映画「都市の夏」
「都市の夏」
Summer in the City
監督: ヴィム・ヴェンダース
脚本: ヴィム・ヴェンダース
撮影: ロビー・ミュラー
音楽: ザ・キンクス,ラヴィン・スプーンフル,チャック・ベリー
出演: ハンツ・ツィッシュラー,エッダ・ケッヘル,リープガルト・シュヴァルツ,
ゲルト・シュタイン
時間: 125分 (2時間 5分)
製作年: 1970年/西ドイツ
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
出所したばかりの男と、男を見守る友人達。男は女の家に居候しながら街を徘徊し、
ベルリンへ向かいそこでも別の女を訪ね街を流離う。やがて男はニューヨークへと
向かう。。
ヴィム・ヴェンダースの初監督作品。
ヴィム・ヴェンダースの作品はそれほど観ていないが、「パリ・テキサス」(1984)と
マイ・オールタイム・ベストの一つ「ランド・オブ・プレンティ」(2004)の原型がすでに
丸ごと提示されていて興味深い。キャリアの最初期の作品のせいなのか、主人公の
男のキャラが最初は短気で粗暴な感じだが、後半は計画性を持った思慮深くて
内省的な性格に変貌している気がするのだがご愛嬌か。
男が出所してから、外界に慣れるまでの描写と、周囲の人間達の暖かくもなく、
冷たくもない適度な距離感の描写は面白いが、男の内的変化の描写が
恐らくはないであろうことが明白となる後半の延々と続く『街』の描写は少々
退屈ではあった。
前半で女と共にする朝食のシーンがとても秀逸。朝陽の逆光の中で女は
卵を割り、男はコーヒーを啜り煙草を燻らす。中盤では男が友人とビリヤードに
興じるシーンがあるが、この友人は製作年当時25才のヴェンダースが演じており、
後年の氏の持つと全く変わらない穏やかな物腰が印象的だ。
劇中の季節はずっと冬であるが"Summer in the City"という逆説的な題名を
付けているのも若い監督なりに意味を込めてのものなのだろうか。
何ともいえないある種の示唆を作品に醸し出している点に"ヴェンダース"を感じる。
撮影監督のロビー・ミュラーは「パリ・テキサス」(1984),「デッドマン」(1995),
「コーヒー&シガレッツ」(2003)などを手掛けている。
どこか、吉田喜重作品を思わせるクールさが本作には漂う。
---------------------------------------------------------------
映画感想一覧 [年代] >>
映画感想一覧 [スタッフ] >>
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 映画と賞を取ることについて関係性における独り言(2021.05.02)
- 映画「ジョーカー」(2020.12.09)
- 映画「魂のゆくえ」(2020.07.24)
- 映画「愛の渇き」(2020.05.01)
- 特撮映画における或る命題について(2020.04.29)
最近のコメント