映画「トラス・オス・モンテス」
「トラス・オス・モンテス」
TRAS-OS-MONTES
監督: アントニオ・レイス,マルガリーダ・コルデイロ
撮影: アカシオ・デ・アルメイダ
時間: 111分 (1時間51分)
製作年: 1976年/ポルトガル
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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本作は、少年期に体験する『視点』と、『時間軸』を"完璧"に再現している。
川、春の訪れ、窺い知れないお屋敷、
父のいない理由、母の出生の秘密、
夕暮れ、友情、冒険、、
丘の向こうに見える"何か"。
橋の向こうに見える"何か"。
単なる街であり、
単なる村であり、
単なる動植物であり、
単なる畑であり果樹園であるが、
少年・少女達にとっては、「そうではない」。
一歩先に進めば、二度と故郷に戻ってこれないかもしれない。
洞窟を潜り抜ければ、きっと全く知らない世界に繋がってるはず。
見知らぬ人間と一時を過ごせば、故郷ではもう数十年も数百年も
過ぎているかもしれない。
それらは、少年・少女達にとって"充分に起こりえること"であり、
起こって欲しい切実な願いでもある。
うざったい大人達、複雑極まる世間、規則に塗れた日常、、
その全てが生涯で「最もかけがえの無いもの」であり、
最もかけがえの無いものだということを「知らないゆえに」
少年達の行動には打算はなく、それゆえに美しく、それゆえに残酷でもある。
出稼ぎに向かう父をいつまでもいつまでも見送る娘。
父親が振り返ることはない。それでも何度も手を振り
父親が点景になって、それでもまだ見送り続ける娘。
ほんの数分の長回しのシーンであるだけが、その記憶の『永遠性』と、普遍性、
涙を禁じえない輝き、どんなに大金をかけても描けない永遠のシーン。
何回でも観たい。いつまでも観ていたい。
映画は、本当は「詩」ではなくてはいけない。
人生とは、一片の「詩」に過ぎないのであるから。
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