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2016年2月 6日 (土)

映画「まごころ」

「まごころ」

原作: 石坂洋次郎
演出: 成瀬巳喜男   
脚本: 成瀬巳喜男   
撮影: 鈴木博   
美術: 中古智   
音楽: 服部正

時間: 67分 (1時間7分)
製作年: 1939年/日本

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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多感な年頃の"悦子"のあるひと夏の日々を描く。

 成瀬作品の最高峰「山の音」(1954)同様、 きとんと構築された『世界』の中を
駆け巡る人々の情報戦とも呼ぶべき"映画的閉鎖空間"が心地よい作品。

 悦子の親友の信子の母がもたらすほんの僅かな"悪意の嘘"を元に動いていく
人々の滑稽さ。悦子の母と信子の父が恋仲だったことを否定する主人公の母。
悦子の父が立派な人間だったと言って悦子を育ててきたが祖母は完全否定する。

 畦道、杜、川、風の音が聞こえてきそうな草木の描写。
"永遠の夏の日"と多くの日本人が共感するであろう原風景が描かれる。

 そして、出征シーンの屈託の無さと、ある種の"健全性"

「動員されることになった。」

「お父さん、きっと勝ってきてね。」

 悦子は亡き父が立派だったことと、母と父が愛し合っていたことを信じて
疑わず、信子の家庭と自分の家が関係あることなぞ夢にも思わずに生きて
いる。実際には信子の母は自分の夫と悦子の母の過去に嫉妬を覚えて
生きており、信子と悦子が親友同士でありながら互いの家に行かない事情を
親たちの人間関係に理由があることを知らない。

 母を幸せにしたとは言えなかった亡き父。沈黙を通してきた祖母。
可愛い娘を思えばこそ父の"虚像"を作って母子家庭であることを意に
介さず必死に愛を注いで生きてきた母。。

 やがて悦子は何一つ知らなかった世界で生きて来たことを思い知り、
困惑するが、さらに母を慕い、「この世界を愛して」生きていく。

 大人たちによって「作られた世界の中」で、信子が川で怪我をした時に、
看護に来た悦子の母と信子の父のバツの悪さ悦子の鋭い眼差しの空気
それこそが映画を観る醍醐味。

 クライマックスの人形を巡るそれぞれの行動。

 信子の家庭は父が全権を握り、悦子の家庭は祖母が絶対的な決定権を
持つ。さりげなく家父長制が暗黙の絶対的な肯定がなされており、検閲が
始まっているか、自主規制のようなものを感じた。また、戦前・戦中の作品
にはクレジットに監督という呼称ない場合が多く、本作でも成瀬己喜男は
"演出"としてクレジットされている。何となく"統括は別にある"という意味も
感じなくはない。"大日本帝国全国婦人会"の腕章も当時であるだけに
鮮烈な印象を残す。

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