映画「私は告白する」
「私は告白する」
I CONFESS
原作: ポール・アンセルメ
監督: アルフレッド・ヒッチコック
脚本: ウィリアム・アーチボルド,ジョージ・タボリ
撮影: ロバート・バークス
音楽: ディミトリ・ティオムキン,レイ・ハインドーフ
出演: モンゴメリー・クリフト,アン・バクスター,カール・マルデン,
O・E・ハッセ,ドリー・ハス,ブライアン・エイハーン,チャールズ・アンドレ
時間: 95分 (1時間35分)
製作年: 1953年/アメリカ
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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若くして牧師となったローガン(モンゴメリー・クリフト)は、"その日"は遅く帰宅した。
教会では雑用係として雇っている男が暗闇の中で祈っていた。男はローガンに
懺悔を懇願した。次の日、ピレットという中年男が死体で発見された。死体となった
男はかつての交際相手を恐喝で苦しめていた。その女性はローガンの知人であり、
アリバイを確定できないローガンは容疑者にされる、、
オープニングの雲の輝きが美しい空の下で逆光の中のモスクのようなシルエットの
教会が"不穏な物語"の展開を暗示している。
ヒッチコックの作品は、登場人物達がまるで心に鋼鉄の鎧を着ているかのように、
恋人同士だろうが、夫婦だろうが、兄弟だろうお互いが
"見えない心"=不信
というリアルな息苦しさと増幅していく猜疑心の中で物語は進んでいく。
人間の底意地の悪さを感じる。
材料の吟味に拘った結果、不純物を意図的に除いていない酒を飲んだ時のような
悪酔いのような感覚。
何かしらの"癒し"を求めて観た人間にとってみれば、ヒッチコックの演出にやり場の
無さを感じるであろうが、その人間の心の底を射抜くような冷たい視点そのものが
『恐怖』となり、往時も、今も、今後も、ファンを掴んでいく所以なのだろう。
押井守はヒッチコックに相当に傾倒している(していた)のだろうか。人物の配置、
画面の構成バランスに、同じくヒッチコック監督による「サボタージュ」(1936)と同様に
"押井守"というキーワードが観ていて何度か浮かんで来る。
心象映像がほぼ皆無で、駒かビリヤードの玉そのままにぶつかり合い、その反動で
クルクルと回り穴に落ちていく人間達の動きは、どこか、アニメーションを見ているよう
にも感じ、実際、ヒッチコックの作品はそのままアニメにしても実写と遜色無く楽し
めるのではないかと思う。俳優の人生経験に頼らない、任せない、阿らない、計算
されつくした演出のせいだろう。
『ヒッチコック』というOSの中では偶然の産物という"アプリ"は存在し得ないのかも
しれない。実際、ヒッチコックは独自色を出そうとする俳優は使いたがらなかったようだ。
本作においては主役のローガン神父を演じたモンゴメリー・クリフトとヒッチコックは
"視点"について対立があったとのこと。
終盤は、個人的には冗長だと感じるが、人間の心というものを暗黙の了解済み
として肯定的には描いていない以上は、単に音楽を盛り上げて"エンド"という訳
にはいかない。
カメラは、ローガンの無感地獄と、ゴシップが無いとなれば、平気ででっちあげる
庶民や警官達の行動を追い続ける。
ローガンの眩しく輝き続ける信念が、もしも曇ってしまったとしたら、95分という尺は
傲慢で驕慢で偏狭な人間達の群れををただ見続けなくてはいけない「拷問」にもなる。
それはすなわち極上の『恐怖そのもの』であるから我々は、ヒッチコックという
ウィザードからどちらにしろ逃れられないということになる。
タフな気持ちで鑑賞する必要がある「大人の童話」。
ヒッチコックとキュブリックを対談させてみたかったと漠然と思う。この二人が
「人間」について語りあったら一体どんな話しになっただろうか。
主役のモンゴメリー・クリフトは二枚目俳優としての地位を確立しながらも
病気や事故に見舞われ、1966年に45歳の若さで死去している。
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コメント
そう言えば映画「ヒッチコック」買ったのにまだ観てない…(ーー;)
投稿: 万物創造房店主 | 2017年1月29日 (日) 18時32分
観なくてもいいんじゃ。。。(一_一;)
投稿: kuroneko | 2017年1月29日 (日) 22時45分
え、おもしろくないんですか!(゜o゜;)
投稿: 万物創造房店主 | 2017年2月13日 (月) 19時17分
ご自由にどうぞー(~o~)/
観たらレビュー書いてください。
投稿: kuroneko | 2017年2月13日 (月) 23時52分