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2016年9月17日 (土)

映画「コンプライアンス 服従の心理」

「コンプライアンス 服従の心理」
COMPLIANCE

監督: クレイグ・ゾベル   
脚本: クレイグ・ゾベル   
撮影: アダム・ストーン
編集: ジェーン・リッツォ   
音楽: ヘザー・マッキントッシュ
出演: アン・ダウド,ドリーマ・ウォーカー,パット・ヒーリー,ビル・キャンプ

時間: 90分 (1時間30分)
製作年: 2012年/アメリカ

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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ファースト・フードでアルバイトに励むベッキーは、どこにでもいるごく普通の19才の
ティーン・エイジャーだ。"その日"も同僚達と仕事に勤しんでいた。警察から店長宛てに
電話がかかり、ベッキーに窃盗の嫌疑がかかったので捜査に協力してほしいと
要請される。店長は、電話先の警官の言われるままにベッキーを別室に連れて行き、
持ち物検査を開始する、、
 
 
 作品の主要テーマ的には、"コンプライアンス(遵守、従順 )" (英:compliance)
というよりも、"コンサバティブ(保守的)"(英:conservative)あるいは、"保身"
(英:self defense)という感じだろうか。誰もが厄介事に巻き込まれるのは御免だと
思い、警察に関りたくないがゆえに、それなりに持ち合わせている(かもしれない)善意を
も悪用され、皆が皆で事態を悪化に次ぐ悪化へと転がり落としていく。

 ベッキーはごく普通に若さを謳歌しているがゆえに、行状に問題のある兄の存在を
ちらつかせられたり、収監を怖れる余り、事態を自ら打開できずに"罠"に堕ちていく。

 バイト先の店長の"やり方"がまずは部分的に見れば誤りでないかもしれないが
根本的にプライオリティが滅茶苦茶である。が、ファースト・フード店という時系列的
に全てを流していく作業であるがゆえに、入れ替えが極めて困難または不可能な
「現場」であるがゆえに、支離滅裂なディレクションを仕方の無いものと
思わせる恐るべきリアリティ
に満ちている。

 日本とは趣きの異なる「拝金主義」と、「仕事にあぶれたくない」という強烈な思いが
『何かがおかしい』と同僚達は訝しみつつも、

 服従(コンプライアンス)するしか道はない。

 年頃の娘さんが密室に事実上監禁されるという恐怖と、周囲の人間はどこまでも
悪党ではない、寧ろ、そのほとんどが平均以上の善意を持ちながら社会と
"繋がっている"ゆえに密室をさらなる完全な密室にしてしまうというスパイラル。

 イカレタ犯罪者を(または犯罪者をイカレテいるからとして)

 ただ断罪すれば、それでいいの?
 

 というエッジの利いたメッセージを観ている者にひたすらつきつける。

 次の展開に、何を期待しているの(期待するの)?

と。

 成人になったら、いや、成人にならなくてもハイティーンにでもなれば、いや、
ミドルティーンにでもなればこの作品を瞬きせず観て、そこから起こる自分の心に
浮かんだ事をしばし眺めてみるがよろし。それから、社会に羽ばたいていくことは
決して悪いことではないだろう。きっと、良き市民に近づくことだろう。

 尚、

 本作は、『事実』に基づいており、
 
 "同様の手口の事件"
 
 は全米で70件以上あった。

とのこと。

 本作を見て、模倣犯がそうは起こらないであろうこと、もし少しでも似たような
スキームの出来事に遭遇した時、本作を観た観客ならば、登場人物達のようには
ならず、力強く、法が"法を遵守するより良い市民達の側"において行使される
ように必ず立ち上がろうでろうことが確信できることが、本作の価値であり、存在して
いい作品であることの証明であり、製作者の功績である。

 「映画の力」を作品に結晶化させた好例の一つ。

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