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2017年7月23日 (日)

リーマン戦記(28)

リーマン戦記(28)
陽は沈み、陽は昇る

 

 「Kさん、顧問から電話です。」

 「はい。」電話を取る私。

 顧問のF氏から直接自分に電話なんて実に久し振りだ。

 F氏:「K君?」電話越しにいつものF氏の声が聞こえる。

 私: 「はい。Kです。」

 F氏:「来週、会議があるのは知っているよね?」

 私: 「はい。知っています。」

 F氏:「君に発言してもらいたいんだ。」

 私: 「何をでしょうか?」

 F氏:「君のホラ、少し前に皆に出したメールあったじゃない。
   "このまま放置しているとマズイ事になる"とか何とか凄くいい事
   書いて送ってくれていたよね。今、その通りになっていると思うんだ。」

 私: 「はあ。」

 気の無い返事をする私。 週明け早々に開かれる予定の会議の主題は某取引先との
折衝が暗礁に乗り上げている件に関してだ。上手くいっていない主原因は自分達側の
対応の不味さにあってその対策の為の会議だ。

 F氏:「アレをさ、会議の席で君から言ってもらえないだろうか。」

 私: 「"アレ"と仰られても自分は、定期的に問題提起メールを送っているので
どれの事なのか具体的に言って頂かないと判りません。」

 ここ数年、人数の増えた部署で自分はすっかりヒール役が定着した感もあったのと、
F氏とも過去に相当に激しくやりあってきた経緯があったので多少あてつけがましく
言ってみる。

 F氏:「(苦笑する声)とにかく、私も、もう歳だ。会社の事はなるべく静観しようとも
    思ってやってきた。だが、君が前から指摘してくれていた通りの事が最近
    起こっていて心配なんだ。頼まれてもらえないだろうか。

 F氏の声を聞いている間に「多分、あのメールがFさんにヒットしたのだろう。」と
ここ数ヶ月にチーム内に何通か送った警鐘メールを脳内データベースから検索して
見当を付けた。

 私: 「分かりました。

 F氏:「頼んだよ。」

 電話は切れた。
 

 「コイツの言っている事を聞いていると本当にハラワタが煮えくり返る。」

 会議の席でF氏に皆の前で指をさされ罵倒されたのはもう二年前にもなろうか。

 「ですから、、」

 「もう、いい。もう、止めろお前の意見はもう聞きたくない!
 

 それから丸一年は互いに口を利かず目も合わせない日々が続いた。自分に回って
くるべきF氏からの連絡は全て伝聞で伝わってきた。或いは、別の人間に依頼された。

 一年ほど前から、自分がかねてから危惧して会社に警鐘を鳴らしていた事態が
明確に全社的に顕れるようになって、F氏は態度を変えて自分に接するようになった。
ここ半年は、F氏の自分に向けてのフォローや同意の主旨の発現も目に見えて
増えてきていた。

 「和解」ということなのか。そういう事にしておきましょう。

 というわけで、せっかくのF氏より依頼を受けた週明けの会議の向けた『発言』
向けて用事で出かけつつキーワードを携帯に打って草案を考えてみた。 

 発言内容の主旨を五つのカテゴリーにしてみる。

 1) 今回の事態を招いた根本的理由(社内の体質的な問題)について。

 2) 今回のような事態を招きかねない点に関する主要因について。

 3) 今後の事態の改善に向けた打開策に関する件について。

 4) 補足的事項(1) "1)"に関する点について。

 5) 補足的事項(2) "3)"に関する点について。
 
 
 問題は、 この五つのカテゴリーをどのような味付けでまとめるかだ。

 以下の三つのパターンがあるだろう。

 1) 激辛モード。特定の人物は冷や汗が出るだろう。(今まで演じてきたヒール役通り)

 2) 淡々モード。事実と今後の対策だけを淡泊に述べる。

  3) 建設的且つ好意的モード。(今までのヒール役をリセット)
 
 
 今日は、今までの自分のキャラ通りの 1) で草案して過ごした。
だが、冷静に考えてみて、F氏とも雪融けした事も踏まえて、 3) も悪くないと思えてきた。

 1)モードだと反論も目に見えている。ディスカッションとは最早言えない口論も、
もうここ数年充分にしたというのが正直なところだ。

 かと言って、2)では抜本的な対策は取られないままズルズルと行く危険性があり、
F氏から見れば、歯向かい続けたヒールの自分にわざわざ依頼してきた"甲斐"
余りないだろう。と気をきかせてみる。

 つまりは、3) が順当なところか。

 まだ、会議まで40時間ほどある。それまでに決めればいい。
 
 

 一つの長い長い闘いが、どうやら終わりを告げたようだ。

 だが、40時間後にまた新たな戦端は開かれることだろう。

 闘いは終らない。始まればいつかは終り、終わる端からまた始まる。。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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