映画「歌麿 夢と知りせば」
「歌麿 夢と知りせば」
監督: 実相寺昭雄
脚本: 実相寺昭雄
撮影: 中堀正夫
音楽: 広瀬量平
美術: 西岡善信,池谷仙克
編集: 浦岡敬一
出演: 岸田森,平幹二朗,山城新伍,三田和代,緑魔子,内田良平,岡田英次,
成田三樹夫,寺田農,中川梨絵,八並映子,渡辺とく子,岸田今日子
時間: 125分 (2時間5分)
製作年: 1977年/日本 [R-18]
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
時は、元禄の世。田沼意次の治世。民は、猥雑ながらも初期貨幣経済を楽しみ、
好奇を満たしてくれるネタに常に飢えていた。蔦屋重三郎、歌暦等、"サプライアー達"
は、夜な夜な集まり妖しい談義に花を咲かしていた。権勢もまた遷ろい易く、田沼意次
の息子意知が狂刃に斃れることを契機に"時代"は終わりを告げる。。
岸田森演じる希代の浮世絵師喜多川歌暦を"ナビゲイター"として、実相寺昭雄、
武末勝が紡ぎ出す「夢の元禄時代」に心地よく浸れる二時間弱。
群像劇としても秀逸であり、山城新伍の嶺山月、成田三樹夫の蔦屋重三郎、
内田良平の風来山人それぞれの視点からのシーンを細かに入れることで
『空間』を"創り出して"いる。
岸田森は、弱い人間(=普通の人間)を演じるのがいつも上手い。『美』の表現を
追求するために妻を他人に抱かせることさえ厭わない芸術の世界に生きる冷徹な
男である一方で、夫に裏切られたことで出奔する妻を思い案じ、自分のした事を
後悔し続ける"当り前の人間"を一つのキャラクター内に見事に同化させている。
豪快な殺陣を魅せる嶺山月演じる山城新伍も新鮮だ。中年以降のテレビキャスター
としての姿や晩年の孤独な老後しか知らない世代の自分としてはその色気と二枚目
スターを充分に自認していたであろう自信がオーラとなって"夢の元禄の世"を彩って
いる。
歌麿は、豊臣秀吉の花見を題材に取った浮世絵を咎められ、手鎖50日の刑を受け
たことと、過労から54才で死去した。歌麿の人生もまた浮き沈みの激しい、そして、
その事を本人が愉しんだであろう儚い夢であったようにも見える。
同じ時代、同じモチーフ、同じ主要キャストを扱った作品として篠田正浩監督作品の
秀作にして大作「写楽」(1995)がある。篠田正浩が、本作を大きく意識していたであろう
ことは同作の持つ虚無性や"間"の取り方から察せられるがまるで万華鏡を覗いて
いるような煌びやかで他者の行為を盗み見ているような罪悪感を確信犯的に描ききった
本作は、実相寺昭雄が「人の生」について言及し、おそらく実践し続けたであろう
所詮、死ぬまでの暇つぶし。
をフィルムに焼き付けた『夢』そのものであろう。
[喜多川歌麿動]
================================================================
喜多川 歌麿(きたがわ うたまろ、宝暦3年(1753年)頃? - 文化3年9月20日
(1806年10月31日))とは、江戸時代の日本で活躍した浮世絵師。
姓は北川、後に喜多川。幼名は市太郎、のちに勇助(または勇記)と改める。
名は信美。初めの号は豊章といい、天明初年頃から歌麻呂、哥麿とも号す。
国際的にもよく知られる浮世絵師として、葛飾北斎と並び称される。繊細で
優麗な描線を特徴とし、さまざまな姿態、表情の女性美を追求した美人画の大家である。
================================================================
(ウィキペディア日本語版)[2016年10月28日 (金) 11:23 UTC]
---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 映画と賞を取ることについて関係性における独り言(2021.05.02)
- 映画「ジョーカー」(2020.12.09)
- 映画「魂のゆくえ」(2020.07.24)
- 映画「愛の渇き」(2020.05.01)
- 特撮映画における或る命題について(2020.04.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント