映画「断絶」

「断絶」
Two-Lane Blacktop


監督：モンテ・ヘルマン
脚本：ウィル・コリー,ルドルフ・ワーリッツァー
撮影：ジャック・デイルソン
音楽：ビリー・ジェームズ
編集：モンテ・ヘルマン
出演：ジェームス・テイラー,ウォーレン・オーツ,デニス・ウィルソン,
ハリー・ディーン・スタントン,ローリー・バード

時間: 102分 (1時間42分)
製作年: 1972年/アメリカ

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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55年型シャビーを自在に操る若者二人と、GTOを駆る男。スピードに獲りつかれた
男達+少女の束の間の物語。
　
　
　『不要な物』を極限まで削り取ったソリッド感がたまらなく快感な傑作。　

　"空間"の中において、"場"を持つ男達と漂う女。

　アメリカ南部の風景の漲る緊張感。

　まるで、「プラトーン」(1986)のような完全アウェーの空気。

　退屈しきった女"The girl"(ローリー・バード)は、男達に毒づく。

　「You're warmer!」(温い奴等!)

　かつて、ネイティブアメリカンから奪った広大な地は、走るか、または、祈るかしかない。

　"The GTO"(ウォーレン・オーツ)の疾走するマシンに乗って来る人々は、それぞれが
そのまま「アメリカ」の一断面だ。

　裕福なビジネスマン、ホモセクシャル、両親を車に"殺された"と連呼する孫を連れた
老婆、、、

　"The GTO"は怒り、呆れ、時折丁寧に対応し、ワシントンDCを目指す。　

　男達を袖にして、さっさと別の男に乗り換える"The girl"。

　"The girl"が置き去りにした荷は、まるで蝉の抜け殻そのもののようだ。
彼女は男達を通り過ぎ、脱皮を繰り返して、やがては美しい蝶となるのだろうか。

　55年型シャビーを自在に操り、相手を挑発し、レースにけしかけ、勝利の対価として
得た金で部品を買い、愛車を整備し、金が尽きてはレースに挑む。

　これも『アメリカ』そのものなのかもしれない。

　どんなに土地が広大であろうと、地元の人間達に、州政府に、警察に、国家に、
テリトリーは完全に埋められていて、楽園は何処にも無い。

　男達は黙って、ひたすら優劣を着ける為に生きる。負けた者は黙って金を出し、
尻尾を巻いて退散しなくてはいけない。

　"そのルール"こそが、平等であり、正義であり、力でもある。

　男達は走り続け、女もまた自分の為に生きる。

　バラバラな人々が刹那、交差し、情を分かち合い、また知らぬ顔で離れていく。。

　本作を思い出す時には、なぜか脳内の映像はいつも"モノクロ"になってしまう。
全てのシーンがモノクロで思い出される。"The GTO"も"The girl"も。。
　

　なぜだろう。

　全編がとてつもなく「静か」だからだろうか。
　
　男達の駆る愛車が奏でる風の音しか聞こえないからだろうか。
　
　
　"The girl"を演じたローリー・バードは、79年に恋人のアパートで自殺した。享年26才。

　"The mechanic"を演じたデニス・ウィルソンは、83年に海で溺死した。享年39才。

　

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