映画「光る女」
「光る女」
原作: 小檜山博
監督: 相米慎二
脚本: 田中陽造
撮影: 長沼六男
音楽: 三枝成章
美術: 小川富美夫
編集: 鈴木晄
出演: 武藤敬司,安田成美,秋吉満ちる,出門英.伊勢将人,伊達三郎,
高山千草,レオナルド熊,児玉茂,中原ひとみ,すまけい
時間: 118分 (1時間58分)
製作年: 1985年/日本 ヤングシネマ
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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婚約者を捜すために上京した大男仙作(武藤敬司)はゴミの山の上で歌う女性
芳乃(秋吉満ちる)と謎の男尻内(すまけい)と出会う。仙作は尻内の経営する店
"ジョコンダ"で働くことになりやがて婚約者の栗子(安田成美)と再会するが、、
相米慎二の作品の多くにはいつも不可抗力ではなく、加害的な暴力的な
"死"が濃厚に立ち込める。具体的にその行為が描写されるわけではなく、
人が人である前に生物として自らを維持する上で男も女も関係なく
「本能的に発動する暴力」
とやはり本能的に発散する"死"とその表裏としての"生"と"性"。
相米の生涯に渡る念の入った韜晦癖のために、観客は、その匂い立つ何かが
どこまでが自覚的なコントロールの結果なのか、そうでないのかが掴めずに苛立つか、
何度も作品を観て探り出そうとするか、または、相米の遺した言葉や周囲の関係者の
言動から解析しよう試みる。
何かが確かに見え、具体的でもあるのだがどうにも霧がかかっているが対象が
静止することない(静止していれば、それは偽物か『死体』である)為に一意の下に
判定を下せない。その全ては相米慎二という人と作品の魅力でもある。
解体されきった世界。希望の一欠けらもない世界。敬意というものが払われ
ない世界。法の機能しない世界。つまりは、『この世界』。
「そんなことはない。」という者が誰も登場しない世界。リアリティが希薄であるのに、
息が出来ないほど、瞬きが出来ないほどに真実に満ちた世界。
ハイライトシーンのバスの爆発シーンの世紀末感と尋常じゃない哀しさは一体何事
であろう。
奪わないということの「本当の難しさ」と不可能性と偽善を相米ほど知り抜いて、
考え抜いて、そこから全てのシーンを構築していった映画監督もいなかったかも
しれない。
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