映画「宇宙大怪獣 ギララ」
「宇宙大怪獣 ギララ」
監督: 二本松嘉瑞
脚本: 元持榮美,石田守良,二本松嘉瑞
撮影: 平瀬静雄
特撮: 川上景司
美術: 重田重盛
音楽: いずみたく
特技監督: 池田博
出演: 和崎俊也,ペギー・ニール,原田糸子,柳沢真一,岡田英次,
フランツ・グルーベル,園井啓介,マイク・ダニーン,浜田寅彦
時間: 88分 (1時間28分)
製作年: 1967年/日本
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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劇中に描かれる舞台「近未来の日本」には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)
よりも、影響力も規模も遥かに大きいNASAのような機構があり、月や火星に
日常的に人員を送り込んでいる!
スケールの大きな設定に必要な素材を、意外にも
「"全て"映像としてきちんと作りこんでいる」点については大いに評価して良い
ところである。
月のステーションの描画、
スペースシャトルの役割を果たす宇宙船のデザイン、
ギミックもかなり洗練されていて正直驚いた。
宇宙船内のデザインも、全然悪くない。
全体的に美術・セットのセンスはかなり良くて、「タイトル」で随分損をしてしまって
いると言っても過言ではない。
女性科学者"リーザ"がごっつい美人で、後半は主役級の扱いなのが笑える。
撮影現場でも、きっと彼女を撮りたかったに違いない。きっとそーに違いない。
(勿論、脚本通りなのだろうけど。)
リーザ役はペギー・ニールという役者さんらしいが演技も堂々としていて、子供が
主要な顧客ターゲット(ということで予算をゲットして、狙うは本格SF映画という本心が
本作には強く窺える)ながらも三角関係をこの手の作品としては割と正面から作られて
いて、破綻を避ける効果もきちんと得られている。
司令塔役の和崎俊哉が「どーも見たころがある。」と気になって仕方がないのに
はっきりとした役を俄かに思い出せないと思っていたらば、
加藤泰監督作品 「怪談お岩の亡霊」(1961)
今井正監督作品 「武士道残酷物語」(1963年)
等に出演されている模様。
こちらも画面を引き締める役割を担って、しっかり演じていて頼もしい。
だが、しかし、肝心"要"の『ギララ』が出てくる後半は、どうも余り良よろしくない。
自衛隊や地元の自治体、警察組織がそれぞれに活躍する"間"はそれなりにリアルで
特撮シーンも何気に多いけど、仕方無いことであるが"怪獣映画"の域は全く出ていなく
て退屈。
3.11大人災時の情けない国家運営を見せつけられてしまった今という時代から見ると、
自衛隊機が余りにも無慈悲に、まるっきり無駄に破壊されて何ら省みられない
シーンの連続に正直、腹が立ってしまう。
"命の使い捨て"である。
"主に関東圏を破壊しまくる無軌道なギララ"は3.11大人災を引き起こした愚連隊と
重なって見えた。
終盤、活動エネルギーを求めて彷徨うギララに高濃度放射性物質を餌にしてたった
二人で立ち向かう余りにも無謀過ぎるな様も、無能な為政者の為か、問題のある行政
システムの為に二次被害・三次被害が発生かねない状況を水際で事態の収束に挑む
続ける世の中の無名の諸氏のことを連想する。
人間の起こす大厄災の全ては無能な馬鹿が権力を持った時に起こり、命を省みず
に事態の収拾に乗り出すのは聡明なる無数の市井の人々なのだ。
ギララたんが問題なのではなく、ギララたんは発端に過ぎず、その後の
我々の側の対応が『全て』であると言える。
本作は予算もタイトで、所詮はゴジラ(1954)・ガメラ(1965)の後続、三匹目以降の
ドジョウ狙いではあるが、『作れ。』と命じられた現場は前述したように「本格SF」を
真剣に描こうとしたのであろうと思われ、その点については「成功した」と言ってよいと
思う。
本作の"ダメな部分"は実は全て、
所詮は特撮物、怪獣物よ、というレッテル
を勝手に貼って、幼稚な演出・手抜きをしている所だ。
特撮物を作りたい諸氏がもしいれば本作の良い所、ダメな所をよく観て是非とも
バージョンアップしていって欲しい。
マクロで無秩序過ぎる破壊にたいして、極めてミニマムな人間が危険を侵しながらも
『無償』で解決の道筋を着けるという点においても「3.11」を適確に予言していると言えて
しまう全日本人必見(?)の作品かも。
全体としては大健闘した良作。グッジョブ!
(でも、正直、長い。。)
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