2017年5月13日の風景
ここ数年の世界中で起こった長年に渡ったグローバリズムを主因とした疲弊と反動
から来る民族主義の台頭と他民族・国家に対する排斥的な言動、"自国ファースト"と
でも言うべき大きな動きが顕著となった去年の後半から今年にかけての世の中、
特に某超大国の大統領選挙の結果と選出された某氏の言動をを眺めていて
今年(2017年)は、世界中の人々がハンナ・アーレントを思い出す年と
なるだろう。
と思ったものだ。
ドイツの哲学者ハンナ・アーレント(1906-1975)は、ナチズムや全体主義が、ある
過度期に偶然に突発的に特定の人物や少数者により起こった異質な出来事などでは
なく、人々の心に普遍的に湧く(今もこれからも湧いていく)心の現象の発露であることを
解き明かしてみせた、恐らくは近代史上最も勇気ある発言を行った人物である。
さてしかし、早、5ヶ月が過ぎ、某超大国の大統領となった人物の発言の変遷を見て
いても、EU、アジア、その他の諸国で起こっている流れから見ても、自分の予想とは
「少し違っていた」と最近思うようになった。
それは、政治的な問題ではなく、あくまでも経済的な問題であるということである。
政治的な問題の困難さの最大唯一とも言える大きな要因の一つは誰もが目に見えて
判る定量的な測定が難しいということが言える。支持率や議席の数、法案の中身などで
政治の波及効果が世の中の人々の満足度なぞへ貢献しているかどうかわかり得ない
のは日々、世界中の人々が目撃しウンザリしているところではある。
経済的な問題は、とりあえずは世界市場の動向を見ればある程度は計量することが
出来る。
2017年は、わが国日本の周辺で発生していることは地政学的且つ歴史も関係した
問題が重要であるが、世界的には"お金"の流れが問題である模様。
ところで、東洋経済オンラインは良く行くサイトの一つであるが以下の記事が掲載
されていた。
物理学者の墓を訪ねて考えさせられること
[http://toyokeizai.net/articles/-/170257]
テーマは「お墓参りの勧め」であるが、オーストリアの物理学者リーゼ・マイトナーの
墓に刻まれている言葉について言及している。
リーゼ・マイトナー(1878-1968)は、自分は恥ずかしながらこの記事を読むまで
知らなかった。同僚のオットー・ハーンと共に核分裂反応を発見した人物として
歴史に名を残した人物である模様。生涯の大まかな概要は上記記事でも触れている。
さて、マイトナー女史はオーストリアがドイツに併合された1938年にスウェーデンに
逃亡している。この時には、ナチスの国境警備隊に有効期限の切れたパスポートを
見つかったにも関わらず脱出できたというドラマのような出来事を体験している。
スウェーデン入国後も、オットー・ハーンとの共同研究は続いたがハーンはナチスの
要求に屈し、論文発表の際にはリーゼ・マイトナーの名は乗せずに自身は1944年に
核分裂の研究の成果によりノーベル化学賞を受賞した。
一方のリーゼ・マイトナーは受賞者にはならず、1943年に英国からの原子爆弾の
開発への協力を一貫して拒否し、やがて、広島・長崎への爆弾の投下を知った時には
自分を呪ったという。
戦後も核分裂が軍事的に利用されたことやナチスの台頭に対してドイツの科学者が
毅然とした対応を取らなかったことに批判的であり、その中に一時的にでも身を置いて
いた自分を責めたようだ。
学問への情熱は晩年まで失わず、研究成果の人類への誤った適用に批判的で
あった彼女の墓には以下の言葉が書かれているという。
A physicist who never lost humanity
上記記事においては、
「決して人間性を失わなかった物理学者」
と訳しているが正しいと思う。
因みにウィキペディア[英語版]におけるリーゼ・マイトナーの項
には碑文については以下のように記されている。
Lise Meitner: a physicist who never lost her humanity.
また、ウィキペディア[日本語版]における同氏の項には以下のようにある。
(太文字は管理人による)
-------------------------------------
1967年ごろからマイトナーの体力や記憶力は衰えがみられてきた。
そして1968年10月、90歳の誕生日を前に亡くなった。遺体はハンプシャーの
墓地に埋葬された。碑文には、
「リーゼ・マイトナー――人間愛を失わなかった物理学者」
と記されている。
-------------------------------------
(ウィキペディア日本語版)[2017年3月5日 (日) 02:54 UTC]
碑文の訳が若干、というか、かなり大きくニュアンスも印象も異なる。さらに、とても
マズイことは原文を載せていないことだろう。この言葉の場合は、彼女の人生の
足跡を凝縮して表現し記録されている重要な言葉であるから少なくも原文は載せる
べきた。
"humanity"は、この場合、リーゼ・マイトナーの歩んだ人生と、彼女の墓碑の言葉
としては、「人間性」であるべきだろう。
Lise Meitner: a physicist who never lost her humanity.
リーゼ・マイトナー: 人間性を決して失わなかった物理学者
が良いと思う。
とりあえず日本人は(世界の人々も)彼女の名前とどんな人生を送ったのか
あらまし程度は知っておいて良いだろう。
原子爆弾が影も形も無い頃から、その根本理論の発見に携わった最当事者の一人
であり、そして、悪用されて膨大な人的被害、人道的な犯罪が起こってしまったことを
激しく悔い、国籍も人種も性別も年齢も何の偏見もなく深く悲しんだであろう女性が
いたという事を。
言葉のニュアンスと用法で印象も事実も大きく違ってくるということにも情報の大洪水
時代・SNS時代を生きる我々はもっと敏感になるべきだろう。それが意図的なのか
どうかは容易には判らないという点においても。
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コメント
>ナチズムや全体主義が、ある過度期に偶然に突発的に特定の人物や少数者により起こった異質な出来事などではなく
ユダヤ人虐殺はナチが出てくる何百年前から定期的に起こってますしー
たぶん一番規模は大きかったですけどねー
>"humanity"は、この場合、リーゼ・マイトナーの歩んだ人生と、彼女の墓碑の言葉としては、「人間性」であるべきだろう。
その方がしっくりきますね
人間が人間であるゆえんを大事にしたってことでしょうね
投稿: 万物創造房店主 | 2017年6月 3日 (土) 23時47分
>ユダヤ人虐殺はナチが出てくる何百年前から定期的に起こってますしー
そーみたいですね。
普通に世界史ももっともっと
学校出ても知っていくべきすね。
>たぶん一番規模は大きかったですけどねー
でも、ヒトラー一人に帰結できちゃうのならば、
1000年来程度の中では相対化されていく可能性
も高いですね。
>人間が人間であるゆえんを大事にしたってことでしょうね
核分裂という発見の悪用に心を痛めつつ
同僚"だけ"がノーベル賞を受賞したことには相当に
納得がいってなかったという人間臭さとテクニカルな点に
拘った或る意味ごく普通の人生からも
「人間愛」
という表現には逆に矮小化を感じてしまいますね。
原典を載せていない点にも。
ウィキペディア(日本語版)は基本結構好きなんだけど
複数のソースと比較していくと
意図的かと思われる"丸め"をたまに感じますな。
公正・公平を感じる時もまた多いだけに。
(-_-)
投稿: kuroneko | 2017年6月 6日 (火) 22時30分
>ヒトラー一人に帰結できちゃうのならば
ヒトラーに責任を負わしてる間は
全く反省してないってことなので
いつかまた似たようなことは起こるかもしれませんね
まーそれが
日本人や中国人にスライドする可能性もありますけど
>意図的かと思われる"丸め"をたまに感じますな。
それは仕方ないんじゃないですかね
多くの人が書き換えていくと最終的に丸いところに落ち着かざるをえない気もします
投稿: 万物創造房店主 | 2017年6月 9日 (金) 22時22分
>全く反省してないってことなので
歴史的に何度も起こっているという事実が
示唆していますね。
ヒトラーの登場から退場までって
今となっては
「操られた感」はありますね。
「操ろうとして面倒みてあげたら
案外自己主張しやがった」
という視点で見ると
ここ半世紀の
「独裁者」のレッテルを貼られている
人物達にも面白い側面と事実が見えてきます。
>日本人や中国人にスライドする可能性もありますけど
日本はもうスライドさせないと毅然と対応するべき時
ですね。慰安婦問題も。
材料は出尽くし、歴史的事実はほぼ検証されたでしょ。
>それは仕方ないんじゃないですかね
全員「エッジ」を立てようぜー。
「エッジ」を。
これからは
「エッジ」の時代ぜよ!
ふざけた時代へようこそ!!
\( ̄0 ̄)/
投稿: kuroneko | 2017年6月10日 (土) 12時14分
>全員「エッジ」を立てようぜー。「エッジ」を。
>これからは「エッジ」の時代ぜよ!
これ↓っすか!
https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/mobile/H/
昔持ってたんですけどねー(^_^.)
投稿: 万物創造房店主 | 2017年6月11日 (日) 20時41分
>これ↓っすか!
違いもす。
(一_一)
まあ、一例を挙げるとするとこんな感じ
ですかね
(^^)ゝ
http://tokyo-kuroneko.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/l.html
投稿: kuroneko | 2017年6月11日 (日) 23時13分
>まあ、一例を挙げるとするとこんな感じですかね
いやー
さっぱり…( ̄◆ ̄;)
投稿: 万物創造房店主 | 2017年6月22日 (木) 20時34分
キ、キレっつキレじゃないすか。。
キレっっキレ。。(ーー;)
↑自信もって言えよ。
未来予見性があって
斬新さと革新性に満ちていて、、
作者の溢れるインテリジェンスと感性を感じさせて
え~それから、え~と、、
(ーー;;)
投稿: kuroneko | 2017年6月23日 (金) 23時34分