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2016年10月29日 (土)

映画「狼と豚と人間」

「狼と豚と人間」

監督: 深作欣二
脚本: 佐藤純弥,深作欣二   
撮影: 星島一郎
美術: 藤田博
音楽: 富田勲
出演: 高倉健,北大路欣也,三國連太郎,江原真二郎,中原早苗,室田日出男,石橋蓮司

時間: 95分 (1時間35分)
製作年: 1964年/日本 東映

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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搾取出来る側の者達は、搾取される側の者の気持ちなぞ寸分も理解しようとも
せず吸いとるだけ吸いとる。最早、搾取する者を持たず、搾取される物すら持たない
者達は、、
 
 
 脚本が良い。"人間"が描かれて、物語は生まれ、行動が積算されていく
心地よさ。

 兄弟関係の入れ子構造と、社会のそれとの相似形がわかり易く描かれ、
随所に必死な人間達に共感しつつも笑いを誘う。

 人間は必死になると爆笑してしまうものだが、将に"それ"だ。

 兄弟の確執と、生まれ落ちた境遇への『呪い』からくる殺人も厭わない暴力と、
さらに強大な組織から自分を守る為の問答無用の共闘へとマトリシュカ人形の
ようになっている「この世界」を凝縮して上手く描いていて随所に笑いを誘う
 

 豚小屋のようなバラックを出発点にした三人(三男は未だ出発できず)。

 長男(三國連太郎) > 次男(高倉健) > 三男(北大路欣也) 

の力の構造は微動だにせず。 

 三男は老いた母の面倒をその最期まで見て、しかも行くあてもやることも
決まらない。

 国家権力 > 組織 > 長男(組織の"犬"にして"豚") > 次男チーム
(成り上がりたい"狼") > 三男チーム(虐げられた"人間")

 単純な仕掛けをダイナミックなカメラワークで魅せ、しり上がりに盛り上がる展開は
近年、すっかり再評価も落ち着いた感のある傑作「新幹線大爆破」(1975)を彷彿と
させ、同作においては監督を務め、本作においては脚本担当の佐藤純弥の功績は
大きいと言えるだろう。

 明らかに伸びきっている不味そうなラーメンを啜る健さんがいちいちカッコイー。

 北大路欣也は、「仁義なき戦い」シリーズ中における最高傑作の呼び名も高い
第二部(広島死闘編(1973))でも、本作においても追い詰められた人間の緊張感と
やるせなさをよく醸し出している。

 三國連太郎は、多くの作品同様に、本作においても登場人物の中で演技は
一人突出して上手い。ほとんど独断場の感もある。まったくもって恐るべき役者だ。

 登場人物達は『金』という強大な力(磁場)で結ばれて右往左往するが、その
動機(賭けている心情)は皆明確に違う点が物語の"核"となって描けている
点に拍手を送りたい。

 だからこそ、終盤における長男の取った行動次男の決断三男の
には瞬きが出来ないカタストロフィがある。

 予算がタイトであっても、笑って、泣けて、哀愁と、無常も表現出来る作品を
作れることを本作は示している。グッジョブ!!
 

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