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2016年10月13日 (木)

映画「神様の思し召し」

「神様の思し召し」
SE DIO VUOLE
GOD WILLING

監督: エドアルド・ファルコーネ   
脚本: エドアルド・ファルコーネ,マルコ・マルターニ   
撮影: トンマーゾ・ボルグストロム   
編集: ルチアーナ・パンドルフェッリ   
音楽: カルロ・ヴィルジ       
出演: マルコ・ジャリーニ,アレッサンドロ・ガスマン,ラウラ・モランテ,
イラリア・スパダ,エドアルド・ペッシェ

時間: 88分 (1時間28分)
製作年: 2015年/イタリア

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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外科医のトンマーゾ(マルコ・ジャリーニ)は無神論者であり、職場においても
思ったことを率直に口にする皮肉屋でもある。経済的には何不自由なく暮らして
いたが家族はそれぞれが見えない不満を抱えていた。息子が唐突に神父になる
ことを宣言したことに訝しんでいると、その背後にはカリスマ性を持ち支持を集めて
いるピエトロ(アレッサンドロ・ガスマン)という神父に辿り着く。トンマーゾはピエトロの
"正体"を暴こうと試みる。。
 
 
 脚本と人物の配置はシンプルであるが、周到によく練られており、俳優達は
楽しく演じられたのではないだろうか。トンマーゾの部下や妻、息子、義弟、そして
謎多い神父を演じるアレッサンドロ・ガスマン等の立ち位置の無理のなさが観ていて
心地よくて且つ楽しい。

 家族であったり、友人であったりするが、何よりもそれぞれが独立した一個人・
私人であるという点から日々小さなカオスが起こり、失笑から爆笑、やがて、
「人として大切にすべき事は一体何なのか?」という大きな問いかけへと物語は
快調且つ堅調にリレーされていく。

 監督のエドアルド・ファルコーネは制作時には40代後半で若い。若さは画面からも
伝わってきて、より苦味のある展開を期待する人にとっては少々物足りない作品かも
しれない。

 キャストも全体的に若い映画であると言えるが若さは本作においては未熟さでは
なく「映画」という集団制作の成果品へのリスペクトと、実績に胡坐をかくことのない、
押しつけがましくない謙虚さが抑制となって観客に観ながら次の展開を予想する
自由を与えて、タイミングとその予測に対しての意外性を笑いと涙に変えている。

 ピエトロを演じるアレッサンドロ・ガスマンがとても良い。「信じている」ことを強い
表情と行動でどこまでも揺るがずに体現する。そして、ピエトロが人間であるがゆえに
トンマーゾと我々(観客)は

『本当は嘘をついているのではないか。本当は信じてなんていないのだろう。』

とピエトロをどこまでも「信じる」ことが出来ない。そして、ピエトロは信念を持って
行動しつつも、その事を周囲に隠さずアピールしつつも自分が猜疑心を持つし、
眠くもなれば腹も減る人間であることも常にアピールする。

 人嫌いの兆候も強かったトンマーゾはやがてピエトロに影響されていく。
ピエトロもトンマーゾに胸襟を開く。何も信じなかった若かりし頃があったことを。

 トンマーゾを演じたマルコ・ジャリーニは表面的にはドライでも心根の優しそうな
所が"地"で出ているように思われ、そのにじみ出る優しさが同じく根のところが
見えない/見せない演技をキープするアレッサンドロ・ガスマンと演じるピエトロとは
好対照であり、両者はシンクロして作品に奥行きを与えている。

 エドアルド・ファルコーネは大事にキャリアを積んでいって欲しいものだ。
本作に集結したスタッフ、キャストは今後さらに凄い作品を作ってきっと楽しませて
くれることだろう。
 

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