映画「この世界の片隅に」
「この世界の片隅に」
原作: こうの史代
監督: 片渕須直
脚本: 片渕須直
撮影監督: 熊澤祐哉
美術監督: 林孝輔
音楽: コトリンゴ
編集: 木村佳史子
作画監督: 松原秀典
画面構成: 浦谷千恵
音響効果: 柴崎憲治
色彩設計: 坂本いづみ
動画検査: 大島明子
録音調整: 小原吉男
アニメーション制作: MAPPA
キャラクターデザイン: 松原秀典
主題歌: コトリンゴ 『悲しくてやりきれない』
声の出演: のん,細谷佳正,稲葉菜月,尾身美詞,小野大輔,潘めぐみ,
岩井七世,牛山茂,新谷真弓,小山剛志,津田真澄,京田尚子,佐々木望,
塩田朋子,瀬田ひろ美,たちばなことね,世弥きくよ,澁谷天外
時間: 129分 (2時間9分)
製作年: 2016年/日本
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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絵を描くのが得意な少女"すず"は、広島から呉へと嫁ぐ。世間慣れをしていない
すずは、温かく見守れながらも小姑の径子とは上手くいかず、夫の周作とも
調子が合っているとは言い難い日々を送る。戦況は次第に悪化し空襲は身近に
迫って来ていた。。
一つ一つの丁寧な作画と、"すず"の声を演じる"のん"の愛嬌と抑揚のある
丁寧な台詞。
そして、何よりも『映画』の命題の一つ。あるいは、
「A」にして「Z」である
『普遍性』
をキルトのように丁寧に木目細かく全てのシーンに込めた作品。
太平洋戦争を日本人がテーマにして映画を作り、もしかしたら、始めてきちんと
普遍性を描くことに成功した作品なのかもしれない。
観客の多くが、のんの演じた"すずさん"に会えたことに素直に喜び、涙した。
"すずさん"の生きた時代、祖父、祖母が青春を過ごした時代をきちんと観ることが
出来た悦びに涙した。
どこか間違っていると判っていても、素直に言えなかった時代。
どこか間違っていると判っていても、自分の国と土地を愛する当たり前の事。
息苦しくても笑い、腹を空かせ、人を好きになり、家族を作った当たり前の事。
勝手に戦争を始めて、勝手に負けたと言われることに怒りを覚える事。
いつだって、これからだって(本当は)当たり前の事。
こんな当たり前の事を当たり前に描くことがどうしてこれほどまでに時間がかかり、
『何かを怖れ』なくてはいけないのだろうか。
戦争とは、ある面においては、美しいという『不都合な真実』すらも描いてみせた奇蹟。
男手の無い家庭を守ることの絶望感という『普遍性』を描いてみせた奇蹟。
隣人と何も上手くいかなくても日常を共に過ごさなくてはいけない当たり前を描いて
みせた奇蹟。
"すずさん"等市民と呉を襲った連日の空襲「呉軍港空襲]」の内の一日(1945年
7月24日)には精鋭戦闘機部隊"剣部隊"(343空)が米機と互角以上の戦いを見事に
演じて米艦載機16機撃墜という戦果を挙げた。343空は、同年3月19日の呉への
アメリカ軍の攻撃の際にも迎撃し大きな戦果を挙げていいる。
"すずさん"の夫の"周作さん"は、法務の世界で国家の威信を賭けて最後まで職場
という自分の主戦場で戦い抜いた。
"すずさん"を愛したかつては腕白ガキ大将だった男も巡洋艦「青葉」に乗り戦った。
「青葉」は、レイテ沖海戦から命辛々に帰還したが、損傷が大きすぎて戦線に復帰
することは最早出来ず、そのまま防空砲台としてアメリカ軍の呉の攻撃に応戦したが
7月28日の空襲により右舷傾倒・着底し終戦を迎えた。
はからずも娼婦となった少女も。
誰もが何かと闘っていた。そして、いつか、死んでいった。
今までも、これからも変わらない。
今日も明日も、"すずさん"は日本中・世界中で、生きて、笑い、泣き、闘っている。
世の理不尽と。人々の無理解と、偽善と、嘘と。
今、この瞬間も。
もしかしたら、全くの孤独の中で。もしかしたら、命懸けで。
『この世界の片隅』で。
[呉軍港空襲]
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呉軍港空襲(くれぐんこうくうしゅう)は、太平洋戦争中、1945年の3月19日、7月24日、
7月25日、7月28日、7月29日など複数回に渡って行われたアメリカ海軍を中心とした
連合国軍空母機動部隊航空隊、及び、沖縄伊江島のアメリカ陸軍航空軍による
呉軍港および瀬戸内海西部への空襲作戦。なお、この空襲とは別に、1945年5月5日に
隣接地域にある広工廠空襲、6月22日に軍港内の呉工廠造兵部空襲、呉市街地が
7月1日深夜から2日未明にかけて戦略爆撃を受けている。
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(ウィキペディア日本語版)[2017年3月10日 (金) 15:44 UTC]
[第三四三海軍航空隊]
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第三四三海軍航空隊は、太平洋戦争期における日本海軍の戦闘機部隊の一つ。
1944年1月に開隊した初代の通称隼部隊(はやぶさぶたい)と、1944年12月に
開隊した二代目の通称剣部隊(つるぎぶたい)がある。後者は大戦末期、優秀な
搭乗員を擁して戦闘機紫電改によって敗色濃厚で劣勢な日本本土防空戦のなかに
あって終戦まで活躍した部隊として知られる。
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(ウィキペディア日本語版)[2017年4月3日 (月) 14:41 UTC]
[青葉 (重巡洋艦)]
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青葉(あおば/あをば)は、日本海軍の重巡洋艦。 青葉型重巡洋艦
(青葉型一等巡洋艦)の1番艦。 三菱造船長崎造船所(現・三菱重工長崎造船所)
で建造された。 その艦名は、京都府加佐郡に位置する青葉山から因んで名付け
られた。艦内神社は青葉山の青葉神社。
発注 大正12年度艦艇補充計画
起工 1924年 2月 4日
進水 1926年 9月25日
竣工 1927年 9月20日
その後 1945年 7月28日 呉にてアメリカ軍機の攻撃を受け大破、着底
1947年 7月 1日、解体。
要目 (竣工時 → 改装後)
排水量 基準:8,300トン → 9,000トン
全長 185.17m
全幅 15.83m → 17.56m
乗員 643名 → 657名
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(ウィキペディア日本語版)[2017年6月14日 (水) 22:58 UTC]
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コメント
めずらしく他の人の書き込みが…と思ったら
スパムみたいですね…(^_^.)
投稿: 万物創造房店主 | 2017年6月22日 (木) 20時03分
漫画は読んだことあるんですけど
映画版はまだ観てないんですよねー
でもとりあえず
観た人みんな
いいって言ってますねー
前にこのアニメの焼夷弾の表現検証をしてる人がいて
爆発の仕方から煙の色まで
実にリアルに再現されているということでした
そのうち夏の終戦日近くにテレビでやると思うんで
そのとき観ます
こういう映画が
ネットという媒体を通じて
クラウドファンディングで作られたってのがすばらしい反面
日本の映画制作会社が
いかに見る目がないかがよくわかりますね
同じように
クラウドファンディングで作られた
「リトルウィッチアカデミア」ってアニメもなかなかよいですよヽ(´▽`)/
投稿: 万物創造房店主 | 2017年6月22日 (木) 20時16分
>観た人みんな
いいって言ってますねー
東京と帰省した時と一回ずつ観たけど
もう一回、二回くらい全然観れますね。
いい作品は観る度に発見が幾つもあるし。
(~o~)
>実にリアルに再現されているということでした
自分が関心したのは空襲時の
爆弾の"破片"が飛んで来る恐怖と空気を切り裂く音ですね。
"パン!"、"パン!""って無味乾燥な音が本当に怖い。
戦時下で空襲を体験した人の話しでは
破片が余りに簡単に人間を切り刻んでしまうとのことです。
手を握って一緒に逃げていた人がいつのまにか
切り裂かれて絶命していくという。
単純に爆撃の方向から逃げればいいとかそういうこと
じゃない、どこに逃げていいか判らない恐怖を
あくまで市井の人間の視点からあざとくなく誇張せず
描いている(と確信できる)ほとんど初の作品かもしれません。
実写やCGでは寧ろ嘘くさく演出臭くなる
「アニメの優位性」を活かしている点も本当に素晴らしい。
(~o~)b
>クラウドファンディングで作られたってのがすばらしい反面
日本の映画制作会社が
いかに見る目がないかがよくわかりますね
まあ、それもあるけど
映画制作会社と配給会社と劇場経営の
役割分担を観客も社会も含めてきちんと
根本的に垣根を見直す時ですね。
全員の共通の希望は
「面白い作品を観ること」であるわけだし。
今回は諸権利も制作サイドにリターンされるように配慮して
最善を尽くしたしシステムで作られた模様ですけど
これほどまでに異例中の異例のヒットを飛ばしても
ペイがやっとらしいですね。
興行面でも内容面でも今後の良い教材となる
スタンダードが出たことは喜ばしい限りですね。
製作者サイドの全ての方々に適切に還元され
モチベーションが挙がり次回作に繋がることを!!
素敵な作品ありがとうございます。
(≧ε≦)/
投稿: kuroneko | 2017年6月23日 (金) 23時14分
>ペイがやっとらしいですね。
まじっすか?!
まーでもこれからDVDが発売されて
その売り上げが上乗せされますからね
未来はまだ明るいです
DVDも最初から
英語字幕も付けて
リージョンフリーにして
そのまま自分たちで海外にも売れるようにしたらいいのに
何らかの利権団体がうるさくてできないんですかね
>全員の共通の希望は「面白い作品を観ること」
そこは違う人がけっこう混じってると思いますよ
仲間とか身内にお金が入るかどうか
を優先してたり
有名人を起用して
ファンだけ観てくれて
無難にお金を稼げれば面白くなくてもなんでもいい
って場合もありますし
面白くても何らかの団体からクレームが来そうなものはやらないって場合もありますし
投稿: 万物創造房店主 | 2017年7月 5日 (水) 00時35分
>未来はまだ明るいです
どーなんすかねー
DVDにはDVDに別個の利権があって
その差分でしかないって感じすからねー
(一_一)
構造的な問題かと思います。
○○年振りの新作!
って結局は
ずっと作っていたわけではなく
作って公開するだけの金を集めるのに
それだけかかったってだけですからね。
ほとんど全部が間違いなく。
>そこは違う人がけっこう混じってると思いますよ
自分が言っている「全員」は違う人を極力省いて
って感じですかね。
それと、
混じるっていうよりは、
余りに分が悪過ぎて
「知人・友人と現場を少しでも共有して
思い出でも作らないとやってられねー」(゚д゚)
ってヤサグレているんじゃないすかねー
それ(身内受け)を観客は敏感に感じて観に
行かない。観てもネガティブな口コミが氾濫して
興行的に大失敗という悪循環じゃないすかねー
(~o~)
投稿: kuroneko | 2017年7月 6日 (木) 23時49分