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2015年6月21日 (日)

過ぎ去りし頃、懐かしき君(二)

 
 
 

 「ふ~ん。Kがそう言ったの?」 
Iは、盛られた料理を取り皿に移してゆっくりと口に運びながら言った。

 「ね、意味判んないでしょ?
恵美は、Iに同意を求めた。

 「まあでも、Kらしいと言えば、Kらしいな。」
Iは口元を拭きながらぶっきらぼうに答えた。

 恵美はここでもまた憮然としなければならない役回りに
ややうんざりしていた。

 一体何だというのだろう。

 当時の仲間がそれぞれ別のルートで、時期もバラバラではあるが
故郷を遠く離れて東京に出てきたことを喜び合い、あの頃のように
一緒に何かをしたい。恵美の素朴な願いは暗礁に乗り上げつつ
あった。

 「Iさんは、どう思うんですか?Kさんは何を考えているの?」

 「どうって、、」
今度はIが憮然とする番だった。

 Iにとっては、Kの考えなぞは鼻から知ったことではなかった。

 そもそもIは、昔から自分こそがKのすることに振り回されて来たと
内心では思っている。確かにIとKは色々な事を一緒にやってきた
関係ではあったが、IにはIの、KにはKの、お互いの立ち位置の違い
というものもある。その辺の"機微"というものを恵美に説明するのは
Iにとって今さらな事であった。仮にそんな事を説明されたところで
恵美も少しも楽しくないだろうし、結局のところ納得もしないだろう。

 「Kにはさ、きっとやりたい事があるんだよ。うん。きっとそうだ。」
Iは、そう言って恵美にメニューを渡して追加の注文を促した。

 「やりたい事なんて、私だって沢山あります。誰だってそうでしょ?

 「...」
Iは、返答に窮し、沈黙するしかなかった。

 はっきり言って、Kなんてどうだっていい。

 それが恵美に判らないことが、Iにはもどかしかった。 

 友人に電話をかけると言って恵美は席を立った。

 「"K"か、、、

 テーブルに独りになったIは小さく呟くと、グラスに残っていた
赤ワインを一気に飲み干した。

 戻ってきてからもまだ意気消沈している恵美の様子を見て、Iは
ふとなんとも言えず可笑しくなってきて爆笑したくなってしまったが
恵美を気遣って何とか抑えた。

 店を出て、二人は少し歩いた。IはKの話題には最早触れようとは
しなかったが、その動機はKとはおよそ対照的だった。恵美はそんな
Iの態度に同じ結果に辿り着くようでいて、スタート地点の相違のような
ものを、IとKそれぞれに見たように感じた。

 Iが言うようにKは周囲の人間には判らない「何か」を見て、そこに
向かおうとしているのかもしれない。IはIで、"今"という時が楽しくて
仕方がなく特定の物に縛られたいとは思っていないのだろう。

 恵美は、IとKの行動が単純に足し合わされば、それでいいのに
そんな簡単な事がなぜ二人には出来ないのかが判然としなかった。

 IがKであり、そして、KがIであれば、、

 送っていこうとしたIを恵美はこれから知人と会うからと辞して途中の
駅で別れた。

 電車の窓からは都心のビル郡の輝きがいつものように綺麗に見えた。 
まだ都会というものに慣れていない恵美はつい見入ってしまうところだが、
今日はただ光の集積が遠くに見えるだけで何の感慨もなかった。

 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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