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2016年8月13日 (土)

映画「出来ごころ」

「出来ごころ」

監督: 小津安二郎   
原案: ジェームス・槇(小津安二郎)
脚本: 池田忠雄   
撮影: 杉本正二郎   
美術監督: 脇田世根一   
衣裳: 斎藤紅   
編集: 石川和雄   
出演: 坂本武,伏見信子,大日方傳,飯田蝶子,突貫小僧,谷麗光

時間: 100分 (1時間30分)
製作年: 1933年/日本

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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 自分の相方こそがヒロインの相手に相応しいはずなのに相棒のみっともない
"中年の恋"をどこまでも温かく見守る次郎を演じる大日方傳が"ド硬派"で
実にカッコイ。

 先輩で友人でもある喜八(坂本武)が年甲斐もなく身寄りの無い若い娘
春江(伏見信子)に惚れてしまうのを知ると、自分の気持ちはどこまでもひたすら
隠して春江にワザと辛く当たる次郎。

男子たるものこうありたい"鑑"であるが、実際問題、なかなか出来たものではない。。

 大日方傳(おびなたでん)は当時の銀幕スターであり、帝国ホテルに家族で
住んでいたかと思うと、戦後はブラジルに移民として移り牧場を経営しつつ日本で
映画を製作するというその人生も実に硬派だ。

 戦後のブラジルへの移民者には戦前・戦中までと戦後の「日本」の姿の余りの
変わりようの大きさに絶望しての移民も多くあったと聞くが国策映画にも多数主演
したという大日方にとっても戦後の日本社会の実相には大きな違和感を感じたの
かもしれない。

 主役の坂本武は屈託の無い"オヤジ役"として小津や木下作品に多数出演して
いる模様。二人の男性の間で乙女心を揺らす役を演じる伏見信子は、本作で
人気を不動のものにしたらしいが納得の清潔感ある圧倒的な美しさ。

 邦画史の映画精神史とでも呼ぶ面における小津の後継に位置する吉田喜重の
解く「小津作品特有の繰り返し」は本作においても健在である。

 独身男二人の日々の生活描写、男やもめの子育て描写の繰り返しの中で
美しき乙女の登場で日常は変化を続けながらも繰り返されて、ドラマは幾つかの
起伏を"繰り返し"ながらクライマックス、そして大団円へと流れていく。

 床屋のオヤジ、食堂を営む"おばちゃん"、古き良き"長屋的日本の平和"を
具現化した秀作。

 細やかなエピソードの積み重ねと、身勝手に見えて良心はきちんと持ち合わせて
いて最後に溜飲を下げさせる上手さは脚本の池田忠雄の仕事に帰することが出来る
だろう。氏が手掛けた脚本「父ありき」(1942)、「陸軍」(1944)、「非常線の女」(1933)
にも、テーマも方向性も異なるが抑揚の良さと物語の構成のバランス感、エンタ
テインメント性の堅持など大いに評価すべき点がある。

 単純に観るだけの我々にとっても、作り手にとっても学び得る点が多い作品で
あろう。
 

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