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2016年9月10日 (土)

映画「思ひ出」

「思ひ出」
THE STUDENT PRINCE IN OLD HEIDELBERG
OLD HEIDELBERG

原作: ヴィルヘルム・マイエル・フェルステル
監督: エルンスト・ルビッチ
脚本: ハンス・クレイリー
撮影: ジョン・メスコール
出演: ラモン・ノヴァロ,ノーマ・シアラー,ジーン・ハーショルト,
グスタフ・フォン・セイファーティッツ,フィリップ・デラシー

時間: 105分 (1時間45分)
製作年: 1929年/アメリカ

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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ザクセン公国の皇太子カール・ハインリッヒは学生街のハイデルブルグに留学し、
カティという女性と出会う。カティは婚約していたが、カールと恋に落ちる。
いつしか、カールに父の跡を継ぐ日が近づいてくる、、
 

 まだ幼い皇太子カールの醸し出すお行儀の良さ、侍従達としか遊べない
絶望的に孤独な少年時代の描写、そして20世紀の初頭の作品ということで
何となく昭和天皇(1901-1989)の御姿を連想させた。

 同時に、昭和天皇からの信頼が絶大に篤く、その為に直々に懇願されて
侍従長を勤めた鈴木貫太郎(1868-1948)の事も思い出された。

 昭和天皇の母、貞明皇后(ていめいこうごう)から「陛下の親代わりになって」と言われ
たとも、天皇から任命ではなく「頼む」と言われて総理大臣となった唯一の人物とも
伝えられる同氏は、太平洋戦争最末期の昭和20年4月に内閣総理大臣となり、当時
七十歳を有に超えていた老体(二・二六事件においては襲撃の対象となり危篤となった
ことも)に鞭を打って終戦工作に文字通り心血を注いだ。

 "江戸時代生まれで且つ非国会議員としては最後の内閣総理大臣"でもあった
鈴木は、日本と日本人を破滅の淵から救うという重大任務を見事に全うして、
終戦の三年後に死去する。

 さて、カールはやがて成人するが、小さい国のせいなのかどうか帝王学を学んで
いるとはいまいち言い難く、お人好しでニヤついていて落ち着かない頼りない青年
に見える。

 これが、エルンスト・ルビッチの周到な演出であることは後半の展開で判明する。

 ビリー・ワイルダーのオフィスには

 「ルビッチならどうする?」(ルビッチなら一体どうしただろうか?)

 "How would Lubitsch have done it?"

という言葉が貼ってあったというのは、つとに有名なエピソードであるが、言葉と
音に頼れないサイレント映画においては、表情と仕草と画面演出で登場人物達の
気持ちの機微と人間関係を表現しなくてはならず

 青年カールの孤独と、恋に落ちた高揚感、仲間を得た悦び・歓喜が画面から
なるほどよく伝わってくる。

 ラストの「運命を受け入れる男」の顔を見るだけでも鑑賞の価値あり。

 必見と言ってもいい作品だろう。

 制作された1929年は、ファシズムが本格的に世界を覆う運命の1930年代の初頭
から僅かにまだ月日があり、

 画面に横溢する人には、いつも希望があるのだという牧歌的な雰囲気が
実に"滲みる"
 
 
 ルビッチは、台頭したナチス・ドイツによって、1935年にドイツ市民権を剥奪され、
翌36年、アメリカの市民権を獲得する。
 

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