映画「賭博師ボブ」
「賭博師ボブ」
BOB LE FLAMBEUR
監督: ジャン=ピエール・メルヴィル
脚本: ジャン=ピエール・メルヴィル,オーギュスト・ル・ブルトン
撮影: アンリ・ドカエ
音楽: エディ・バークレイ,ジョー・ボワイエ
出演: イザベル・コーレイ,ロジェ・デュシェーヌ,ギイ・ドゥコンブル,
ダニエル・コーシー,クロード・セルヴァル,ジェラルド・バー
時間: 100分 (1時間40分)
製作年: 1989年/フランス
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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パリのモンマルトルに棲息する初老の男ボブ。かつては賭博師として派手な
仕事振りであったが、監獄を出てからは、静かに暮らしていた。裏の世界の人間
でありながら、かつて警察官を救ったこともあるボブには警察も一目おいていた。
ある日ボブは、ポテト・チップを片手に街を独り歩く若い女性を見かける。
数日後、女と再会したボブは、仕事の口を紹介した。街の人間に慕われてながら
穏やかに日々を過ごしていたが、カジノの金庫に大金が眠っている情報を得て、
往年の賭博師としての血が騒いだボブは行動を開始する、、
目に染みとおるようなモノクロ映像の美しさが心地よい作品。ボブと
警察官との友情。かつて丸腰で狙撃されそうになった男をボブは救った。
それは警官を助けたとも言えるが、相手も裏の社会で生きて来たボブの
知人であり、丸腰の警官を撃ったという重大な汚点を残さないように
その相手の方を助けたとも取れる。ボブがどう考えていたかはあくまでも
判らないように描写しているのがGood。
監督のジャン=ピエール・メルヴィルはファシズムの恐怖を緻密な人物描写と
細やかな演出を積み上げることで告発した傑作「海の沈黙」(1947)と同様、
本作においても人々のキャラクターと行動様式から物語を作りこみ、観る者を
引き込んでいく。そして、同作でもコンビを組んでいるアンリ・ドカエの映像美は
本作でも健在である。
ヒロインの脱ぎっぷりが通常の映画とは異質に感じる。男目線からの描写
であることを強調し、お触りバーのようなコスチュームから"安い女"である
ことの痛ましさがより強調されている。もちろん、意図的な演出であろう。
薄っぺらい且つ安直な性的描写を拒否し、作品のグレードをより高めている。
老成した「大人の抑制」でまだ少女の域を出ないヒロインに近づかない、、
"わけではなく"、タイミングさえあれば子分に与えた後でも口説く"ボブ"
という初老になっても自分の美学のままに生きる姿が活き活きと描かれ、
キャラクターに物語としてのリアル感と命を与えている。
8億フランという大金がカジノの金庫にあることを知って往年の興奮を抑え
きれないボブ。そして、仲間を集める過程で「大金」を強奪する情報が
どんどん漏れていき、直接関わらない仲間の妻等が分け前を勝手に
吊り上げていく様が何とも可笑しい。
パリのモンマルトルに巣くう人々を淡々と描写し続ける。女中が畳んだ
洗濯物を大事にしまう姿など部屋の中で過ごすボブの姿や朝、夕のモンマル
トルの街の様子がじっくりと描かれ、そちらの方面が好きな人には別の面白さ
も随所に盛り込まれている。テーマは大金をゲットできるかどうかではない
ということなのだろう。
登場人物達は皆、この街で確かに息づいている。
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