスキ
撮影: エドゥアルド・セラ
音楽: マチュー・シャブロル
編集: モニーク・ファルドゥリ
出演: ジェラール・ドパルドゥー,クロヴィス・コルニアック,ジャック・ガンブラン

時間: 110分 (1時間50分)
製作年: 2009年/フランス

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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警部補ポール・ベラミーは、美しく聡明な妻フランソワーズと自宅で悠々
自適の休暇を楽しんでいた。そこに殺人を犯したという男が訪問してくる。
そして、弟もベラミーに会いにやってくるが。。

 

 殺人犯が、"悪党"とは限らない。

 死んでしまった人間と、最後に接触した人間の証言を、偏見を持たずに
信用できるか?しかも、その男には当初は死んだ男を殺す理由が「明確に」
あった。

 刑事が、"善人"とは限らない。

 法と秩序を遵守するとは限らない。不倫をしていないとは限らない。

 妻が、貞節を守っているとは限らない。

 妻が、弟と不貞をしていないと、どうして信じられる?

 なぜ、弟の人生は、失敗続きなのか?

 生まれ持って不運なだけなのか?
 
 繰り返される人生の躓きは、本人の責任とは限らない。。

 人間とは、つまるところ、『謎』である。

 しかし、人間が謎であるということを意図的に描いて、さらに登場する
全員が、何かを隠しているのではなく、本質的に謎を常に持ち合わせる
生き物であるという上でお互いに信頼と疑念の激しい繰り返しの中で
生きていくこと、

 すなわち、

 我々のこの世界を描くことは至難の技である。

 ベラミーと、弟の距離感が絶妙。兄弟を持っている人間なら思わず
ニヤリとなるシーン、台詞多し。

 弟は、兄を羨望と尊敬と嫉妬を併せ持った視点でずっと追ってきた。
兄は、何事においても周到で、卒が無く、失敗することもなく、美しい
妻と堅実な生活を送っている。しかし、弟の人生には兄の弟への辛辣な
態度と過剰な制止が暗い影を落としていた。優秀な兄の故意ではないに
しても弟への干渉が、弟をコンプレックスと見通しが甘いまま走らせる
理由にもなってしまう。

 良かれと思い、殺人容疑をかけられた男の相談に乗って、周辺の
人物を洗っている内に、人間達のエゴは、ベラミーの冷静な思考を乱し、
妻と弟への疑惑、そして最後には自分自身の心深くにある欺瞞を洗い
だして出現させることになる。

 なぜ、ベラミーは容疑のかかる男を、丁寧に、先入観を廃して接する
ことが出来るのか。それは、必ずしも善意やプロフェッショナルな姿勢から
発せられたものではないということを。

 「俺は、自分を蔑むことで、自尊心そ保とうとして来たんだ。」

 偉大なる巨匠は、謎である人間そのものをあくまでもエンターティメント
として描くという至難の技を、最後まで軽やかにやってのけ、逝った。
作品の詰まらなさを「時代の流れ」や「映画製作環境の変化」にしては
いけない優れたお手本でもある。 

 ベラミーを演じる主演のジェラール・ドパルドゥーは、本作では、等身大の
ありのままの"弱き善人"を「ベラミー」という完成された人格を完璧に演じ、
「あるいは裏切りという名の犬」(2004)では、どこまでも許し難い"悪党"を
どこまでも憎たらしく、やはり完璧に演じている。私生活においては、2012年に
本国政府の裕福層への課税に強く抗議して、翌年にロシア国籍を取得している。

 監督のクロード・シャブロルは長編作品は本作を遺作として2010年に逝去。

 拍手と、そして、敬意。

 ありがとうございました。

 

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コメント

あー「沈黙の女」の監督ですねー
 
「沈黙の女」
ジャケに書いてあった
フランスのヒッチコックとかは全く的外れやと思ったけど
なかなか丁寧で細かい演出と役者さんのいい演技で面白かったっす
 
亡くなってたんですねー

投稿: 万物創造房店主 | 2014年11月25日 (火) 21時16分

>なかなか丁寧で細かい演出と役者さんのいい演技で面白かったっす
 
ですねー
自分の観た全てのシャブロル作品に当て嵌まります(^-^)
 
女鹿(1968)
http://tokyo-kuroneko.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-f258.html

不貞の女(1968)
http://tokyo-kuroneko.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-b054.html

肉屋(1969)
http://tokyo-kuroneko.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-2370.html
 
どれも地味目だけど
役者が皆、活き活きしていて、キャラが立っていて、物語の展開が
遅すぎず、早すぎず、緩急も大きすぎず、小さすぎず、
最後まで飽きずに観れて関心しました。

東京では
亡くなった前後で盛大に追悼特集やっていましたが
もっと観ておくべきだった(ーー;)
 
↑ブログで何度も言及していますが
「刑事ベラミー」を含めて
"お金をかけずにしっかりと面白い映画を作る"素晴らしいお手本で
邦画に取り入れるべき点は沢山ありますねー(≧ε≦)/
 
映画を志す諸氏、諸嬢よ!
クロード・シャブロルを観よ!!\( ̄0 ̄)/

投稿: kuroneko | 2014年11月26日 (水) 00時15分

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