映画「ありきたりの映画」
「ありきたりの映画」
Un film comme les autres
A Film Like Any Other
監督: ジャン=リュック・ゴダール
脚本: ジャン=リュック・ゴダール
撮影: ジャン=リュック・ゴダール,ウィリアム・リュプチャンスキー
編集: ジャン=リュック・ゴダール
時間: 107分 (1時間67分)
製作年: 1968年/フランス
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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まるで90年代から往時を遡ってみているかのようなカラーパートも含めて
学生運動が激しく吹き荒れた、「その当時の作品」とは信じ難い出来。
革命、労働者、ブルジョア、学生、階級闘争、労働争議、ストライキ、
警官、軍隊、戦争、戦車、ヴェトナム、政治、経済、科学、アメリカ、
フランス、ソビエト、先進国、後進国、第三勢力、工場、管理職、出世、
家庭、デモ、デモ、デモ、、、
消費されつくされる『言葉の洪水』。
バタイユの言葉を借りれば"消尽"そのもののブラックホールのような会話。
ツイッターのように果てしない単語の羅列。。
草むらで果てることの無い、行く当ても無い、目的と手段の境界線の
曖昧模糊とした『時代の消費』。
"彼ら"の輪廻のようなツイッターそのものの会話に嵌り、
最早、永遠にこの会話を眺めているしかないのかもしれないと
半ば真剣に思った。
「このまま永遠にこうして座って"彼ら"の会話を聞いているしか
ないのかもしれない」
それは、退屈でありつつ、同時になぜかとてもエキサイティングでもある。
まるで「2001年宇宙の旅」を初めて鑑賞した時のような気分。
そして、奇しくも本作は「2001年~」と同年に製作された作品だ。
かたや、2時間半をかけて時空に果てに観客を誘い、
かたや、2時間の間、挿入されるデモの記録以外は草むらに"たむろ"する
若者からカメラはただの1mも移動しようとしない。
加速度的に、やがては無限に遠ざかっていく世界と、微動だにしない
世界の奇妙なまでの同一性。。
「彼らはあらゆる質問を拒否し、問題の本質に背を向ける。」
"彼ら"はどの集団にも、どこにでもいる。彼らとは"我々"そのものである。
「"彼ら"とは少なくとも自分達ではない」と思うとき、事態は極めて
不味い方向に進んでいると思った方が良いだろう。
映画の構成がツイッターそのものである極めて先駆的な作品なのかも
しれない。"それ"はツイッターであるから、言葉の落下を眺めていて妙な
癒し効果がある。癒し効果は鑑賞後、2日間ほど効いた。
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