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2017年4月22日 (土)

映画「陽炎座」

「陽炎座」

原作: 泉鏡花
監督: 鈴木清順
脚本: 田中陽造
撮影: 永塚一栄
音楽: 河内紀
美術: 池谷仙克
編集: 鈴木晄
出演: 松田優作,大楠道代,中村嘉葎雄,楠田枝里子,加賀まりこ,大友柳太朗,
麿赤兒,東恵美子,沖山秀子,玉川伊佐男,佐野浅夫,伊藤弘子,佐藤B作,
原田芳雄

時間: 139分 (2時間19分)
製作年: 1981年/日本

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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 出だしはまあまあだが、カット割りがいまいちとか言ってみる。
しかして、編集は数多の名作を手掛けた鈴木晄(すずき あきら)である。

 登場人物がほぼ全員、『戦後』という"断層"、または、"亀裂"または、
余りにも"決定的な風土の違い"の中の住人なので

 『1920年代半ばの日本』という時代設定にどうしても無理を感じてしまう。

  "断層"(全世界規模の)が発生する前に「戻れる」のか。

  或いは、失われた前段階を「表現出来る」のか。

 "現在という鎖"を「断ち切れている」か。

 立ちきって演じろ。

 と言われて出来そうなのは、劇中の人間では原田芳男であろうか。

 ヒロインは、30歳位の頃の原田美枝子がやるべきキャラクターではないかと
冒頭から思い、何となく脳内で変換してみていた。

 前半の重要なシーンである松田優作との幻想的な(且つ物足りない)絡みの
シーンも原田美枝子の方が。。と思う。

 鈴木清順の求める"エロさ"とは違うとは思うけど、ミスマッチ感に観客は
"萌える"のではと思ったり。

 原田美枝子は、「帝都物語」(1988)で舞台となった大正時代という空気感を持った
女性を端正に演じている。美術の池谷仙克(いけや のりよし)は、「帝都~」にも
参加した美を追求し続けた"実相寺組"の重鎮である。

 松田優作は、金持ち夫婦に弄ばれる男を熱演してはいるが、"松田優作"が
先に出てしまっている。本人の責だけに帰するのは酷でもあろうが、演じる役より
も俳優というキャラクターと個性がよほど前に出てしまう
80年代以降の邦画の
特徴と、ある種の斜陽の一面が垣間見える。

 原田芳男が出てくる中盤、本作は俄然、息を吹き返す

 後半は、映像美は秀逸であるが全体として観客を置き去りにしている
ように思う。

 脚本は、こちらも秀作を幾つも世に放った名手の田中陽造である。

 或いは、脚本すらも置いきぼりになったのか。確信犯的に。

 何しろ、監督は邦画界に"固有のポジション"を築いた鈴木清順なのだ。

 そうは言いつつ、今となってしまえば原田芳男と松田優作が同じ空間・フレーム内
に存在してくれている
というだけで本作の価値は充分にあるとも言える。

 松田優作が原田芳男をリスペクトした上で対等になろうと計算して演じられて
いるようで見応え充分。

 「まあそんなに頑なになるなよ。」という原田兄ィの貫禄に萌え×萌え

 そして、後半は拷問のような"ループ"映像がひたすら続く。

 観客を時空の彼方に運んでそのまま監禁してしまうようなエンドレス映像は、
とてつもなく悪酔いする酒でもあり、癖になると病みつきになるのかもしれない。

 制作現場の関係者は"乗って"いたのかもしれない。

 自分は、「もう勘弁してくれ。」と観ていて声なき悲鳴を上げた。

 俳優、美術、脚本の肯定すべき激しい自己主張を監督が予め計算して磁場と
なって何かを観客に差し出せば良かったけどもとりあえず素材の良さを活かすべく、
観客もエキストラのように映画と一体になれと半ば強要されているような
圧迫感
もあるが監督の人の良さで観客も"乗って"しまわざるを得ないような。。

 それこそが鈴木清順の"計算"なのか?

 バスに激しく酔った幼少の頃を連想させる映画なんて絶後かもしれない。

 後半は、個人的にはどうも受け入れ難い。今後、再見することで印象も感動も
変わっていく可能性はある。

 暴走こそをを愉しむべき作品なのだろう。

 一緒に暴走して愉しむ。または、置いていかれてメランコリックな気分を愉しむ。
どちらでもなく呆気に取られている自分を愉しむ。。

 酔う。来る。酩酊する。

 迷作にして、銘作
 

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