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2016年2月28日 (日)

映画「テザ 慟哭の大地」

「テザ 慟哭の大地」

監督: ハイレ・ゲリマ
脚本: ハイレ・ゲリマ   
撮影: マリオ・マシーニ   
音楽: ヴィジャイ・イェール,ジョルガ・メスフン
出演: アーロン・アレフ,アビュユ・テドラ,テジェ・テスファウン,
タケレチ・ベイエネネビユ・バイエ,ウヒブ・バユ,アラバ・E・ジョンストン=アーサー,
ヴェロニカ・アヴラハム,メンギスツ・ゼラレム

時間: 140分 (2時間20分)
製作年: 2008年/エチオピア,ドイツ,フランス

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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子供達が謎々に興じている。

「出かける前に無くなっているものは?」
「愛?」違う。
テザ(朝露)!

片足を失い、失意の内に故郷のエチオピアに帰郷した男アンベルブル。
村の若者達は社会主義思想に激しく煽られ、男達は武器を携帯した役人
達に容赦なく徴兵に駆られていく。アンベルブルはそんな生まれ故郷に
激しく絶望しつ無為な日々を過ごす。アンベルブルの兄は海外で研究と
勉学に打ちこめた弟に劣等感からか、距離を置く。母だけが傷ついた
アンベルブルを温かく迎えた。片足を失ったおぞましい日の出来事、
友人達との希望と失望の日々、故郷の惨状、アンベルブルは毎夜悪夢に
魘され、、
 

 主人公が誰かにソックリなんだがどうしても思い出せないと思いながら
鑑賞。誰だっけ、、思い出せない。

 祖国の発展に若さを惜しみなく投じる才気溢れる主人公達。しかし、
その情熱の全ては中国・ロシアをお手本にした社会主義革命であり、

自己批判せよ

と互いに迫り、内部分裂・抗争・思想上の憎しみは当然の帰結として
裏切りと暴力と命の剥奪へと容赦なく向かう。社会のより良い発展の為、
人文学と科学に打ち込むべき時間は空理・空論に全てつぎ込まれていく様は
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道標」(2007)そのままで、西洋思想に
慣れていない集団が上せ上がり、血で血を洗う惨状に堕ちていく様
「ルワンダ」を想起させる。人が人を襲う様は「THE CRAZIES」(1973)、
「ゾンビ」(1978)そのままだ。

 主人公のアンベルブルは監督の代弁者であり真に祖国を憂う人々の
イコンである。他の人間と隔てる決定的な違いは、得た知識や立場を
どのように行使するかを友人を含めた圧倒的な人々は無配慮であり
アンベルブルは慎重であるということに尽きる。「新しい良き社会」を招く
はずだった旧体制の打破が単なる無意味な復讐と自己の保身と堕落
へのスライドに変化するのには僅かに数日もかからなかった。

 完成した国家組織は当初の見込みと期待とは乖離した恐るべき
密告奨励組織であった。クシシュトフ・ケシェロフスキが告発した
「ある党員の履歴書」(1975)そのままに無限に続くかのような尋問は果てしなく、
問題の解決には決して至らず、ほんの言葉尻を捉えられて身の破滅を
招くか友を告発することになる。

 生まれ持った素質と恐らくは母が聡明であった為にアンベルブルは
直感的に他者を貶めて平然としていられる悲劇に堕ちずに済んだが、
論理と自分の構築した思想に寄るわけではないことが

"我々の世界の総体"

なのであり、友人達との邂逅と社会を見る姿勢には共感が生まれる。

 アンベルブルは、今日も小高い丘、"ムッソリーニ山"に登る。
ただひたすらに故郷を憂い沈痛する。夕暮れは過ぎ深い闇が村を覆い、
また今夜もどこかで悲鳴と銃声が聞こえる。

 愛よりも、家族よりも、「政治」を優先してしまった。
『政治』とは何よりも家族の為であり多分、愛の為であったはずなのに。
祖国の輝かしい未来は"テザ"に過ぎなったのだろうか。。
 

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