映画「いちご白書」
「いちご白書」
THE STRAWBERRY STATEMENT
原作: ジェームズ・クーネン
監督: スチュアート・ハグマン
脚本: イスラエル・ホロヴィッツ
撮影: ラルフ・ウールジー
音楽: イアン・フリーベアーン=スミス
主題歌: バフィ・セント=マリー
出演: ブルース・デイヴィソン,キム・ダービー,ボブ・バラバン,ジェームズ・クーネン,
バッド・コート,ジーニー・バーリン,ダニー・ゴールドマン
時間: 103分 (1時間43分)
製作年: 1970年/アメリカ
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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叫び、走り、歌い、抱き合い、反抗することが『全て』。
That's all.
『不当と思える』 公園の大学側の占拠
『不当と思える』 出資サイドと国家の介入
『不当と思える』 大人達と体制の全て
『不当と思える』 街の景観
『不当と思える』 自分達の環境
『不当と思える』 警官達の一挙手一挙動
『不当と思える』 ○○←好き勝手な言葉を入れて非難してみよう!(*^ー゚)b
何もかもに不平をいいつつ、唯一自分達だけが"知っていて、且つ、正しい"
となぜか信じて疑わない暴走しなくては気の済まない世代。
コラージュのように細かいカットでアジテーションに耽る学生達の
正しいようでまるで具体性のない要求。
主人公の性格設定の「微妙さ」がユニークだ。
逡巡というものを感じさせず、老人のように過去を眺めているような雰囲気。
あたかも後年の時代を生きるオヤジが青春時代を回顧するような展開。
主人公は、自分達の行動には"意味が無"く、行動の為の行動であると
物語の途中で悟るのではなく最初から感覚的に知っている。
恋も体制批判もどこか投げやりで、その投げやりさに理由が一切無いことを
製作者サイドは理解していると思われる。
所謂、学生運動は本作の制作当時においては最盛期を過ぎたとはいえ、まだまだ
日本でも続いていてベトナム戦争もアポロ計画も収束点が見えない1970年という
年にこれほどまでに、一回ピースをバラバラにして、すっかり落ち着いた解を
再現しているのは実はとてつもないインテリジェンスではなかろうかと思う。
埋まるべくして埋まるパーツ。だからこそ、クライマックスの無知な学生達の
精一杯の真っ当と思える抗議とその排除は純粋に胸を打つ。
原作者としてクレジットされているジェームズ・クーネンは生徒会長役で出演して
おり、年齢は当時22才という若さだ。
映画の重要命題(もしかしたら最重要命題)の一つ『勢い』というものの正解の
作品の一つと言えるのか。
いかに莫大な予算と膨大な文献と当事者へのリサーチをしたところで、『時代』を
フィルムの上で再構築することは所詮は不可能だ。
だから、映画が見せるべき一つの面を完全に構築しているだけ後世に
遺す価値がある作品であろう。
青春は、残酷だ。
そして、残酷であるがゆえに、否応なしに輝く。
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